読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

渋沢栄一ゆかりの埼玉・深谷へ

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 生涯を通じて約500社に及ぶ企業の設立などに関わり、「近代日本経済の父」や「日本資本主義の父」などと呼ばれる渋沢栄一。その人物像を知りたいと思い、渋沢の生まれ故郷・深谷市(埼玉)を訪ねた。

「レンガのまち」にふさわしい外観の深谷駅
「レンガのまち」にふさわしい外観の深谷駅

 2020年12月下旬、高崎線深谷駅に降り立った。深谷市は赤城山の南側に位置しており、さっそく「赤城おろし」の洗礼を受け、身を震わせる。

 深谷駅は、一見すると東京駅と見まごう外観だ。深谷市には、かつて日本煉瓦(れんが)製造株式会社の工場が置かれ、ここで作られたレンガが東京駅の駅舎に使用されたことから、建て替えの際にこの外観が採用された。そして、工場建設に尽力し、同社(前身は日本煉瓦製造会社)の初代会長を務めたのが渋沢だった。このレンガ工場跡は「旧煉瓦製造施設」として公開されている。到着早々、実業家・渋沢の片鱗(へんりん)に触れた。

 渋沢関連の施設は、深谷駅から6キロほど離れたエリアに集中している。NHK大河ドラマに連動した「深谷大河ドラマ館」がオープンする2月中旬以降約1年間は、「論語の里」循環バスが運行される予定。これを利用すれば便利だ。

渋沢栄一の生地、旧渋沢邸「中の家(なかんち)」の主屋。現在の建物は婿(むこ)入りした栄一の妹の夫・市郎により1895年に上棟された。栄一が帰郷した際使っていた部屋が残る
渋沢栄一の生地、旧渋沢邸「中の家(なかんち)」の主屋。現在の建物は婿(むこ)入りした栄一の妹の夫・市郎により1895年に上棟された。栄一が帰郷した際使っていた部屋が残る

 まずは、渋沢生地の「(なか)()()」を訪れる。「中の家」とは、この地域を開拓した渋沢一族の各家々の位置関係を示した通称。渋沢は江戸時代末期の1840年、この地で生まれた。現在の主屋は1895年に建てられたもので渋沢が生まれた当時の建物ではないが、西奥の1階10畳間は渋沢が帰郷した時のために造られた部屋。東京・北区の飛鳥山に邸宅を構えていた渋沢は、地元・()(あらい)(じま)の諏訪神社の祭りなどの際によく帰郷してこの部屋で過ごしたという。渋沢愛用の部屋は、外側から見学可能だ。この部屋から渡り廊下で行けた蔵の中は和室になっていたそうで、これはかつて東京で暴徒の襲撃を受けた経験から、万が一に備えて避難場所を確保するためだ。

 栄一の父・市郎右衛門の代には「中の家」は、苗字帯刀を許された富農で、養蚕や藍玉づくりなども行っていた。栄一も家業に従事し、藍の葉の買い付けなどで商才を見せたという。

高崎城を乗っ取る計画も

尾高惇忠生家。ここで、高崎城乗っ取り計画などを密議したとされる
尾高惇忠生家。ここで、高崎城乗っ取り計画などを密議したとされる

 渋沢がこの「中の家」から論語などを学ぶために通ったのが、従兄に当たる尾高(おだか)(じゅん)(ちゅう)の家だ。尾高は水戸学に通じ、渋沢らに影響を与え、ともに尊王攘夷の志を高めていく。尾高邸の2階には渋沢たちが高崎城(群馬)乗っ取り計画などの密議をしたという部屋が残る(現在、見学不可)。渋沢に明治時代以降の大実業家のイメージしか持っていなかったので、「志士」の時代があったことを知ったのは新鮮な驚きだった。

 この時の密議は決起の一歩手前まで進んでいたため、決起中止後、渋沢は身を隠すために京都へ出奔(しゅっぽん)。それが(ひとつ)(ばし)慶喜(よしのぶ)(後の第15代将軍・徳川慶喜)に仕えるきっかけになったというのだから、人生とは不思議なものだと改めて感じた。ちなみに、日本最初の官営模範製糸場「富岡製糸場」(群馬)は、渋沢が設置主任として設立を主導し、尾高が初代場長を務めた。

渋沢栄一記念館外観。停車中のコミュニティバスにも、渋沢の肖像画が描かれていた
渋沢栄一記念館外観。停車中のコミュニティバスにも、渋沢の肖像画が描かれていた

 尾高惇忠生家から渋沢栄一記念館へと向かう。ここでは、渋沢に関する資料などを見ることができる。若かりし頃の渋沢が地元の祭りで獅子舞を舞っていたことや、渋沢家が藍玉の商売に深くかかわっていたことがわかる資料も。先述の密議の(げき)文(尾高惇忠筆)なども展示されている。

 文・写真/松本浩行

 ※旧渋沢邸や尾高惇忠生家などの施設見学については、緊急事態宣言発令に伴い3月10日までの新規予約の受付を停止しているところもある。詳しくは、「渋沢栄一デジタルミュージアム」で。

◆月刊「旅行読売」
 1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内はこちら

無断転載・複製を禁じます
1829569 0 旅行読売セレクト 2021/02/11 05:20:00 2021/02/11 05:20:00 2021/02/11 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210208-OYT8I50040-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)