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    北海イカソーメン ◎鮮肴味旬「楠」(札幌市中央区)

    混ぜて豪快に 進む酒

    • 看板メニューの「北海イカソーメン」(手前)と北海道らしい「アイヌネギの醤油漬け」
      看板メニューの「北海イカソーメン」(手前)と北海道らしい「アイヌネギの醤油漬け」

     青森(津軽)といえば思い出されるのは、朴訥ぼくとつな人柄で知られる板画家の棟方志功や歌人で劇作家の寺山修司だろうか。オーナーで板長の成田正直さん(65)は、そんな青森県北津軽の出身で、青雲の志を抱いて15歳で北海道へ。小樽の有名ホテルを皮切りに札幌の和食店などで修業後、1990年に板前料理「楠」(南3西3克美ビル)を開き、6年前に現在地へ移転した。

     そんな成田さんが、満を持して世に送り出した看板メニューが、今や常連客のほとんどが頼むという「北海イカソーメン」である。二枚に下ろしたマイカの細引きと卵豆腐の上に、海のフォアグラと名高いアンコウの肝や道産ウニがたっぷりとのっかり、さらに津軽産天然生ノリが散らされている。

     それを箸でしっかりき混ぜ、スプーンで豪快に食べるというもの。濃厚な味わいのあん肝とこれまた負けず劣らずのウニ、さらにウズラの卵や生ノリが、器の中でダシの利いた自家製そばツユと混然一体となって小宇宙を形成し、言い知れぬうまさを生み出す。

     これは危ない。あん肝やウニ単体だけでも酒肴しゅこうになる上、味わった後に残る汁までもがさかなとなり、ついつい日本酒が進んでしまうからだ。しかも冷酒メニューには、青森の地酒「百川」「じょっぱり」をはじめ、栗山の「北の錦 北のろまん」、新潟の「八海山」、石川の「菊姫」など銘酒がズラリ。節制して飲もうと思った夜でも、深酒は避けられないかもしれない。

     また、席に着くとすぐに供されるのが、お吸い物と季節の一品。これは懐石料理でいえば口すすぎのおわんだが、今どきお通しに出す和食店は珍しい。もちろんダシは上品な味わいで、共に出されるヤマブキの油いためやウドの酢味噌みそえなど素朴な一品が、アンビバレントな魅力を醸し出す。

     成田さんは、「締めには必ずあわびチャーハンを頼む人が多いね。量が多いから4人ぐらいで分け合うと丁度ちょうどよいのさ」と教えてくれた。本格的な板前料理の店だが、津軽弁ならぬ北海道弁の「なんもなんも」が口癖となった板長の気さくな人柄もあって、肩の力を抜いて食べられる。

     遠方からリピーターが通うほどの人気店だが、予約さえすれば一見いちげんでも安心して立ち寄れるだろう。

    (文 和田由美 撮影 藤倉孝幸)

    【住 所】札幌市中央区南5西2、社交会館1階 (電)011・561・1136

    【営業時間】午後5時~11時。日曜休み。

    【主なメニュー】◇北海イカソーメン1230円◇あんきも1280円◇アイヌネギの醤油(しょうゆ)漬け620円◇あわびチャーハン2000円◇おまかせコース5000円~(全9品、2人以上)

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2018年06月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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