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    北大・読売連携講座サイエンスレクチャー2018

    スマホ顕微鏡手軽に

     「スマホ顕微鏡」 スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能を利用した顕微鏡の総称。カメラレンズの部分にキットを取り付けることで、観察したい物を拡大して液晶画面に映せる。そのまま、スマホなどの機能で、画像を保存、送信することもできる手軽さも魅力。手ぶれ防止や照明、焦点の合わせ方などで改良が進み、扱いやすいものが登場している。

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    □◆「科学の面白さ感じて」◆□

     読売新聞北海道支社と北大電子科学研究所は、中高生らに科学の魅力、面白さを知ってもらう機会を提供するために「サイエンスレクチャー」を開催した。

     「見えないものが見えてくる。見えかけたはずが、見失う。ワクワク、ドキドキするのが科学の楽しさ」。ロゴマークは、そんな科学をイメージして作成した。

     ユニークな研究に贈られるイグ・ノーベル賞を、アメーバ状の単細胞生物「粘菌」を使った研究で2度受賞している電子研所長の中垣俊之教授(55)は、開講式で「実際に体を動かし、色々なことを見たり、聞いたりして学んでください」と話した。北海道支社の西嶌一泰支社長は「普段の生活、何げないところに科学の入り口があります。好奇心をフル回転させ、科学の面白さ、奥深さを感じてください」とあいさつに、講座開催の狙いを込めた。読売新聞では、今回の講座をきっかけに北大との連携に努めていくことにしている。

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    □◆ミクロの世界夢中◆□

     ワクワク、オヤオヤ、フムフムが科学の扉を開く――。読売新聞北海道支社と北海道大学の附置研究所「電子科学研究所」が連携し、8月3日に同研究所で開催した「サイエンスレクチャー2018」では、中高生を中心に51人が、日頃、使用しているスマートフォンやタブレット端末をモバイル顕微鏡(スマホ顕微鏡)にして、肉眼では見ることの出来ないミクロの世界の旅を楽しんだ。

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    □◆スマホ顕微鏡手軽に 中高生ら51人◆□

     ■クイズに「ハテナ」

     とうもろこし、もち米、ひえ、あわ……。スマホ顕微鏡を使った講座は、「18穀ごはんゲーム」からスタート。配られた18穀ごはんから、スクリーンに映し出された穀物を探す。使用するのは、スマホのフロントカメラに対応したキット。約30倍で液晶画面に、くっきりと映し出される。肉眼で見る実物と比較しながら、「何だこれー」「黒ごま発見」「大麦かな」。グループ分けしたテーブルから声が上がる。

     講師の永山國昭先生(北大電子研元客員教授)は「見たいと思ったものや疑問に思ったものを、すぐに拡大して見られる。好奇心を大切にしてほしい」と、手軽に使えるスマホ顕微鏡の利点を説明。この日は、30倍のフロントカメラ対応のほか、バックカメラにクリップで装着する30倍、フロントカメラに固定して光源もある180倍の3種類のスマホ顕微鏡を使用した。

     ■見たいものは無限

     バックカメラ用は、見たい対象に押し当てるだけで、液晶画面に映し出される。画面をピンチアウトすると、より大きく見える。髪の毛に当てて枝毛を探したり、自分の目を撮影してみたり。見たいものは無限だ。ここでも、数十種類の微小海産物を集めたチリメンジャコを使ったゲーム。紙の上に広げたちりめんから、海産物を探す。カタクチイワシは、大きくさけた口がはっきり。怪獣の顔にも見える。「あっカニだ」「タコもいる」。頑張って探せばごくまれにタツノオトシゴの仲間も発見されるという。「もう少し、ちりめん下さい。見つけてやるぞー」

