PHVのセダン、北欧デザインと静粛性がマッチ ボルボ「S60 T6 ツインエンジン AWD インスクリプション」(Vol.596)
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スウェーデンのボルボ・カーで唯一となるセダンが「S60」だ。そのプラグインハイブリッド車(PHV)に試乗した。動力として、ガソリンエンジンと、モーターの両方を持つことから、このクルマは「S60 T6 ツインエンジン AWD」と名付けられている。AWDとは「オール・ホイール・ドライブ」、すなわち四輪駆動(4WD)を意味している。ターボチャージャーとスーパーチャージャーという二つの過給機が付いたエンジンとモーターを併用したハイブリッド走行に加え、あらかじめリチウムイオンバッテリーを充電しておけば、約48キロの電気自動車(EV)走行も可能だ。

今回の試乗では、ほぼ満充電の状態から走りだした。以前、同じ「S60」の「T5」というガソリンターボエンジン車に試乗したことがある。それに比べると、モーターの滑らかな回転と静粛性によって、乗り心地はいたって上質だ。北欧デザインと呼ばれ、ほかの欧州メーカーとは趣の違った室内の雰囲気に、この静粛性は実によく似合う。また、SUV(スポーツ用多目的車)のように荷室部分の天井が高くなく、重心が下がるので、おのずと操縦安定性も高まる。ステーションワゴンやSUVのように客室と荷室が一体とならないセダンを選ぶ理由の一つに、こうした点があることはいうまでもない。
走行性能も良い。「T5」でも山間の屈曲路などでハンドル操作通りに前輪が路面に食いつき、切れ味のよい旋回を体験した。さらにモーターが加わると、アクセル操作の遅れが一段となくなり、爽快な運転を楽しめる。EVのようにモーターの単独走行ができることは、快適性だけでなく、運転感覚でも魅力を増すことを実感した。短い距離の走行が多い日常利用では、自宅で充電してモーター走行だけで済ますことも可能だと思う。

バッテリーの電気を使い果たすと、おのずとハイブリッド走行に切り替わる。ハイブリッド走行中の減速時に、回生によって充電が行われる。また、チャージモードといって、走行しながら積極的に充電を行うこともでき、この場合はエンジン走行が中心になる。「T5」と同じ動力性能を備え、さらに二つの過給機も装備するので、モーターを使わなくても文句ない加速をしてくれる。
ハイブリッド走行になると、当然ながらエンジンの騒音や振動を感じるようになる。このクルマの上質さを大きく損ねるほどの水準ではないが、モーター走行時と比べれば、やや失望を感じざるを得ない。

近年、国内では、燃費の良さなどからディーゼルターボエンジン車の人気が高まっている。だが、欧州では2021年から二酸化炭素(CO2)の排出量規制がより厳しくなる。先取りする形で、ディーゼル車の販売台数が落ちていることもあり、欧州メーカーは今年後半から、EVや各種ハイブリッド(HV)の車種を増やしていく予定だ。輸入車ユーザーも、これからはEVという選択もありえるのではなかろうか。
