クルマと運転者が一体になれるスポーツカー ポルシェ911「カレラS」(Vol.591)

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 「911」は、ドイツの高級自動車メーカー「ポルシェ」を象徴するスポーツカーである。「カレラ」「カレラS」「カレラ4」「カレラ4S」と複数タイプがある。今回は、高出力モデルの「カレラS」に試乗した。標準車の「カレラ」と同じ排気量(2981cc)のガソリンターボエンジンだが、最高出力は「カレラ」と比べて65馬力大きい450馬力で、発進から時速100キロ到達までにかかる時間は、「カレラ」より0.3秒早い3.7秒だ。

試乗したポルシェ911「カレラS」
試乗したポルシェ911「カレラS」

 スポーツカーを目の前にすると、多くの人は心を弾ますはずだ。ましてや、わずか3.7秒で時速100キロに達してしまう速さとは、どれほどのものなのか、運転席に座る前に緊張を覚えるのも無理はない。しかし、「カレラS」は、いざ走らせてみると、誰でもごく普通に運転できるクルマになっている。

 スポーツカーも、最近は自動変速機(AT)を採用することが珍しくなく、試乗した「カレラS」もATによりアクセルとブレーキの2ペダル操作で運転できる。これにより、卓越した運転技術がない一般の人々も、ポルシェのすごさを感じることができるのだ。

ダッシュボードには、911伝統の5つのメーターが並ぶ
ダッシュボードには、911伝統の5つのメーターが並ぶ
運転席の計器類のうち、シフトレバー(中央)など大部分がデジタル化された
運転席の計器類のうち、シフトレバー(中央)など大部分がデジタル化された

ATにより、アクセルとブレーキの2ペダルで運転できる。左端は、左足を置いておくためのフットレスト
ATにより、アクセルとブレーキの2ペダルで運転できる。左端は、左足を置いておくためのフットレスト

 ところで、ペダルやハンドルの運転操作の通りにクルマが動くのは、当たり前のことだと思っている人は多いのではないか。しかし、実際は、運転操作に対してやや遅れたり、反応が早すぎたりするクルマが少なくない。それでも人間の適応能力は高いので、ほとんどの人が最終的にはうまく乗りこなしているのだ。運転を怖いと感じる場合、技量がないからというより、クルマの反応具合が分からないことに起因する不安もあるのかもしれない。

 しかし、「カレラS」は、自分の操作の通り忠実に走ってくれる。なぜか。ドイツのアウトバーンには速度無制限区間がある。最高速度が時速306キロの「カレラS」を、もし同300キロで走らせたとすると、1秒間で83メートルも進んでしまう。(まばた)きするような0.1秒でも、8.3メートルだ。運転操作に対して、急反応や遅れがあると大変危険だ。したがって、ポルシェでは、操作に忠実に動くことを守り続けている。

 市街地を走行するような低速度でも、「カレラS」の反応の的確さに変わりはなく、とても運転しやすい。初心者も、こうしたクルマを運転していたら正しい運転技術が身に付くだろうし、運転の面白みもより実感できると思う。逆に、雑な運転をしたら、それがたちまちクルマの走りに表れる。

リアエンジン車なので、ボンネットフード下は小物入れになっている
リアエンジン車なので、ボンネットフード下は小物入れになっている
バケットシートは大型ではないが、体がしっくり収まるため、運転しやすく、疲れにくい
バケットシートは大型ではないが、体がしっくり収まるため、運転しやすく、疲れにくい

後輪の後ろ側にエンジンを搭載し、後輪で駆動する方式は1964年の初代から変わらない
後輪の後ろ側にエンジンを搭載し、後輪で駆動する方式は1964年の初代から変わらない

 もちろんアクセルペダルを深く踏み込めば、発進から時速100キロまで3.7秒という猛烈な加速を体験できる。それさえもペダルの踏み込み加減に応じて加速を調整できるので、実際に体験してみると、それほど怖くはない。加速時には、ハンドルを通じて自分の(てのひら)にタイヤのグリップを感じとることができ、安心感が生まれるのだ。4つのタイヤが、自分の手足となったかのような錯覚を覚えるかもしれない。クルマと運転者が一体になるというのは、こういうことをいうのだろう。

 ポルシェ「911」は1964年に誕生して以来、後輪の後ろ側にエンジンを搭載する基本の姿を変えず、その分、細部まで目の行き届いた継続的な開発が続けられてきた。その結果、運転者に不安を覚えさせず、低速から高速走行までをごく普通にこなせるグランドツーリングカーに育て上げられたのだろう。その緻密(ちみつ)な積み上げの成果を、8代目となる新型車で堪能したのであった。

御堀 直嗣
プロフィル
御堀 直嗣( みほり・なおつぐ
 1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。乗馬などを楽しむアクティブ派でもある。
無断転載・複製を禁じます
1151023 0 インプレッション 2020/04/07 05:20:00 2020/05/13 12:52:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200513-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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