ヨガに食育、避暑地へ日帰り…コロナ下の箱根駅伝へ早稲田大と東洋大が試行錯誤

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 来年1月開催予定の箱根駅伝を目指す各大学は今季、新型コロナウイルスの影響で様々な制約を受ける異例のシーズンを送ってきた。有力校の中でも特に厳しく活動が制限されたのが、前回7位の早稲田大と10位東洋大だ。それでも、新たなチーム強化の形を懸命に模索した両校は、11月の駅伝シーズン開幕を前に手応えをつかみつつある。(西口大地)

早稲田大、東洋大など4校の対校戦で力走する選手たち(10月11日、埼玉県所沢市で)
早稲田大、東洋大など4校の対校戦で力走する選手たち(10月11日、埼玉県所沢市で)

合宿許可出ず、日中避けて走り込み

 コロナの感染拡大で政府の緊急事態宣言が発令された今春。チーム全体が寮に残った大学、選手各自の判断で一部が寮を離れて実家に戻った大学など、各校の判断は分かれた。早大と東洋大は大学の方針で寮自体が閉鎖になり、チームが一時解散した。選手たちは地元に戻り、長期間の自主練習を余儀なくされた。

 早大は6月下旬にチームが再始動した。当初、戻ってきた選手の仕上がり具合はバラバラだった。相楽豊監督は「手を着けないところから始めました」と、苦笑まじりで振り返る。約3週間は通常の練習に戻さず、負荷が高いメニューに取り組む「ポイント練習」の日を週1回に限定。それ以外の日は各自に練習を任せ、個々の状態を見極めることにかなりの時間を費やした。「その中でも、例えばスピードタイプの子がグループを作って練習するなど、学生たちが工夫してやっていました」と指揮官は振り返る。

 10区間全てで20キロ以上の距離を走る箱根駅伝を見据え、7~8月は例年、高地など涼しい場所での夏合宿でじっくり長い距離を走り込む。しかし、今年は大学から合宿の許可が下りなかった。拠点とする埼玉県所沢市で練習を続けざるを得なかった。

 夏の練習では「できるだけ日が昇る前に走り始めて、日が沈みかけてからまた走る」という形で、日中の猛暑を避けた。熱中症防止のため、例えば1000メートルを走る練習なら例年より20秒ペース設定を落として「絶対にできるレベル」に抑え、日帰り圏内の避暑地で、走りやすいコースがある西湖(山梨県富士河口湖町)まで足を運んで距離走を走るなど、可能な範囲で走る距離を積み上げた。走行距離は例年の合宿の6割に満たない程度にとどまったが、その傍らで1本200~300メートルのショートダッシュをメニューに加えて練習の質を高めるなど、試行錯誤の夏を過ごした。

始動は8月、こんな時こそ「新しい東洋」目指して

 東洋大は緊急事態宣言が解除された5月末以降、段階的に寮へ戻る人数を増やした。チームが本格始動したのは、8月上旬になってからだ。夏合宿も一か所に集まる人数が制限されて全体合宿が行えず、酒井俊幸監督は「1年生を中心に今年は走り込みの量が足りていない」と頭を悩ませている。

 そんな苦境下で取り組んでいるのが、チームの強化理念である「食育とフィジカル」の見直しだ。

 食育に関しては従来から、講座などを通した全体指導を実施してきた。今年はさらに、個別の相談を積極的に受け付け、1人1人に合った食事の取り方を追求した。

 フィジカル面については、体の柔軟性や可動域を高めるために、ヨガをチーム全体で取り入れた。自宅待機中の選手には、指導陣が見繕ったレッスン動画をSNSで共有。選手各自の課題に応じた練習メニューを、トレーナーの指導下で組んだ「個別フィジカル」の時間も増やした。

 正月の箱根駅伝で、12年ぶりに3位以内を逃した。再起を図る今年、チームは例年以上に練習の質を高めて駅伝シーズンを迎えるつもりでいただけに、もどかしい状況が続いた。とはいえ、酒井監督はすでに、思考の切り替えを済ませたようだ。「こういう時だからこそ、思い切って新しい東洋に作り替えていく」と前向きな言葉を発した。

