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団結深めて「集団」から「チーム」へ…城西大、箱根駅伝に挑む

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 来年1月2、3日に行われる第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝=読売新聞社共催)には、埼玉県坂戸市を練習拠点としている城西大も出場する。10月の予選会で3位に入り、埼玉県勢では唯一となる予選突破を果たした。正月の箱根路に向け、士気の高まるチームを追った。(吉見光次)

予選会を好タイムで力走し、箱根切符獲得の立役者となった菊地主将(中央)(10月17日、東京都立川市で)=沼田光太郎撮影
予選会を好タイムで力走し、箱根切符獲得の立役者となった菊地主将(中央)(10月17日、東京都立川市で)=沼田光太郎撮影

菊地・砂岡・菅原の3選手、予選会で輝く

 10月17日に東京都立川市で開かれた予選会で、城西大の男子駅伝部員は見事な走りを見せた。菊地駿弥主将(4年)は1時間1分45秒で総合8位。1時間1分52秒の砂岡拓磨選手(3年)、1時間2分6秒の菅原伊織選手(4年)を含めた計3人が、駅伝部員のハーフマラソン最高タイムを上回る快走を演じた。

 「予選会のレベルが高く、驚かされた」と櫛部静二監督が振り返るように、ライバルの大学も選手強化が進んでいた。その中で部内記録を更新する選手が3人出た要因について「シューズの進化も大きいが、異例となる平坦へいたんコースでの開催、低い気温などタイムが出やすい環境だった。その中で彼らは、過去のエースだった選手たちと同じ水準で走ってくれた」と分析する。

再建へ、仲間導いたキャプテン

 しかし、櫛部監督は「今年は何か特別なことをしたわけではない。昨年も(予選突破に)十分なレベルだった」と語る。それでも昨年の予選会は、まさかの15位で敗退。チーム再建に大きく貢献したのが菊地主将だった。

 高校まで主将を務めた経験がない。その上、箱根行きを逃して落胆している選手たちをまとめるという重い課題を抱えての再出発だった。「主将の一言が持つ意味は重い。『軽率なことは言えない』と感じた」と打ち明ける。

 同学年の部員と話し合い、「1人の力を皆の力に」というスローガンでチームの変革に取り組んだ。部員には積極的に声をかけた。強い相手に「かなわない」と諦めそうになる選手には「勝った人が強いんだよ」と諭し、実力を発揮するためには自分の中に壁を作ってしまわないことの大切さを説いた。「良いオーラを周りに感染させたい」との思いから、予選会直前の朝練習では、選手をまとめて「エイ、エイ、オー!」と声を張り上げ、士気を高めようと努めた。

 櫛部監督は「予選敗退した昨年は『団結力、結束力が欠けていた』という反省の声も挙がった。今年は、菊地がよくまとめた」と評価する。12人全員が走りに集中した結果、今年の予選会は自己ベストが続出して箱根の切符をつかんだ。

 菊地主将は「僕らはチームであり、集団ではない」と強調する。陸上競技をする仲間が集まるだけではただの「集団」に過ぎず、同じ目標を掲げることで「チーム」としてまとまるという。今年のチームは「箱根路を走る」という明確な目標を貫き通し、まずは第一関門を突破した。

沖縄でメンバー選考、努力でつかむ憧れの舞台

南国の植物に囲まれたロードで、箱根駅伝に向けた練習を積み重ねる城西大のメンバー(11月27日、沖縄県国頭村で)
南国の植物に囲まれたロードで、箱根駅伝に向けた練習を積み重ねる城西大のメンバー(11月27日、沖縄県国頭村で)

 城西大男子駅伝部は11月下旬に沖縄本島最北端の沖縄県国頭村くにがみそんへ渡り、今月12日まで箱根駅伝出場候補選手を集めた選考合宿を行った。Tシャツ1枚でも過ごせる夏のような気候の下で、朝と夕の2回、それぞれ10キロ以上走り込んだ。

 予選会に出場していない選手も含め、約20人が連日汗を流した。実際に箱根路を走れる選手は10人で、その多くは予選会に出場したメンバーから選ばれる見込みだ。

 その一方で、櫛部静二監督は「一番大事なのは、練習の中でしっかり走っているかということ。急成長してメンバーに食い込む選手が出てくることも期待したい」と話す。予選会に参加していない選手でも、本大会の出場枠に滑り込む余地は十分にある。その可能性に懸け、最初で最後の箱根切符をつかみとろうと練習に打ち込むのが、貴田勇斗選手(4年)だ。

 愛知県豊田市出身だが、正月の風物詩として大勢の声援を受けて走る箱根駅伝の選手の姿をテレビで見て、その舞台に憧れた。愛知・中部大第一高時代に、記録会を見に来ていた櫛部監督に声をかけられたことがきっかけで「城西大へ進学し、箱根を目指そう」と思うようになった。

