100年伝統つなぐ 令和も全力疾走…箱根駅伝シンポジウム 時代を駆け抜けたランナーたち

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 来年1月2、3日に行われる第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)のシンポジウムが11月22日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで行われた。「『箱根駅伝100周年』時代を駆け抜けたランナーたち」と題して、前拓大監督の岡田正裕さんや前早大監督の渡辺康幸さんら5人のパネリストが、この100年間のレースを彩った監督、選手を振り返り、大会を展望した。

V争い 全区間見逃せず… 渡辺康幸わたなべやすゆき さん

 

1973年生まれ。千葉県出身。早大時代に箱根駅伝4年連続出場し、3度区間賞。2010年度に早大監督として3大駅伝を制す。15年に退任して、住友電工監督に就任した。
1973年生まれ。千葉県出身。早大時代に箱根駅伝4年連続出場し、3度区間賞。2010年度に早大監督として3大駅伝を制す。15年に退任して、住友電工監督に就任した。

今大会の展望

 ――今回のテーマは「『箱根駅伝100周年』時代を駆け抜けたランナーたち」。まずは今回の予選会の話から。山梨学院大は通過できなかった。

 上田 大会前は非常にいい練習ができていたが、「いい練習ができている=力が出せる」ではない。メンタリティーとか動機付けとか、ボタンの掛け違いのまま最後まで行ってしまった。予選会は年々難易度が上がっている。

 渡辺 当日は非常に気温が上がってレースが荒れた。山梨学院大のほかに城西大、大東大も落ちたし、筑波大が6位に入るとは思わなかった。前半オーバーペースで入ったチームは、後半失速した。

 岡田 私が拓大を指導した9年間で1度だけ予選会で負けた年があったが、力はあった。でも、前半イケイケで行ってしまって後半に失速した。

 柏原 予選会はここで失敗したら終わりという独特の緊張感がある。自分は走ったことはないが、今回観戦して、経験しなくてよかったと思った。

熱心に聞き入る聴講者たち
熱心に聞き入る聴講者たち

 ――出雲全日本大学選抜駅伝で国学院大が初優勝し、全日本大学駅伝は東海大が制した。

 渡辺 5強と言われていたが、(その5チームの中で)国学院大が勝つとすれば、出雲か箱根駅伝の往路だと思っていた。選手層は薄いが、パンチ力のある選手が3枚いる。出雲の優勝は順当だが、出場選手数が増えるときつくなる。東海大は(けが人がいても)全日本に勝っちゃったので、箱根も順当なら東海大かなという感じを受けた。

 諏訪 東海大は全日本だけでなく、その後のハーフマラソンなどでも下級生が結果を出しており、層が厚くなっている。

 上田 ほかに駒大、東洋大、青山学院大もレースの仕方を十分心得ている。混戦、混沌こんとん、攻略、攻防戦の「4K」が今回の箱根の見所だと思っている。

 柏原 東洋大はエースの相沢晃選手に頼り過ぎている部分がある。他の選手が度胸と覚悟を持って、危険を冒しても勝ちにいく気持ちを持てるかどうかが勝負の鍵になる。

 ――今回の箱根駅伝を予想すると。

 岡田 過去2~3回は1区で突出した選手がいなかったが、今回はどこかがいくんじゃないか。

 渡辺 今回は優勝争いの予想が難しい。1区間ブレーキがあると優勝候補でも沈んでいく。1区間、1区間見逃せない。

 諏訪 ブレーキが1区間でもあると、優勝争いからシード権争いまで落ちてしまう可能性がある。10人の体調をいかにそろえるかという難しさがある。

 ――優勝予想をお願いしたい。

 岡田 青山学院大。東海大が大方の予想のトップに来ているが、最後まで分からない展開にするために(監督の)原(晋)君に頑張ってほしい。

 渡辺 東海大。4年生もいいが、下級生が育ってきて、チーム内競争が出てきた。「四天王」と言われる4年生が全日本では走ってないが、彼らでさえ箱根のメンバーに入るかどうか分からないほど層が厚い。

 諏訪 東海大。敵はインフルエンザだと思う。

 柏原 東洋大。酒井(俊幸)監督は、箱根に向けて出雲、全日本をどう戦うか考えている。若手を走らせて失敗もあるが、次で修正している。

 上田 東海大をどこが破るか。4Kのレースになる。

真剣勝負 将来広がる… 諏訪利成すわとしなり さん

 

1977年生まれ。群馬県出身。東海大時代は2年連続で2区を走る。アテネ五輪マラソンで6位に入賞しマラソン復活を印象づける。日清食品コーチを経て、日立物流コーチ。
1977年生まれ。群馬県出身。東海大時代は2年連続で2区を走る。アテネ五輪マラソンで6位に入賞しマラソン復活を印象づける。日清食品コーチを経て、日立物流コーチ。

