読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

山の神・柏原竜二さん、亡き恩人への思いを胸にラジオで語る箱根駅伝

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 箱根駅伝の山登り5区で東洋大時代に4年連続の区間賞に輝いた「山の神」こと柏原竜二さん(31)(現・富士通企業スポーツ推進室勤務)は、文化放送の番組「箱根駅伝への道」のナビゲーターを、前回大会から務めている。メディアの一員になって2年目の今大会は、かけがえのない恩人への思いを胸に刻んで、大会の魅力をラジオのリスナーに語り伝える。「あの人のやろうとしたことを、僕はやり続けます」(込山駿、西口大地=読売新聞オンライン)

山の神・柏原竜二さん(左)と、深い絆で結ばれていた文化放送の名物アナウンサー・松島茂さん(文化放送提供)
山の神・柏原竜二さん(左)と、深い絆で結ばれていた文化放送の名物アナウンサー・松島茂さん(文化放送提供)

選手の声、よりよく伝えたい

 番組は10月から元日までの火~金曜、午後6時半ころから15分間、オンエアされている。クリスマスイブの放送では、優勝候補の一角・東海大の戦力を分析した。

 「3本柱(塩沢稀夕、名取燎太、西田壮志)は区間賞を狙える選手たちです。どうしても力が入る。その力をいかに抜き、リラックスして12月を過ごせるか」「ほかにも速い主力選手がいる。そのうちの誰を復路に回すか。監督は悩ましいでしょう」「山登りのスペシャリスト・西田くんに、どんな流れでつなげるかもポイントです」

 テンポよく、明解に語る。急坂をものともせずに駆け上がった現役時代の足取りをほうふつとさせる解説ぶりだ。選手や監督のインタビュー音声も交え、情報満載の15分間。年明け1月の本大会は、2日の往路・3日の復路とも、ラジオ実況中継の解説者を務めることにもなった。コロナ禍の今大会は、主催者側が駅伝ファンに沿道での応援自粛を呼びかけるという、前例のない環境下でのレースとなる。どんな思いで伝えるのか。読売新聞オンラインの取材に応じ、熱っぽく使命感を語った。

 「どのスポーツでもそうですけど、『応援したいから、応援にいかない。』という新生活様式が広まってきました。それでも駅伝にとどまってくれたファンに、コロナが明けた後で沿道へ戻ってきてもらえるよう、僕たちメディアには努力と工夫が必要です。選手や監督の気持ちに寄り添い、よりよい形で声を伝えること。きっとそれは、あの人が今大会で、やりたかったことだと思うんです」

 あの人――。2020年2月に47歳の若さで他界した文化放送の名物アナウンサー・松島茂さんに思いをはせた。「箱根駅伝への道」を前回大会まで長く担当し、現役時代の柏原さんを密着取材し、ラジオの仕事へ導いてくれた恩人でもあるという。ここからは、柏原さんの言葉だけでお届けする。

2011年1月2日、箱根駅伝の5区を力走する東洋大3年(当時)の柏原竜二
2011年1月2日、箱根駅伝の5区を力走する東洋大3年(当時)の柏原竜二

すり減った心を癒やしたプレゼント

 箱根駅伝を走った東洋大での4年間で、僕は3年生の時(2010年度)が一番つらかったんです。チームが箱根駅伝3連覇をめざしたシーズンでしたが、けがもあって僕は調子が悪かった。いろんなメディアが来て、同じ話を毎回繰り返す日々。僕は「近寄るな」っていうくらい殺気立っていて、そんなころに各社の記者が集まる合同取材が設けられました。

 松島さんは、たくさん並んでいる報道陣の最前列に座っていました。黒い紙袋を持って、ニコニコしているんです。「あ、文化放送の松島さんだよなぁ」と思っていたら、いの一番に言われました。「きょうは僕、取材はどうでもいいんだ。君に渡したいものがある」。紙袋を受け取って、開けてみたら……。

 花沢香菜さん。アニメファンの僕が一番好きな声優さんのサインが入っていたんです。「誰のサインか分かる?」と言われて、「いやいや、オレ応募したことある、このサイン!」と、興奮しました。消耗しきっていた僕が、その一瞬で我に返ったような感じです。

