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    ジェラシー ◎BAR 紺野(札幌市南区)

    恋の痛手 癒やす一杯

    • 人生の哀歓が込められたカクテル「ジェラシー」
      人生の哀歓が込められたカクテル「ジェラシー」

     自衛隊の駐屯地が近い札幌・澄川エリアに、酒場の数が多いとは聞いていた。しかし、まさか本格的なカクテルバーまであるとは、友人に教わるまで知らなかった。

     来年、開店30周年を迎える老舗の「BAR 紺野」は、地下鉄南北線の澄川駅を降りて徒歩3分の通称“澄川斜め通り”に面した3階建てビルにある。

     岩手県生まれの店主・紺野志朗さん(63)は、20歳で上京して飲食店の仕事を始め、1975年に親せきを頼って札幌へ。ススキノで、バーテンダーの修業を積み、現在地で89年に独立した。

     かつては、85年もの歴史を有する「日本バーテンダー協会」北海道統括本部の役員も務め、この世界では知られる人である。そんな紺野さんが誕生させたオリジナルカクテルは数多いが、中でも主な7種のメニューが店内に掲げられている。

     「タキオン」「N43」などの合間に見えた名は、「ジェラシー」。それを見た途端、私は失恋して井上陽水の名曲「ジェラシー」のレコードを繰り返し聴いていた友人のことを、つい思い出してしまった。

     そんな彼を思い出させるカクテルの「ジェラシー」は、ジンをベースにブルー・キュラソーとライム、そして隠し味に乳酸飲料を使う。紺野さんはシェーカーを振った後、仕上げに果実のような深紅の液体を加えた。飲むうちにブルーが隠れ、グラス一面がいつの間にかレッドに染まるという仕掛けだ。なんて粋なカクテルだろう。

     紺野さんによると、「コンテストのために考案したものではなく、失恋したお客さんが元気になるように作ったカクテルです」。その慈愛に満ちた眼差まなざしに、人柄の良さがにじみ出ている。

     また、「Be Gentleman~紳士たれ~」は、アイリッシュウイスキーがベースで、仕上げに帽子形にカットしたオシャレなリンゴをグラスの縁に飾るという奇抜なもの。

     とまあ、創意工夫が凝らされたカクテルの数々に話題は尽きない。今年も年末が近づくと飲む機会が増えてくるので、南区や豊平区の人は覚えておくと使い勝手の良い店だろう。

     店内は、カウンター7席にボックス20席。人生の喜怒哀楽がしみ込んだ酒場のカウンターでカクテルを飲む夜は、時のつのがとても早い。くれぐれも、最終の地下鉄に乗り遅れないように気をつけたい。

    (文・和田由美 撮影・藤倉孝幸)

    【住  所】 札幌市南区澄川4条2、第5エイトビル3階 (電)011・824・9870

    【営業時間】 午後6時30分~午前2時。日曜不定休

    【主なメニュー】◇ジェラシー800円◇Be Gentleman~紳士たれ~800円◇MIXナッツ500円◇チーズ盛り合わせ800円◇カクテル600円~◇ビール700円~◇チャージ1000円

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2018年11月01日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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