欧州らしい走行性能、日常の運転が楽しくなるクルマ ルノー「ルーテシア」(Vol.610)
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フランス・ルノーから小型乗用車「ルーテシア」の5代目が発売された。新型は、提携関係にある日産自動車の新型「ノート」と共通のプラットフォーム(車台)を使っている。



最近の新車ではめずらしく、車体寸法が前型に比べて小さくなった。全長で2センチ、全幅は2.5センチ短い。日本同様、欧州もそれほど道幅が広いわけではない。同地は石造りやレンガ造りの建物が多く、建物の配置なども含め、街路は馬車の時代とあまり変わらない。パリでは、前後のクルマとバンパーを接触させながら縦列駐車しなければならないほどだ。そのような環境下では、さすがに車体寸法の拡大に限界が訪れたということだろう。それでも、新型の車体全長は4メートル超、車幅も1.7メートル以上あり、荷室も含め、室内の広さは十分あるといえる。
エンジンは排気量が1333ccの直列4気筒ガソリンターボだ。これに、二つのクラッチを備えた7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が組み合わされる。ちなみに、エンジンはドイツ・ダイムラーと共同開発したもので、メルセデス・ベンツ「Aクラス」に搭載されているのと共通だ。

排気量こそ大きくないが、「Aクラス」と同じく、加速が伸びやかで速度にのせていく様子が快い。DCTによって、加速中はショックもなく滑らかだ。速度が高まるにつれ、走りにも躍動感が生まれる。例えるなら、欧州の郊外の道を気持ちよく運転しているような気分にさせてくれる。
欧州の高速走行で鍛えられたサスペンションは、硬めで、しっかりした手応えを伝えてくる。ハンドル操作に対する応答も的確で、路面の影響を体に伝えることもなく快適な乗り心地だ。欧州では、こうした大衆車でさえ心地よい走行感覚をもたらす。
後席も快適だった。正しい姿勢で着座できる座席のつくりになっていて、足元は爪先を前の席の下へ差し入れることができ、頭上の空間を含めて窮屈な印象はない。ただ、座面の長さがやや短めに感じた。
残念だった点もある。装着されていたタイヤの騒音が大きく耳障りなことだ。これではいくら走行性能に優れていても、乗っていることに疲れてしまう。メーカー名を見ると、走行性能の高さに定評のある会社のものであり、欧州の速度域では機能を発揮するのだろう。しかし、日本の道路には合っておらず、静粛性に優れた銘柄に変更した方が良いと思う。輸入元の「ルノー・ジャポン」もこの騒音について認識しており、将来的に改善されるかもしれない。タイヤが摩耗した時には別ブランドに交換することも選択肢になる。
もう1点は、左右のドアミラーを見る際、側面の窓ガラスにダッシュボード両脇の空調吹き出し口のメッキ部分が映り込むことだ。これは、メーカーがメッキの反射具合を調整する以外には対処が難しいと思われる。
この2点を除けば、全体的に印象のよいクルマで、日常の運転が楽しくなるのはもちろん、遠出をしても疲れを感じずに目的地まで運転できるのではないか。欧州の人々がクルマを愛してやまないのは、高級スポーツカーでなくても、こうした気持ちのいい大衆車に日々触れているからではないだろうか。
