最速の歴史 10秒の壁

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男子100メートル 最速の歴史

人類がついに「10秒の壁」を打ち破った、かに見えた。1964年東京オリンピック、陸上の男子100メートル準決勝。
アメリカ人選手が「9秒9」をたたき出し、国立競技場を熱狂させた。
追い風参考記録とされ、初の9秒台は幻の快挙に終わる。だが、4年後のオリンピックで9秒台の公認記録が
飛び出すと、世界記録は半世紀足らずで9秒58まで進化した。日本人選手がようやく10秒の壁を突破したのは
2017年のことだったが、以来2年間では3人が立て続けに突破している。
壁に挑み続けた選手たちを、読売新聞の記事で見てみよう。

人類がついに「10秒の壁」を打ち破った、かに見えた。
1964年東京オリンピック、陸上の男子100メートル準決勝。
アメリカ人選手が「9秒9」をたたき出し、
国立競技場を熱狂させた。
追い風参考記録とされ、初の9秒台は幻の快挙に終わる。
だが、4年後のオリンピックで9秒台の公認記録が
飛び出すと、世界記録は半世紀足らずで9秒58まで進化した。
日本人選手がようやく10秒の壁を突破したのは
2017年のことだったが、以来2年間では3人が立て続けに
突破している。

男子100m世界記録の変遷

男子100m世界記録の変遷

世界の記録 東京オリンピックで「幻の9秒台」

一九六四年東京五輪、陸上男子百メートルは豪華メンバーだった。世界タイ10秒0のハリー・ジェローム(カナダ)をはじめ、ボブ・ヘイズ(米)、飯島秀雄(日)ら10秒1が数人そろったからだ。この大会から記録は電気計時になった。百メートルの場合、従来の手動計時より約10分の1秒、選手に不利といわれたが、この顔ぶれから夢の9秒台が期待された。

ヘイズが9秒9(追い風参考記録)で駆け抜けた東京五輪の男子100メートル準決勝レース

ヘイズが9秒9(追い風参考記録)で駆け抜けた東京五輪の男子100メートル準決勝レース

10.00
ヘイズ、10秒0で優勝

準決勝。一着ヘイズは9秒9を出した。だが、5・28メートルの追い風と判定され、公認されなかった。当時、スターターだった佐々木吉蔵さん(日体大教授・故人)は、著書「よーい ドン!」(報知新聞社)の中で〈あの時の風はどうみても2メートル以上あったとは思えない〉と、スターター台での体感から判定に首をひねり、〈ヘイズはこの時10秒をきった〉と確信を持って書いている。決勝で一着ヘイズは10秒0の世界タイ。でも、従来の手動の世界記録10秒0とは質が違うのはいうまでもない。(1991年8月11日付朝刊)

オリンピックで人類初の9秒台に突入 ~ハインズ(アメリカ)9秒95

メキシコ五輪の男子100メートル決勝レース。

右から3人目が9秒台を出して優勝したジム・ハインズ(米国)。空気抵抗が少なく有利とされる高地で達成した。(1968年10月15日)

09.95
ハインズ(アメリカ)9秒95

王者ルイス、涙の9秒86

第三回世界陸上競技選手権大会第三日は二十五日、東京・国立競技場で行われ、男子百メートルは三十歳のベテラン、カール・ルイス(米)が9秒86の世界新で優勝した。従来の記録を百分の四秒更新し、この大会三連覇。二位のレロイ・バレル(米)も9秒88の世界新をマークした。ルイスの快走に引っ張られて六位までが9秒台という空前の激しいレースだった。(1991年8月25日)

王者ルイス、涙の9秒86

男子100メートル決勝レース。ルイスは5コース、バレルは3コースを走った(写真は合成)

09.86
ジョンソン(カナダ)“9秒79”

快走と、そして転落と ~ジョンソン(カナダ)“9秒79”

ソウル五輪の男子100メートル決勝レース。右手人さし指を突き上げてゴールしたベン・ジョンソンは、後に禁止薬物使用が発覚して金メダルを剥奪、世界記録も取り消され、右から2人目のカール・ルイスが金メダリストに繰り上がった。(1988年9月24日)

09.79

ジャマイカ勢が躍進 ~パウエル9秒77

【ロンドン=千葉直樹】14日にアテネの五輪スタジアムで行われた陸上の国際陸連スーパーグランプリシリーズの男子百メートル決勝でアサファ・パウエル(ジャマイカ)が、2002年9月にティム・モンゴメリ(米国)が作った記録を100分の1秒上回る9秒77の世界記録で優勝した。(2005年6月14日)

(モンゴメリの記録は禁止薬物使用のため後日取り消し)

09.77
アサファ・パウエル(ジャマイカ)

2006年9月24日、日産スタジアムでのセイコースーパー2006横浜で

世界新記録を表示した掲示板を指さすボルト

世界新記録を表示した掲示板を指さすボルト=AP

驚異的な世界新~ボルト(ジャマイカ)9秒58

【ベルリン=佐藤謙治】陸上競技の第12回世界選手権第2日は16日、ベルリンの五輪スタジアムで行われ、男子100メートル決勝は、ウサイン・ボルト(22)(ジャマイカ)が9秒58の驚異的な世界新記録で初優勝した。従来の記録は、ボルト自身がちょうど1年前の北京五輪でマークした9秒69で、一気に0秒11短縮した。

09.58

追い風0・9メートルの条件下、ボルトは序盤からトップに立ち、最後までスピードを緩めることなく圧勝した。前回大阪大会の王者タイソン・ゲイ(米)が世界歴代2位の9秒71で2位、前世界記録保持者のアサファ・パウエル(ジャマイカ)は9秒84で3位。5位までが9秒台のレベルの高いレースだった。(2009年8月16日)

