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トヨタ自動車から、新しいSUV(スポーツ用多目的車)「ヤリス クロス」が誕生した。このクルマは、「ヴィッツ」の後継として生まれたコンパクト・ハッチバック車「ヤリス」をベースに開発されている。

トヨタは、これまでも「プリウス」をベースに「C‐HR」、カムリから「RAV4」や「ハリアー」といった新型SUVを生み出し、いずれも好評を得た。今回試乗した「ヤリスクロス」も、期待通りのコンパクトSUVであった。

動力源は、ガソリンエンジン車と、それを基にしたハイブリッド車(HV)の2種類がある。ともに二輪の前輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)を選ぶことができる。今回試乗したのは、HVの2WDと4WD、そしてガソリンエンジン車の2WDであった。いずれも、エンジンは排気量1490ccの直列3気筒である。
まず、HVの4WDから試乗した。走行性能に定評のある「ヤリス」をベースにしているだけに、手ごたえがしっかりしていて安心感がある。「ヤリス」に比べると、車高の高いSUVではあるが、高いからといって、カーブを曲がる際や、高速道路で車線変更を行う場合にも、車体が傾きすぎる、横揺れで不安定になるということはない。高い目線を除けば、あたかも普通の乗用車を運転しているかのように快適な運転を続けられた。
2WDも、運転感覚は変わらず、落ち着きのある走りだったが、4WDとは駆動力の伝達具合や車両重量が異なるため、安定した走りに軽快さも加わる。ガソリンエンジン車も2WDの試乗で、HVの2WDに比べ、さらに軽量になるので、いっそう躍動感のある走りを体感した。新型の全体的な仕立ても確かで、質の高さを感じさせた。

ただ、トヨタのハイブリッドシステムで直列3気筒ガソリンエンジンを使った方式は「ヤリス」から採用された新しいものであり、従来の直列4気筒エンジンの方式に比べ、3気筒特有の騒音や振動が伝わり、静粛さや上級さの面では劣る感じがした。また、ガソリンエンジン車は、アイドリングストップ機構を備えていないため、停車中もエンジンがかかりっぱなしとなり、ひと時代前のクルマを運転している気分にもなる。環境基準は満たしているとのことだが、振動や騒音、そしてアイドリングストップをしない車という点で、廉価な車種という印象も受ける。
今回は、舗装路での試乗だったが、HV、ガソリンエンジン車ともに4WD仕様があることから、人工的に滑りやすい路面や、未舗装路を再現した場所での試運転もできた。通常の状態では、4WDといえどもタイヤが空転し、前進できなくなるような場面でも、走行モードのうち、トレイルモード(HVのみに標準装備)やスノーモード(ともに標準装備)を選択すると、前進が可能となり、悪条件を乗り越えられる様子を体験した。
前席、後席ともに十分な寸法がありゆったりと着座できる。後席の背もたれは、4:2:4に分割でき、荷物の状況次第で細かく調整できるようになっている。荷室も、床面の高さを2段階で調節でき、6:4で分割し、6割もしくは4割だけ低くすることもできる。積載調整の自由度はかなり高いと思う。荷室の容量自体も十分確保されている。
車幅が1.7メートルを超えるので3ナンバー車となるが、コンパクトSUVとしての魅力、使い勝手の良さを満載した一台といえる。
