山梨学院大「名門復活のタスキ」競争促し、団結力と体力強化で改革

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山梨学院大・今年の予選会成績はこちら

 17日に行われた第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の予選会で、山梨学院大陸上競技部は7位に入り、本大会への復帰を決めた。昨年の予選会で惨敗し、本大会への連続出場が33で途切れたチームが、わずか1年で果たした雪辱。選手たちは11月1日に全日本大学駅伝への出場も予定するなど、34度目の箱根路に向けて準備を進めている。(高村真登)

10月17日の予選会で力走する山梨学院大の選手たち
10月17日の予選会で力走する山梨学院大の選手たち

「すべては勝つために」

 「みんなが信頼できる強い選手になり、チームとしても成長できた」。予選会終了後、甲府市の同大キャンパスで行われた予選会の報告会で森山真伍主将(4年)は胸を張った。この1年、雪辱を果たすため、「All For Win(すべては勝つために)」というテーマを掲げ、勝つための改革を図ってきた。その柱となったのは、チームの団結と体力の強化だった。

 予選落ちした直後の昨年11月。選手たちは何が足りなかったのかを話し合った。そこで浮かび上がったものの一つが「チーム力の弱さ」だった。駅伝はチームスポーツ。走るときは一人でもタスキをつなぐ仲間がいて初めて成り立つ。しかし、斎藤有栄副主将(4年)は「昨年までは他学年と話す機会が少なく、一体感が欠けていた」と振り返る。そこで毎月1回、約60人の長距離部員全員が参加するミーティングを開催。練習の反省点などを報告し合った。さらに主力と控えの選手が一緒に練習する機会も設け、チームの意思疎通を深めた。

 これを機に各学年、主力や控えの選手の間で垣根が取り払われ、チームが一つになっていった。1年ながら予選会に出場した新本駿選手も「先輩たちは相談しやすく、頼りになる存在」と語る。飯島理彰・駅伝監督が「4年生が先頭に立ち、チーム全体で箱根を目指す雰囲気が出来上がった」と話すように、団結力が予選突破の推進力となった。

予選会でチームトップの19位に入ったポール・オニエゴ選手
予選会でチームトップの19位に入ったポール・オニエゴ選手

自己ベスト更新続々

 「今年、箱根路に戻れなかったら二度と復帰できない」。もう一つの課題の体力強化には、飯島監督の危機感のもと、厳しい練習に取り組んだ。昨年の予選会では後半に選手が次々に失速。スタミナをつけるため、普段の練習から後半1キロあたり約30秒のペースアップを課し、長野県の高地で行った夏合宿では例年の約1・5倍の距離を走り込んだ。腹筋や背筋など体幹を鍛えるトレーニングにも日々時間を割き、後半も推進力を維持するフォームで走れる体を作り上げた。

 その結果、今秋に同大の練習場で行われた記録会では13人もの選手が1万メートルの自己ベストを更新。中でも記録を52秒更新した橘田大河選手(2年)は予選会で昨年の236位から46位へとリベンジを果たし、予選突破に大きく貢献した。「昨年は自分をアピールしたい気持ちがあったが、今年はチームで箱根に行くため、『1秒でも前へ』ということしか頭になかった」と語る。予選会でハーフマラソンの自己ベストをたたき出した選手は橘田選手を含め、出走12人中10人に上った。

 予選会前、飯島監督は「登録メンバーの14人を選ぶのに候補が25人ほどいる。これほどうれしい悩みはない」と話していた。昨年の悔しさを忘れずに主力から控え選手まで部員全員が一体となり、団結力と体力の強化を実現。まさに「All For Win」の言葉を体現し、箱根路の切符をつかみとった。

予選会突破を報告する森山主将(中央)(17日、山梨学院大で)
予選会突破を報告する森山主将(中央)(17日、山梨学院大で)