対校戦の5000メートルで好走した東洋大の松山(左)と1万メートルで優勝した早大の中谷
対校戦の5000メートルで好走した東洋大の松山(左)と1万メートルで優勝した早大の中谷

対校戦、早大が逆転V

 コロナ禍によって今年は中止となった出雲駅伝が、本来なら開催されているはずだった10月11日。早大と東洋大は、今季初の「チーム戦」に出場した。両校と明治大、創価大を含めた4校による対校戦「トラックゲームズin TOKOROZAWA」だ。

 5000メートルと1万メートルが、1レースずつ実施され、出走した各校代表選手の合計タイムを争う方式だった。11月の全日本大学駅伝から始まる駅伝シーズンを前に、今季のチーム強化の成果を確かめるうえで、重要な一戦だった。

 早大は最初の5000メートルに、9月の日本学生選手権3000メートル障害2、3位の北村光、諸冨湧ら4人の1年生を投入した。彼らは今ひとつ力を出し切れず、このレース終了時点でチーム順位は4校中の最下位だった。しかし、続く1万メートルでは中谷雄飛、太田直希(ともに3年)が積極的に先頭集団で引っ張り合い、それぞれ28分19秒27、28分19秒76の好記録でワンツーフィニッシュ。総合でも、見事に逆転優勝を飾った。

 中谷は「出雲もしっかり1位を狙っていく考えだったので(優勝は)意識していた。上級生がしっかり取り返せるようにというのは、頭の片隅に置いて走った」とエースの自覚を示した。相楽監督も「前半ハラハラしたが、全日本に向けていい弾みになった。1年生も経験を積ませて育てるしかないので、いい勉強になったと思う」と好感触を得た。

 東洋大は、5000メートルでルーキー松山和希が自己ベストを更新する13分48秒80で2位に入る快走を披露。1万メートルでは、前回の箱根5区で新記録の区間賞に輝いた宮下隼人(3年)が自己記録を40秒以上短縮する28分37秒36と力走した。

 当初1万メートルに出場予定だったエース格の西山和弥(4年)が直前の練習で疲労が出たために大事を取って欠場したことが響き、総合順位は3位に終わった。だが、対校戦と併催された記録会では、対校戦で代表を外れた他の主力候補たちが続々と自己ベストを更新した。宮下は「東洋大は平均タイムが他大学に一歩劣っていたので、自分が少しでも上げようという気持ちで走った」と語った。苦戦した箱根でも課題として浮き彫りになっていたスピード強化の面で、一定の収穫が得られた大会となった。

 西山も17日に宮崎県で行われた記録会で1万メートルを走り、今年の日本人学生最速となる28分3秒94をマーク。昨年5区11位でブレーキとなった全日本大学駅伝での雪辱に向け、大きく弾みをつけた。

頂点めざし、再び前向き

2011年正月の箱根駅伝は早大が総合優勝、東洋大が2位だった。写真は6区
2011年正月の箱根駅伝は早大が総合優勝、東洋大が2位だった。写真は6区

 両校とも夏の走り込み不足という課題は残る。だが、早大の相楽監督は「過去にも故障などで夏に全く練習できていない子に箱根を走らせている。10月、11月ぐらいからのアプローチは、過去の経験値をベースに作ればほぼ大丈夫だろうと思う」と自信を見せる。一方の酒井監督も「コロナ禍でリモート授業が増え、(拠点の埼玉県川越市から多くの部員が通う都内キャンパスへの)通学時間がない分、距離を走る時間は作れる」とプラス思考で構える。

 10年前の2010年度、両校が演じた熱戦は、今もファンの語り草だ。箱根駅伝史上最小の21秒差で早大が総合優勝、東洋大が2位だった。近年はともに王座から遠ざかるが、再び箱根の頂点を争う日に向け、逆境の中でも着実に前へと進んでいる。

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1585369 0 ニュース 2020/10/29 11:30:00 2020/10/29 15:40:06 2020/10/29 15:40:06 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201028-OYT1I50061-T.jpg?type=thumbnail

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