連覇を達成したボルト

ロンドン五輪で9秒63の五輪新を出し、連覇を達成したボルト(中央)(2012年8月5日)

日本人選手の闘い

男子100メートル初の日本記録は手動計時だった1911年、三島弥彦(東大)が出した12秒0。
75年から始まった電動計時では、1968年メキシコ五輪準決勝で飯島秀雄(茨城県庁)が出した10秒34が、
84年になって遡って公認された。その84年には群馬・東農大二高の不破弘樹も10秒34をマークし、
91年に井上悟(日大)が10秒20まで短縮。朝原宣治(大阪ガス)が一気に10秒0台に乗せると、
98年に伊東浩司(富士通)が10秒00を出し、9秒台に迫った。ここから足踏みが続いたが、
約19年後の2017年、東洋大4年だった桐生祥秀(日本生命)が日本人初の9秒台となる9秒98で走り、
今年6月にはサニブラウンが9秒97と0秒01更新。
男子短距離はかつてないほど実力者がそろい、さらなる記録更新が続く勢いだ。

男子100m日本記録の変遷

男子100m日本記録の変遷

ようやく9秒台をうかがう位置に ~伊東(10秒00)

ほおをいっぱいに膨らませたまま、ゴールを駆け抜けた。速報板にタイムがともる。9秒99。「最後に流さなければよかった」。すぐに10秒00に訂正され、日本人初の9秒台はならなかったが、それでも驚異的なタイムだ。バンコク・アジア競技大会第八日の十三日に行われた陸上男子百メートル準決勝。アジア人として初めて夢の9秒台をうかがう伊東浩司(富士通)は、「記録は狙っていなかった」と言った。今回のアジア大会は百、二百メートルとリレーなど四種目にエントリーしている。連日、予選から何本も走らなければならないハードスケジュールを見越して、「できるだけセーブしていった」という。それが、この記録だ。(1998年12月13日)

10.00
声援に応える伊東

バンコク・アジア競技大会の準決勝で日本記録を出し、声援に応える伊東

桐生祥秀(21)(東洋大)

世界に遅れること49年、ようやく ~桐生(9秒98)

陸上の日本学生対校選手権が9日、福井市の福井運動公園陸上競技場で行われ、男子100メートル決勝で、桐生祥秀(21)(東洋大)が日本人で初めて10秒の壁を破る、9秒98の日本新記録を樹立した。風は記録が公認される追い風1・8メートルだった。従来の日本記録は伊東浩司が1998年バンコク・アジア大会で出した10秒00で、世界記録はウサイン・ボルト(ジャマイカ)が2009年世界選手権ベルリン大会で記録した9秒58。(2017年9月9日)

09.98

あと1000分の7秒だった ~山県(9秒997)

【ジャカルタ=読売取材団】アジア大会は26日、男子100メートル決勝が行われ、山県亮太(セイコー)が自己記録に並ぶ10秒00で銅メダル。同タイムで2位の選手との差を示すため、公式記録に1000分の1秒単位まで記された数字は「9秒997」と10秒を切っていた。トラック種目の記録は1000分の1秒単位まで読み取れるが、公式記録としては100分の1秒に切り上げた数字が残される。(2018年8月26日)

09.997
山県亮太(セイコー)
サニブラウン・ハキーム(20)(フロリダ大)

日本記録を更新したサニブラウンの走り(6月7日、米テキサス州で)

新星が日本記録更新~サニブラウン(9秒97)

【オースティン(米テキサス州)=福井浩介】陸上の全米大学選手権が7日、テキサス州オースティンで行われ、男子100メートル決勝に出場したサニブラウン・ハキーム(20)(フロリダ大)が9秒97(追い風0・8メートル)の日本新記録を樹立し、3位に入った。従来の日本記録は桐生祥秀(23)(日本生命)が2017年9月に記録した9秒98で、世界記録はウサイン・ボルト(ジャマイカ)が09年世界選手権ベルリン大会で記録した9秒58。サニブラウンは今年5月11日、日本人2人目の9秒台となる9秒99をマークし、今大会は5日の準決勝で追い風2・4メートルの参考記録ながら9秒96を出していた。(2019年6月7日)

09.97

3人目の9秒台 ~小池(9秒98)

陸上のダイヤモンドリーグ(DL)第10戦は20日、ロンドンで行われ、男子100メートル決勝で、小池祐貴(住友電工)が日本勢3人目の9秒台となる9秒98(追い風0・5メートル)をマークし、4位に入った。サニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)の9秒97に次ぎ、桐生祥秀(日本生命)と並ぶ日本歴代2位タイの記録。(2019年7月20日)

09.98
小池祐貴(住友電工)

6月の日本選手権で走る小池(左)。右は桐生祥秀

そして2020へ

男子100メートル日本歴代10傑

  • 1 9秒97 サニブラウン・ハキーム 2019
  • 2 9秒98 桐生 祥秀 2017
  • 2 9秒98 小池 祐貴 2019
  • 4 10秒00 伊東 浩司 ※ 1998
  • 4 10秒00 山県 亮太 2017、18
  • 6 10秒02 朝原 宣治 ※ 2001
  • 7 10秒03 末続 慎吾 2003
  • 8 10秒07 江里口 匡史 ※ 2009
  • 8 10秒07 多田 修平 2017
  • 10 10秒08 飯塚 翔太 2017
  • 10 10秒08 ケンブリッジ 飛鳥 2017

※は引退選手

男子100メートル