世界への挑戦

 ――この大会は「箱根から世界へ」を大きなテーマに掲げている。

 諏訪 箱根駅伝に出られない選手は世界へは行けないという思いがあったが、かといって箱根駅伝を単なる通過点と見ていたわけではない。箱根に真剣に取り組むからこそ世界が広がる。私は将来、マラソンをやりたかったので、箱根駅伝の一番長いところ(当時の2区)を走りたかった。

 岡田 環境や時間、資金などの面で大学在学中は難しいが、五輪に選手を送り出して、一緒に経験したいという気持ちは今もある。

 渡辺 つい数年前まで箱根からマラソンで成功する選手が少なかったが、今回のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で東京五輪の代表になった選手や日本記録を更新した選手がいずれも箱根出身だった。箱根駅伝は、プラスでしかない。

 ――諏訪さんの現役時代と今の選手たちの違いは。

 諏訪 やっていることは何も変わらないが、今は満足することが多くなった。私たちのころは、記録を出す機会や試合が少なかったので、失敗できなかった。今の選手は色々な記録会があるし、欲求が満たされているのかなと思う。

 上田 五輪や世界を目指すのは一人では行けない。トレーナーや栄養士、コーチ……。そういう人たちをリスペクトして、気持ちが通い合う選手でないと続かない。走力だけでなく、そういう人間性を持った選手が、周りと協力しながら実力を上げていく。

引退したら

 ――次の100年に向けて箱根駅伝に望むことは。

 岡田 人間性、礼儀作法。あいつは箱根を走っただけあって、さすがに社会人として立派だなという選手を育ててほしい。

 渡辺 ラグビーW杯が盛り上がったが、ラグビーは究極の自己犠牲。陸上選手も自己犠牲を学びながら、苦しいことも経験して、セカンドキャリアで成功する人が増えていってほしい。

 諏訪 このコースをずっと残してほしい。過去の記録との比較を常にしていけたらと思う。

 柏原 競技引退後にどうするか、箱根駅伝や大学陸上界で教育をしていかないといけない。また、陸上をやりたい子に奨学金を与えられたら面白い。

 上田 箱根駅伝で失っちゃいけない基本は、AとZ。Aは安心安全。Zは、全員が全力を出し切れること。全員が無事ゴールしてほしい。これだけは継承していきたい。

沿道の応援 年々増加… 柏原竜二かしわばらりゅうじ さん

1989年生まれ。福島県出身。東洋大時代に4年連続5区で区間賞。総合優勝は3回。富士通に入社後、2017年に引退。同社企業スポーツ推進室で幅広く活躍。
1989年生まれ。福島県出身。東洋大時代に4年連続5区で区間賞。総合優勝は3回。富士通に入社後、2017年に引退。同社企業スポーツ推進室で幅広く活躍。

時代とともに

 ――箱根駅伝は時代とともに変わってきたのか。

 上田 昔から人気のあった大会だが、テレビ中継が始まって、テレビに映るようになり、学校が強化するようになった。レベルが上がった要因はテレビ中継の力だ。

 渡辺 時代によって強い大学の変遷があるが、上に立つ人、理事長、学長クラスの旗振り役が一生懸命やっている大学が強くなっている。勝利・普及・資金というチームマネジメントがうまくできているチームが今、優勝している。

 諏訪 自分が走ってた時、2区は応援が途切れなかったが、4区はそうでもなかった。今は沿道の応援の方が本当に増えている。

 柏原 5区も年々人が増えている。最初に走った年は箱根湯本を過ぎたあたりから人がいなくなったが、4年目は、そんなに沿道にせり出して大丈夫かなと心配するくらい、たくさんの人に来ていただいた。「駅女」が増えたり、新規参入校も増え、10年ちょっとの間にこんなに変わるんだと驚愕きょうがくしている。

小出さん激励で区間賞… 上田誠仁(うえだまさひと) さん

1959年生まれ。香川県出身。順大時代、箱根駅伝に3年連続出場し、5区で2年連続区間賞。山梨学院大監督として3度総合優勝。関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長。
1959年生まれ。香川県出身。順大時代、箱根駅伝に3年連続出場し、5区で2年連続区間賞。山梨学院大監督として3度総合優勝。関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長。

選手時代の記憶

 ――皆さんの選手時代の思い出を。

 岡田 1967年に初めて走ったのは9区。周りは畑ばっかりで、ほとんど1人で走る感じだった。68年は3区。早大と争っていて、伴走車に乗っていた早大の中村清監督が校歌を歌って、「亜細亜の選手よ、俺の歌を聴いて頑張れ」と声をかけていただいた。

 上田 伴走車からは2人の監督に声をかけてもらった。大学2年の時は沢木(啓祐)監督から「今から宮ノ下に行くぞ。傾斜角12%。キロにしたら10秒くらい落ちるから気にするな」と科学的なアドバイスを受けた。翌年は米国留学中の沢木監督の代わりに千葉・佐倉高で教員をされていた小出(義雄)さんに「上田、調子いいなあ。うーん、いい走りだ」と励まされ、区間賞が取れた。

