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SUBARU(スバル)がワゴン車「レヴォーグ」を6年ぶりに全面改良して発売した。最新の運転支援技術に磨きをかけ、上位グレードでは高速道路の渋滞の際、時速50キロ・メートル以下で「手放し運転」ができる。国内の新たな旗艦モデルとして、幅広い客層を狙う。(牧志朝英)

継承
先代は国産ワゴンの代表格だった「レガシィ ツーリングワゴン」の後継車として2014年に投入され、人気車種に。新型車は最新の運転支援技術を搭載すると同時に、手頃な価格に抑えたことが評価され、20年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
外観は、横長に構えた六角形のグリルと、外寄りに配置した切れ長のヘッドランプに重厚感を感じる。上位グレードに試乗した。
運転席に乗り込むと、二つの大型モニターが目に飛び込む。ナビや音楽を操作する11.6インチの情報ディスプレーと、速度などを表示する12.3インチの液晶メーターがある。モニターは先代の三つから減らした分、大きくて見やすくなった。
運転支援機能「アイサイトX」は、測位衛星「みちびき」からの情報や、高精度な3次元地図データを活用し、位置情報を把握する。広角化した新型ステレオカメラや前後四つの側方レーダーを組み合わせて周囲を確認するという。
手放し運転
街中を走った後、東京都内のインターチェンジから首都高速道路に入る。運転支援機能の操作ボタンはハンドルの右側に集約されており、早速、起動させてみた。
渋滞で時速50キロ・メートル以下になってしばらくすると、モニター上のハンドルや路面が青く光った。ハンドルから手を離すと、自動で加速や減速を繰り返して車間距離を保った。急なカーブでもハンドルが左右に動き、車線中央を進んだ。
停止や発進も自動だ。前方車の急な割り込みも認識し、余裕を持って減速した。時速50キロ・メートルを超えるとハンドルを握る必要があるが、引き続き前方車両を自動追従する。再び時速50キロ・メートル以下になると手放し運転に切り替わるスムーズさにも驚く。


競争激化
同じサイズのワゴン車でライバルになるのは、トヨタ自動車の「カローラツーリング」やマツダの「マツダ6ワゴン」などだろう。レヴォーグは手放し運転をはじめとする先端技術をアピールして売り込みを図る。
こうした技術は日進月歩。自動運転は、加減速とハンドル操作のいずれかを自動化した「レベル1」から完全自動運転の「レベル5」まで5段階に分かれる。スバルの技術は「レベル2」で、安全運転の責任は人にある。
日産自動車はすでに「スカイライン」で高速道路の手放し運転を可能にした。ホンダは、特定の条件下でシステムが運転を担い、ドライバーは前方から視線を外すことができる「レベル3」の車を年度内に発売すると発表しており、開発競争が加速している。
「ぶつからないクルマ」をいち早くアピールし、国内メーカーでは運転支援技術の先導役となってきたスバル。最先端技術を搭載した新型レヴォーグが幅広い支持を得られるかは、スバル車の将来を占う試金石となりそうだ。

女性層にも配慮

レヴォーグの開発責任者、五島賢氏に話を聞いた。
――新型車の位置付けは。
「新たな旗艦モデルとして、先進技術や走行性能の向上に尽力した。持てる技術を惜しみなく総結集したスバルの集大成だ」
――先代との違いは。
「先代はやや乗り心地が硬く、女性ドライバーへの広がりを欠いた。新型の上位グレードでは運転モードの切り替えでハンドル操作を軽くし、上下の揺れを抑える乗り心地にもできる。子どもの送迎など街乗りにもぴったりだ」
――自動運転の未来は。
「アイサイトXは、スバル車が目指す2030年時点の『交通死亡事故ゼロ』に向けた基盤技術の第一歩となる。今回は安全性やコスト低減を重視して『レベル2.9』にとどめたが、需要が出てくればレベル3、4の開発にも挑戦していきたい」