突破翌日から再出発

 17日の予選会突破の余韻もさめやらない18日早朝、山梨学院大陸上競技部の長距離部員全員が甲府市の緑が丘スポーツ公園に集まった。「やっとスタートラインに立てた。シード権獲得に向け、今日からまた練習を頑張っていこう」。森山真伍主将(4年)が呼びかけると、選手たちは箱根路に向けて再び走り始めた。

本大会に向けて走り込みを始めた選手たち(20日、甲府市の山梨学院大陸上競技場で)
本大会に向けて走り込みを始めた選手たち(20日、甲府市の山梨学院大陸上競技場で)

シード権目標競争促す

 山梨学院大は1987年に箱根駅伝に初出場して以来33回連続出場。総合成績では優勝3回、準優勝5回を誇る名門だ。シード権に目を向ければ、その獲得回数は実に21回に上る。その輝かしい歴史から見れば、シード権は当然の目標だ。

 しかし、近年はシード権から遠ざかってきた。直近のシード権獲得は2016年大会の8位まで遡る。翌年は大会前に主力選手がインフルエンザに感染し、17位と惨敗。その後も18位、21位と低迷し、今年は出場さえも逃した。今回、箱根路への復帰を1年で決めたものの、かつての名門の名を取り戻すのは決して容易ではない。

 チームの課題に挙がるのは、経験不足とレース終盤のスピード力だ。箱根路の経験者は2年生の時に走った森山主将と、今年の正月に関東学生連合チームの一員として走った渡辺晶紀選手(3年)の2人のみ。新型コロナウイルスの影響で今年は中止になった大会もあり、大舞台での経験不足が心配されてきた。また、予選会では猛練習の成果で高速レースにも順応し、15キロ地点までは3位だったが、最終順位では7位まで落ちた。他校がペースを上げたためで、終盤のスパートに課題を残した。

分厚くなった選手層、初出場でも活躍

予選会で46位のタイムで力走した山梨学院大の橘田大河選手(17日、東京都立川市で)=大石健登撮影
予選会で46位のタイムで力走した山梨学院大の橘田大河選手(17日、東京都立川市で)=大石健登撮影

 ただ、予選会では収穫も大きかった。出走12人中8人が初出場という布陣にもかかわらず、終始安定した走りを見せ、大舞台での成功体験をつかんだ。その一人である松倉唯斗選手(3年)はチームで2位、全体でも35位と大活躍。「初めての予選会で足を引っ張らないようにと考えていたが、練習の成果が出て自信になった」と語る。レース終盤の課題に対しても、森山主将は「本大会ではより速いペースも予想されるので、良い練習になった」と前向きだ。

 来月1日には伊勢路で行われる全日本大学駅伝に3年ぶりに出場する。今年の箱根路を制した青山学院大など強豪校の選手らと肩を並べて走り、さらなる経験を積むことで本番への備えにする考えだ。

 選手層が増し、予選会に出場した選手以外にも有望選手が控えることも好材料だ。けがの影響で予選会を欠場した1万メートルでチーム最速のケニア人留学生ボニフェス・ムルア選手(2年)や、関東学連の9区で3人を抜く好走をみせた渡辺選手も本大会への出場に向けて調整を続けている。

 予選会後、飯島理彰・駅伝監督は「本大会のメンバーは全くの白紙」と選手たちに告げた。11月下旬から千葉県で約1週間、本大会へのメンバー選考を兼ねた合宿を行う予定で、厚い選手層でさらなる競争を促し、本番でシード校に返り咲く考えだ。今回の「復活」が本物になるかどうか――。その勝負は始まったばかりだ。

2人の監督にインタビュー

 次の目標である「シード権の奪還」に向けて走り出したチームを率いる飯島理彰・駅伝監督と上田誠仁監督に復活までの1年の振り返りと、来年正月の本大会の展望を聞いた。

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1583654 0 読み物 2020/10/28 11:15:00 2020/10/28 12:36:15 2020/10/28 12:36:15 箱根駅伝予選会でゴールする山梨学院大の橘田大河選手(17日午前10時37分、東京都立川市で)=大石健登撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201026-OYT8I50118-T.jpg?type=thumbnail

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