 合同取材の場では「今季は調子悪かったけど、最近は体調どうなの」などと本当に軽くしか聞かないまま、帰っていきました。ほかのメディアは「なんで体調が悪いの?」などと、もう分かっているはずのことを根掘り葉掘り聞いてきたのに、あえて深く聞かないんですよ。監督にはたぶん、しっかり取材していたと思います。そのうえで、深く聞くのはよくないなというタイミングでは、すっと引く。あのスタンスが、素晴らしい。もう10年前の話になりますけど、よく覚えています。

 それから、僕の取材にくるメディアには、自己紹介とともに出身大学名を言って「東洋大、強いよね。ウチの母校は負けっぱなしだよ」と語る人が多くて、当時はちょっと敏感になっていました。ところが、松島さんからはそういう話をされたことがありません。早稲田大出身だということを、僕は現役引退後に食事したときまで知りませんでした。そんなところにも感心しました。

キューピッドにしてスカウト

 文化放送で松島さんが担当していたスポーツ番組に出演したときのことです。松島さんと番組でコンビを組んでいた同局の八木菜緒アナウンサー(現・BS11)も交えて、3人でご飯を食べに行きました。都内の焼き肉屋さんでしたね。松島さん、その席でずーっと、僕に彼女を勧め続けました。「八木ちゃん、どう?」って。

 僕たち2人が(2019年に)「結婚します」と文化放送で報告した時、松島さんは椅子からずり落ちるほど驚きました。引き合わせて、あれだけ勧めておきながら、それを「すっかり忘れていた」そうです。そういう、おちゃめなところもある人でした。

 僕が今「箱根駅伝への道」に出演しているのも、松島さんのおかげです。昨年の駅伝シーズン前には、松島さんが僕の勤務先である富士通の本社に足を運んで「柏原くんを3か月、文化放送に貸してください」と申し込んでくれました。「煮て食うなり、焼いて食うなり、好きにしてください」と上司も快諾してくれたので、富士通の社員でありながら、箱根駅伝までの3か月はラジオの仕事ができています。

選手に共感し、寄り添うこと

 とても悔しいことに、松島さんは前回大会前に病気が分かって、取材に出られなくなりました。あのころ、各大学の監督さんや関係者たちが「松島さんが取材に来ないけど、大丈夫なの?」と、僕に尋ねてきました。姿が見えないと、みんなから「異常事態」だと認識されるほど、現場に寄り添っていたわけです。「少し体調を崩されていて……」と答えるのが、僕には精いっぱいでした。亡くなった時は、いろんなスポーツの選手や監督から、たくさんの花が集まっていました。先日、帝京大の中野孝行・駅伝監督と対談させていただいた時も、中野監督が松島さんの写真が入ったカードを「きょうは見ているかもしれないからね」とテーブルに置いて、取材がスタートしました。それほどスポーツ界から慕われていた人です。

 選手や監督に共感し、寄り添うこと。松島さんがやってきたのは、こういうことだったのかと、改めて感じています。今、ラジオの仕事では「松島さんのやってきたことを続けていこう」という一心です。「タスキを受けた」と口にするのは、おこがましいと思います。ほとんどすべて、10のうち9まで、僕は松島さんに負けていますから。

 ただし、実際に箱根駅伝を走った経験者として、「選手目線」という点においてだけは、勝てるかもしれません。現場へインタビューに行けば、ありがたいことに僕にはどんどん、情報が集まってきますから。そこをいかして、番組を充実させていきたい。松島さんが僕をラジオの仕事に起用してくれた理由も、そこにあると思うんです。(談)

無断転載・複製を禁じます
1736708 0 読み物 2020/12/29 11:00:00 2020/12/29 22:57:28 2020/12/29 22:57:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201228-OYT8I50071-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
お買い上げ金額から10%OFF
NEW
参考画像
1ドリンクサービス(お一人様1杯)
NEW
参考画像
1,000円以上お買上げの方に「とうきび茶」プレゼント
NEW
参考画像
「ふぞろいの牛タン・切り落とし」一品プレゼント!
NEW
参考画像
ファーストドリンク一杯無料

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)