 渡辺 僕らは4年間、山梨学院大がライバルだった。両チームに日本代表クラスがたくさんいた。今の留学生より僕のライバルの真也加まやか(ステファン)君の方が強いんじゃないか。

 諏訪 当時、渡辺さんがマークした2区の1時間6分48秒は絶対抜けない記録だと思っていた。あんな苦しい所は走るもんじゃない。3年生で2区を初めて走った時、タスキを受け取る前に時計を外した。自分の思ったように、思い切り走りたかったので。この時から時計をしないで走るようになった。

 柏原 大胆に走らなくちゃいけない部分が必ず出てくる。最初に5区を走った時、佐藤(尚)監督代行からは「3番以内を目指しなさい」と電話で言われたが、「僕は優勝目指します」と言って、切った。

 渡辺 柏原君の対策なんてなかった。必ず4~5分やられた。早大に入る選手は皆、高校時代、トップクラスなので、5区を走って柏原君に負けたくない。だから山登りのなすりつけ合いが起こる。柏原君が現役だった4年間は、僕の中では悪夢だった。

 岡田 うち(拓大)は高校時代に活躍した選手はいないので、柏原君と同じ区間走れるだけで喜んでいた。

 上田 柏原君の破壊力、エンドレスなスタミナ、継続する闘争心。揺るがない自信を持っている。(福島・いわき総合)高校時代からすごく興味あった。

走っている時おだてる… 岡田正裕おかだまさひろ さん

 

1945年生まれ。熊本県出身。亜大で箱根駅伝に2度出場。ニコニコドー監督として松野明美らを育てる。2006年亜大監督として初の総合優勝。19年に拓大監督を退任。
1945年生まれ。熊本県出身。亜大で箱根駅伝に2度出場。ニコニコドー監督として松野明美らを育てる。2006年亜大監督として初の総合優勝。19年に拓大監督を退任。

監督の役割

 ――監督時代に感じた大変さとは。

 渡辺 高校時代に実績ある選手が取れるチームはいいねと言われたが、それはそれで大変。4番打者というか、鼻っ柱の強い選手ばかり集まってきて、まとめるのが大変だった。

 ――岡田さんは選手を本当によく走らせた。

 岡田 (ニコニコドー時代に)松野明美さんを1万メートルからマラソンに転向させる時、皆が無理だと言った。1万で倒れるんだからその4倍は絶対無理だと。克服するために、初マラソン日本最高記録を出した時には、50キロを3回走らせた。もちろんペースは遅いが、これで距離に対する自信を持てた。亜大では、選手の走力がなさ過ぎるので、それじゃ走ろうやと話した。周りからは、やり過ぎだと言われたが、それで総合優勝することができた。走り込むことが、長距離の原点だろうと思ってやってきた。

 ――諏訪さんの東海大時代は新居利広さんが指導していた。

 諏訪 厳しい指導とは真逆の先生で、私たちが個人でやりたいことを優先させてくれた。もっと走りたいと言っても、休まないと次の練習に支障が出るからと。

 ――監督は、運営管理車から選手にどういう声をかけているのか。

 渡辺 僕は褒め倒す。人はけなしたらなえる。気分良く走らせてあげたいから「今日は最高の走りだよ」と言う。(駒大の)大八木(弘明)監督みたいな声かけをするのは僕の性格ではできない。(青学大の)原(すすむ)監督は、選手を持ち上げまくって走らせている。もうお祭り騒ぎだ。

 岡田 私は、事前に選手の家族、彼女がどこに陣取って応援しているかを把握して、その近くになったら「おい、格好いいところ見せろよ」と。ミーティングでは相当やかましいことを言うが、走っている時にはおだてることが一番と思ってやってきた。

 上田 「お前の4年間はこれだけだったのか。力を残して卒業するのか」。心のどこにボタンを押すか。監督さん自身も前半と中盤、後半で違ってくる。仏像でイメージするなら前半は薬師如来や観音さんで、だんだん阿修羅像、仁王像みたいな感じになってくる。

司会 菅谷大介・日本テレビアナウンサー
司会 菅谷大介・日本テレビアナウンサー

主催 関東学生陸上競技連盟

共催 読売新聞社

特別後援 日本テレビ放送網

後援 報知新聞社

特別協賛 サッポロホールディングス

協賛 ミズノ、トヨタ自動車、セコム、敷島製パン

箱根駅伝公式サイト

 過去の記録を集めたデータベースや、箱根駅伝関連の最新ニュースなどを収録。関連イベント情報などを随時更新する。アドレスはhttp://hakone-ekiden.jp/。携帯電話サイトはhttp://hakone-ekiden.jp/m

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949711 0 読み物 2019/12/14 05:00:00 2019/12/16 10:17:35 2019/12/16 10:17:35 渡辺康幸さん https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191213-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail

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