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クルマらしさにこだわったEV マツダ「MX‐30 EV」(Vol.615)

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 昨年誕生したマツダのスポーツ用多目的車(SUV)「MX‐30」はマイルドハイブリッド車のみだったが、今年になって電気自動車(EV)モデルも追加発売された。欧州では、EVのみでの販売で、こちらが本来の目指した姿といえるかもしれない。

EVモデルだが、昨年発売のマイルドハイブリッド車との外観上の違いはない
EVモデルだが、昨年発売のマイルドハイブリッド車との外観上の違いはない

室内はこれまでのマツダ車と異なり、「MX‐30」独特の雰囲気になっている
室内はこれまでのマツダ車と異なり、「MX‐30」独特の雰囲気になっている

 このクルマの最大の特徴は、他のEVと異なり、エンジン車のような運転感覚にこだわったことだ。走行中、手動でモーター走行時の回生の強さを調整できるのだが、調整はハンドルの裏側にあるパドルシフトを利用するため、まるでエンジン車でマニュアル(手動)変速をするかのようなのだ。

 具体的には、ハンドルの左側にあるパドルで回生を強め、右側のパドルは弱めることができ、どちらも2段階の調整が可能だ。スタート時は中間的な回生の効き具合になっていて、アクセルペダルを戻すと、エンジン車で軽くエンジンブレーキがかかるくらいの減速レベルになる。

 カーブが近づいて減速する場合、エンジン車でシフトダウンするかのように左側のパドルで回生を強めていく。あわせて、ブレーキペダルも踏んで速度を落としていくと、回生とブレーキで狙い通りの速度に下げていくことができる。カーブを曲がり終え、加速するときには、右側のパドルを操作して回生を弱めながらアクセルペダルを踏み込んでいく。そうすると、モーターの加速力もより伸びやかになり、あたかもエンジン車で加速するような感覚を再現できる。

エンジンルーム内部。EVだが、人工的に音をつくりだしている
エンジンルーム内部。EVだが、人工的に音をつくりだしている
後席は床下にバッテリーを搭載する関係で、足元がやや窮屈だ
後席は床下にバッテリーを搭載する関係で、足元がやや窮屈だ

 反面、アクセルのワンペダル操作に対応していないうえ、左側のパドルを使って回生を強めたまま加速しようとすると、速力に不足を覚える。右側のパドルを使って回生を弱めないと、伸びやかで力強い加速にならないのである。

 モーター駆動は本来、発進時の力強い動き出しと、その後の滑らかで伸びやかな加速という特性があり、変速を伴い段階的に加速するエンジン車とは異なる。だが、マツダは独自の低燃費エンジン技術「スカイアクティブ」を持つように、エンジンらしさにこだわった開発をした。したがって、EVといえど従来のエンジン車らしさを失いたくないという消費者にとっては適切な選択肢になるだろう。逆に、エンジンとは異なる特性を持つEVらしさを味わいたい人には、失望を与えるかもしれない。

EVによる制約などもなく、荷室容量は十分にある
EVによる制約などもなく、荷室容量は十分にある
車体後部の右側面に、充電口がある
車体後部の右側面に、充電口がある

 もう一点、従来のままなのは、エンジンルーム部分から(うな)るような音が走行中に聞こえることだ。これは、モーターがトルクを出している様子を耳で感じられるように、マツダが人工的に音を流しているのである。モーターのトルクは回転数の変化に対してフラットな特性があるため、この音は、低音のまま唸るように聞こえ続ける。ガソリンエンジンで回転数が上がるとともに、高鳴るような音ではない。この点も、静粛性が特徴とされるEVとは大きく異なる。

 一方、モーターならではの利点としては、姿勢制御機能の「GVC(ジー・ベクタリング・コントロール)」により、エンジンの約100倍の速度で反応するモーターに合わせて車両の重心を精緻(せいち)に制御できるため、走行中の車体の姿勢は実に安定している。車線変更や直線からカーブへ、カーブから直線へという場面でも、ハンドル操作に対して滑らかに反応して走る。

下肢が不自由な人向けの開発車両。自ら運転できるように、ハンドルの内側には速度調節用のリングがある
下肢が不自由な人向けの開発車両。自ら運転できるように、ハンドルの内側には速度調節用のリングがある

 このEVモデルでは、下肢に障害を持つ人が手だけで運転できるタイプも開発中で、今秋にも発売を予定しているという。その開発車両も運転してみた。ハンドル内側にあるリングで速度を調整し、シフト脇のレバーを押してブレーキを掛ける。加減速は、EVであることを()かして回生を強めの設定にしておくと、リングの操作だけでもある程度調整でき、ハンドル操作に集中できた。

 環境にやさしいだけでなく、福祉車両としての可能性をも広げることができるのが、EVである。

御堀 直嗣
プロフィル
御堀 直嗣( みほり・なおつぐ
 1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。乗馬などを楽しむアクティブ派でもある。

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1933360 0 インプレッション 2021/03/30 05:20:00 2021/03/30 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210317-OYT8I50050-T.jpg?type=thumbnail

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