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    づけマグロをのせた卵まぜご飯 ◎鮨しののめ(札幌市中央区)

    酢飯が主役 光る遊び心

    • 卵まぜご飯、通称「TMG」は枠や伝統にとらわれすぎない寿司を目指す同店の人気の一品
      卵まぜご飯、通称「TMG」は枠や伝統にとらわれすぎない寿司を目指す同店の人気の一品

     伝統に縛られすぎては面白味がない。では、どこまでの遊び心なら、おまかせコースの中で楽しんでもらえるだろうか。「すししののめ」の店主、中原渡さん(35)はいつもそこを考え、挑戦している職人だ。

     中原さんが寿司すし屋を志したのは少々遅く、27歳の時。それまで映像や出版など、東京でものづくりの現場に携わってきた。同じものづくりでも今度は飲食店に興味を引かれ、調理師専門学校に入学。「お客さまと直接話ができ、専門性の高い世界を」と、江戸前寿司をみっちり5年間修業した。そして札幌・裏参道の近くで開業。今夏で3年目に入った。

     中原さんの寿司の仕込みは江戸前を踏襲している。締める、煮る、蒸す、つけるなど、季節の魚介類を生かす手当てを施している。

     その寿司種を支える酢飯には、東川町で父と兄弟が丹精して育てる「ななつぼし」の玄米をその都度、精米して使う。同じく東川から取り寄せる旭岳の湧水で炊き、京都の老舗酢醸造が熟成したまろやかな赤酢を合わせる。

     メニューはおまかせコース1本で、刺し身から始まるつまみが6品、寿司が10種類という流れになっている。

     寿司の内容はその日で異なるが、店の看板になった人気の一品が、卵かけご飯ならぬ「卵まぜご飯」、通称「TMG」だ。由仁町の平飼い有精卵「いのちのたまご」と酢飯をまぜ、たっぷりの赤身のづけをのせた。食べ進むと、主役は酢飯であることがよくわかる。づけマグロも卵も、米のうま味や酢の加減をじっくり楽しむための演出なのだと感じる。

     中にはアワビとノリの佃煮つくだに、酢飯を春巻きの皮で包んで揚げ、肝ソースで味わう一品が登場する日もあるという。ここまで来ると寿司か否かの議論もありそうだが、握り寿司の要素を再構築しながら、「楽しい仕掛けを常にいくつか用意したい」と話す。

     自由闊達かったつな寿司ではあるが、締めを飾るのは正統派のかんぴょう巻きだ。「あっさり炊いた今金町産のかんぴょうをたっぷり味わってほしい」からと、本わさびをきかせ、少々の酢飯で巻いて出す。

     伝統と革新のギャップが面白い。これからますます楽しみな一軒である。

    (文・小西由稀 写真・山本顕史)

    【住 所】 札幌市中央区南1西22、シーズンビル2階(西向き)(電)011・215・4144

    【営業時間】 午後5~10時。木曜休み。※なるべく予約を

    【主なメニュー】◇おまかせコース1万2000円◇生ビール650円◇日本酒700円~。※税別

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2018年10月25日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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