 入学直後の1万メートルのベストタイムは30分37秒と、同学年でも遅い方だった。さらに1、2年時はけがも多く、「練習が積めないので、意欲が低下していた時期もあった」と振り返る。

 実力が伸びたのは、3年生になってからだった。体を鍛えたことでけがが減り、練習量を増やせるようになった。「夏場で多い時には月間750キロ走った」という努力の成果が表れ、1万メートルで29分34秒と、ベストタイムを入学時より1分以上縮めた。4年生になっても調整は順調で、秋の予選会でメンバー入りを予定していた。

遅かった僕でも速くなれる…貴田選手

 ところが、9月に長野県で行っていた合宿中に右ふくらはぎの痛みを覚え、疲労骨折が判明した。予選会は無念の欠場となり、チームの応援に回った。それでも、10キロ過ぎからペースを上げていった仲間たちの走りは「安心して見ていられた」といい、2年ぶりにつかんだ箱根の切符を一緒に喜んだ。

 それと同時に、自らも箱根への決意を新たにした。けがを完治させて練習に励み、11月の記録会では自己ベストに19秒差まで迫るタイムを記録して復調ぶりをアピールした。「まだこれからタイムを上げられる」と自信をのぞかせている。

 卒業後の進路は未定だが、陸上競技は大学までと決めている。それだけに、「箱根駅伝に出て、僕のように遅かった選手でも努力次第で速くなれるという走りを、皆に見てもらいたい」との思いを秘め、競技生活の集大成となる箱根路を目指す。

7人のマネジャーと人生の糧

 箱根を目指すのは、選手だけではない。練習の準備やタイムの測定など、裏方として選手を支えるマネジャーが、城西大男子駅伝部には7人在籍している。

練習後の選手に声をかけるなど、裏方としてチームを支えている藤木主務(右)(11月27日、沖縄県国頭村で)
練習後の選手に声をかけるなど、裏方としてチームを支えている藤木主務(右)(11月27日、沖縄県国頭村で)

 統括役の主務を務めるのは藤木俊希さん(4年)だ。長野県栄村出身で、高校まで長距離種目の選手だった。

 大学でも同好会で陸上競技を続けながら、経営学部教授でもある櫛部静二監督の授業を受けていた。真面目な性格や陸上競技に対する理解度の高さなどが監督に評価され、1年の夏頃に「マネジャーをやってみないか?」と声をかけられた。

 男子でマネジャーになる場合、選手として入部した後、転向する人が多い。駅伝部員でなかった人は珍しく、親にも相談した。その上で「大好きな陸上とかかわれるなら、やってみよう」と決断。選手とともに合宿所で暮らし始めた。

 「マネジャー経験がないのに、箱根を目指す駅伝トップチームの選手を、しっかり支えられるだろうか?」との不安も抱えながら、朝練習の付き添い、給水ボトルの用意、タイム計測、選手のフォームの撮影など、休みのない日々を送った。3年時には予選会で敗退する屈辱も味わったが、悔しさを糧に、最上級生となった今年は2年ぶりの予選突破を陰で支えた。

 3年を超えるマネジャー生活で「自分たちの努力が形で見えるのは、選手が自己ベストを更新したり、走りきった姿を見たりした時」と感じた。選手から「一緒に頑張ろう」「支えてくれてありがとう」と温かい声をかけられた時が、最もうれしい瞬間だ。

 今春はコロナ禍で苦労しながら就職活動も続け、鉄道会社から内定を得た。入社後は駅員業務を担当する予定で、「これまでも選手をサポートする側だった。選手をお客様に置き換えれば、マネジャー業も仕事に生かせるのではないか」と、今の経験を卒業後にも役立てるつもりだ。

 藤木主務の業務を引き継ぐのは、上田まもるマネジャー(3年)だ。監督と同じ宇部鴻城高(山口)出身で、「箱根駅伝に出たい」との思いから、選手として入部した。しかし、左足のけがなどで十分な練習を積めずにいた時間が長く、監督から打診を受けて2年の秋にマネジャーへ転向した。

 女子マネジャー3人も含め、同学年の14人で心に誓った「箱根に出る」という目標のもと活動してきた。その成果は今年の予選会で表れ、「裏方の仕事でも貢献できているのかな?という気持ちになれた」と実感している。

 現在はマネジャーの業務と並行して就職活動に励んでいる。「説明会などがオンラインなので、合宿地からでも参加できるのはありがたい」といい、物流やマスコミなど目指す業種を研究している。「裏方から皆を支えるマネジャーのような業務が自分に合っている」と考え、来春の箱根路を経由して、人生の進路を模索するつもりだ。

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使い方
1708123 0 読み物 2020/12/18 11:00:00 2020/12/18 10:37:28 第97回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会。力走する城西大の菊地駿弥選手(中央)。東京都立川市の陸自立川駐屯地で。2020年10月17日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201217-OYT8I50099-T.jpg?type=thumbnail

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