悪質広告もある「捨て看板」8割が「不動産」の驚愕

東洋経済オンライン
スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

不動産広告に嘘があったとしたら……?(写真:taa/PIXTA)

住宅ジャーナリスト 山本久美子

家を借りたり買ったりする場合、まず目にするのが不動産広告だ。家から最寄り駅までの距離や広さ、間取り、築年月、価格(または賃料)など重要な情報が掲載されている。家を探す側にとっては、これらの情報が信用できるものでなければならない。

その不動産広告に嘘があったらどうだろうか? 不動産広告は、家の売り主や貸し主である不動産会社、あるいはその家を仲介する不動産会社が、住宅に関する情報を提供して作成している。そこで、業界団体では自主規制として、不動産広告のルールを作って運用している。

不動産広告に掲載する情報には細かいルールがある

不動産会社を監督する「宅地建物取引業法」でも、広告をしてよい時期や誇大広告の禁止などを定めて不動産広告の規制をしている。それより細かいルールを設け、不動産広告のルールブックになっているのが、不動産公正取引協議会連合会の「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)」だ。

この表示規約では、都合が悪いことは載せないということのないように、不動産広告にどんな情報を掲載しなければならないかを定めている。ほかにも、「新築」と言っていいのはどういった条件の場合か、「1畳」は何㎡必要かなど、使う場合の基準を定めている。表示規約では、「徒歩1分=80メートル(端数切り上げ)」、「1畳=1.62平方メートル以上」といった基準を設けており、新築と言えるのも、完成後1年未満で未入居のものだけだ。

実際は徒歩10分なのに8分と表示したり、初期費用に鍵交換費用やクリーニング費用を求めるのに記載しなかったりすれば、表示規約違反になる。違反をするとその内容や程度に応じて、警告や違約金などの罰則があり、場合によっては社名が公表されたり、主要なメディアに広告を掲載できなかったりということになる。

では、広告で次のような表現があったら、○か×かどちらだろう?

(1)「お買い得物件」
(2)「公園至近」
(3)「平成29年リノベーション」

合理的な根拠なく著しく安いという印象を与える表現をしてはならないとされているので、(1)「お買い得物件」はNGだ。また、表示規約では、生活施設は名称を明示して物件までの道路距離を表示することになっている。したがって、(2)「公園至近」の場合は「すみれ公園300m」などと記載しなければならない。(3)「平成29年リノベーション」はどういった内容のリノベーションを実施したのかが記載されていればOKだが、記載がなければNGとなる。

ほかにも、さまざまな表現ルールがあるが、これらは知識のある第三者が見ればすぐに違反とわかってしまうものなので、実際にはそれほど多い事例はないだろう。最も多い違反事例は「おとり広告」といわれるものだ。

最も注意したい「おとり広告」

首都圏不動産公正取引協議会のポータルサイト広告適正化部会によると、2020年度に共有された違反物件情報は、全国で1677物件あり、うち実際には取引できない「おとり広告」に該当するものが571物件を占めたという。年間の違反事例のうち1/3に当たるほど多いということだ。

国土交通省でも、2021年11月に業界団体に宛てて、「おとり広告の禁止に関する注意喚起等について」を通知した。年度末に向けて住宅の取引が活発化することから、改めて注意喚起をしたものだ。

国土交通省の通知では、次のような事例を挙げて注意をしている。

(1)実際には売ったり貸したりする意思のない物件で顧客を誘引して、すでに成約してしまった、突然水漏れが生じたなどの理由で、他の物件を紹介・案内すること(おとり広告)

(2)成約した物件をすぐに広告から削除せず、広告を継続し続けること(おとり広告)

(3)他の物件情報を勝手に改ざんして、実際には存在しない物件を広告すること(虚偽広告)

こうした広告を出す理由は、条件の良い物件の広告を掲載することで、その物件に問い合わせをさせて客を集め、すでに成約してしまった(あるいは何らかの欠陥がある)などと言って、問い合わせた人を別の物件に誘導するためだ。なかには、人気物件で本当に広告してすぐに契約済みになってしまう物件もあるが、条件の良い物件が長くメディアに掲載されている場合は要注意だ。

