けた外れの覚悟があれば5区はいける…山の神・柏原竜二の回想

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「その1秒をけずりだせ」

第88回大会で最優秀選手(金栗杯)に輝き笑顔の柏原(2012年1月3日、高橋美帆撮影)
第88回大会で最優秀選手(金栗杯)に輝き笑顔の柏原(2012年1月3日、高橋美帆撮影)

 優勝した早稲田大とわずか21秒差で総合3連覇を逃した後、最上級生となる新シーズンに向け、仲間たちは「柏原に頼らないチームを作ろう」と異口同音に口にした。その決意を反映し、誕生した合言葉が、今もチームに受け継がれる「その1秒をけずりだせ」だった。

 「レースが終わって、自分が前年の記録より45秒遅かったのが明暗を分けたと思ったけど、同期は違いました。ミーティングの中で、21秒を1人2秒削った方がよかったよね、削れたんじゃないの?というところから始まり、みんなが秒数の話をしていた。だから(主将の)自分が、その最後の踏ん張りで1秒変わったかもしれないと話をしました。すごいですよね、そのスローガンがずっと続いているって」

 

 集大成となる最後の箱根駅伝では、仲間たちがその思いを見事に体現した。4区終了時点で2位の早大に2分近い差をつけ、柏原は4年目で初めて先頭でタスキを受けた。

 「(スタート時は)超浮かれていました。山本(憲二=3区)たちが走り終わってすぐ電話をかけてきて、『俺が先頭立ってやったけえ、これで楽じゃろ』って。僕も『実際楽だなあ』と思って、78分ぐらいで登ればいいなとか考えていました」

 

 そんな心中を見透かしたように、運営管理車で追走する酒井監督から、穏やかながら鋭い言葉が飛んできた。

 「『いいか、今日は1区から4区の選手がすごく頑張ってくれたから、お前は先頭を走っているんだ。勝って締めるために、お前が情けない走りを見せないようにいこう。今日はキャプテンであるお前が、次の日につなぐための走りだ』って。その言葉で、ふっと我に返りました。1~4区の頑張りを、いい意味で帳消しにしたいと思いました」

 

 柏原は守りに入ることなく、積極的にペースを上げてタイムを削りだし、自らが持つ区間記録を29秒短縮する1時間16分39秒をマーク。2位早稲田大に5分7秒の大差をつけて4年連続往路優勝のゴールに飛び込んだ。2年ぶりの王座奪還をほぼ決定づける快走だった。

 「あっという間に終わった。ずっと自分が客観的で、(14キロ過ぎの)小涌園で区間記録より20秒遅れと言われた時も、『まだ例年より力入るわ。行けるじゃん!』っていう感じでした。(終盤の下り坂の走りを)酒井監督から『4年目が最高の下りだった』って褒めてもらえた。いつもは恐怖感があって、どうしてもブレーキをかけてしまった。それが、監督が後ろから見ていて『こけるんじゃないか』と思うぐらい突っ込んでいました」

 「ゴール後はちょっと過呼吸になったけど、すごく余裕がありました。それぐらいベストなパフォーマンスができた。ゴール後に酒井監督が控室に到着して、『お前、76分台だぞ!』って言われたけど、『いやいや』って思うぐらい、自分が76分台で登っている感覚がなかった。まさに、ゾーン(理想的な心理状態)に入っていました」

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56678 0 読み物 2018/12/29 11:00:00 2018/12/29 11:00:00 2018/12/29 11:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181225-OYT8I50053-T.jpg?type=thumbnail

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