とはいえ、ほとんどの不動産会社はルールを守って不動産広告を掲載している。人の目につくポータルサイトや自社メディアなどで、ルール違反をすることはあまり考えられない。むしろ、人の目につきづらい場所の不動産広告こそ、注意が必要だ。

例えば、東京都では毎年「捨て看板等の共同除却キャンペーン」を実施している。捨て看板とは電柱の張り紙や電柱などに括り付けた広告旗、立て看板などをいう。張り付けたまま回収しない、つまり捨てた看板ということだ。

自治体の多くは屋外広告物に関する禁止条例を設けているので、捨て看板の大半は無許可の違法広告だ。東京都では特にこうした広告が多いので、除却をしているというわけだ。その中でも最も多く除却されているのは、不動産業の広告。2021年度で7区4市に実施した結果を見ると、不動産業で1502枚、実に82.0%を占めた。

悪質な広告例

では、筆者が見た最も悪質な電柱の不動産広告を紹介しよう。

悪質な電柱広告(筆者撮影)

「マンション価格より断然安い」「資産価値大」「早い者勝ち」など、根拠なくあおっている文言が並ぶが、いずれも不動産広告で禁止されている表示だ。さらに、最終値下で3580万円を2345万円に価格改定したという表現は、「二重価格表示」として禁止されているもの。怪しいことこのうえない広告だ。記載された電話番号も携帯電話のものだった。連絡してしまうと、その後どれだけしつこく営業されるかわからない。君子危うきに近寄らずだ。

最近では、電柱に張り付けるのではなく、三角コーンに張り付けて歩道に置くタイプが増えている。こちらも条例により禁止されていることがほとんどだ。

三角コーンに張り付けた不動産広告の例(筆者撮影)

そもそも違法な方法で広告しているので、そんな広告をする不動産会社が適切な対応をするとは考えにくい。近いからちょっとのぞいてみようと足を運ぶ人も多いようだが、そもそも違法な広告をする会社は信頼できないと考えて、興味を持たないほうがよいだろう。

また、不動産広告では、会社名と宅地建物取引業の免許番号を記載しなければならないと定められている。広告を出している会社が名乗らないというのは、あってはならないことだ。

不動産広告をもとに家を選び、自身で確認するのが基本

さて、捨て看板のような違法な手段による広告の事例をのぞけば、多くの不動産広告は信用してよいだろう。ルールを設け、ルールが守られているか自主的に監視や違反事例への処分を行う仕組みができているからだ。

さきほどのポータルサイト広告適正化部会の違反物件情報によれば、2020年度の違反件数1677物件だったが、2019年度の2955物件より1278物件も減少し、おとり広告も2019年度から1286物件も減少している。防止強化策などが功を奏した結果だろう。

宅地建物取引業者の監督をする国土交通省や都道府県では、法令違反があった場合に行政処分(業務停止処分等)をするが、その情報を「ネガティブ情報等検索サイト」で公開している。気になる場合は、チェックをしてみるとよいだろう。

○ネガティブ情報等検索サイト/不動産の売買・管理
宅地建物取引業者
賃貸住宅管理業者等

さて、安心して不動産広告をもとに家選びをしてほしいのだが、実際の交通アクセスは待ち時間や混雑度によっても変われば、同じ6畳の広さでも天井が低ければ狭く感じたりする。自分自身で必ず確かめることが、家選びの基本だ。

また、不動産に掘り出し物はない。相場より価格(賃料)が安いなど条件が良い物件には理由があるものだ。市場の動向を見たり、物件の比較検討を行ったりして、相場観を養うとともに、物件のデメリット条件も確認して、納得のいく家を選ぶようにしてほしい。

スクラップは会員限定です

使い方
「深読み」の最新記事一覧
2701751 0 東洋経済オンライン 2022/01/27 08:54:32 2022/01/27 08:54:32 2022/01/27 08:54:32

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)