     ■微生物の動きに驚き

     最後は、LEDライトを一体化したピント合わせ可能な180倍“本格”キットで、ゾウリムシやミジンコを観察。シャーレの上で動き回る姿が、液晶画面に映し出されると、「オー」「ウワァー」の声が各テーブルから漏れ、動画機能を使って動きを録画するグループも。葉緑体を持ち光合成もできる藻類の一種のクラミドモナスが、光源に集まったり、離れたりする姿に、「きゃー」「変な動き」と驚きの声が上がった。

     永山先生は「驚きが知識に変わる。これが大切なんですよ」。

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    □◆研究で使いたい/微生物初めて見た□参加者の声◆□

     札幌市立北辰中の科学部は、部活の一環として9人が参加した。同部の部員は27人で、「有孔虫の生態」「将棋必勝法」「タワシを使った家庭用マッサージ器」などテーマごとに7チームに分かれて研究している。1年の木村映陽君(13)は、季節や海の状態で変わる有孔虫の種類などを、海岸の砂を採種して研究している。木村君は「スマホ顕微鏡は扱いやすく、記録もしやすい。これを使えば観察が進む」と話した。顧問の宿野部浩紀先生(50)は「身近なもので手軽に微生物を観察できることは非常に画期的。部活でも、ミクロの世界を身近にしていきたい」と話した。

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     札幌市立東札幌小5年、山田遼太郎君(10)は父虎之介さん(44)と参加。遼太郎君は「ミドリムシやクラミドモナスは図鑑で知っていたが、初めて実際に見た」と大喜び。虎之介さんは「息子は生物図鑑を見るのが好きで、この日をすごく楽しみにしていた。これを機にもっと科学好きになってほしいですね」と話した。

     姉妹と母の3人で参加した中島桜さん(道教大札幌中2年、14歳)と樹さん(札幌市立山の手南小5年、11歳)、母静さん(43)。桜さんは「もっと色々なものを見たくなった」、樹さんも「微生物を見たことが印象的でした」。静さんは「とても楽しく、娘たちが自分から色々とやってみて、頭を働かせている様子が感じられ、うれしく思いました。貴重な経験でした」と感想を寄せた。

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    □◆最先端の装置に感激◆□

     講座では、高度なレーザー顕微鏡などを備えた「ニコンイメージングセンター」も見学し、最先端の顕微鏡でプランクトンを観察した。参加者は、高度な顕微鏡を手元で操作してズームにしたりしながら、「こんなに本格的な顕微鏡を使えるなんて」と感激し、夢中でのぞき込んだ。

     事前の講義で、根本知己先生(北大電子研教授)は、「ネズミの脳の生きたままの神経の活動を観察することができる」と、様々な研究で重要な役割を果たしている施設について説明した。札幌市立米里中2年の武藤杏奈さん(13)は「生きたままの脳の動きを見られるなんて驚き」と感想。真剣な表情で顕微鏡をのぞき込んでいた立命館慶祥高1年、中川鈴彩さん(16)は「こんな大きな顕微鏡で見ると、ますますミクロの世界への興味が増します」と喜んでいた。

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    □◆ワクワク認定証◆□

     講座修了後には受講者全員に、「ワクワク オヤオヤ フムフムを体験されましたので、これを証します」という認定証書が送られた。

     今回の最年少受講者の札幌市立大倉山小4年、大村凜太郎君(9)が、代表して中垣俊之所長から証書を受け取り=写真=、大村君は、はにかみながらも「すごく楽しかった」と目を輝かせた。

    ■ニコンイメージングセンター■ 最先端の生物顕微鏡などを備えた施設。ハーバード大(米)、ハイデルベルク大(独)など世界9か所にあるうちの一つ。全国の研究者や企業なども利用でき、バイオ分野の基礎研究、創薬、医療などの研究を支援している。

    □◆講師紹介◆□

    • 永山國昭さん
      永山國昭さん

     永山 國昭(ながやま・くにあき) 73歳

     北大電子科学研究所元客員教授、生理学研究所(愛知県)名誉教授、総合研究大学院大学前理事・名誉教授。スマホ顕微鏡の生みの親とも言われる。Life is small. Company永山顕微鏡研究所所長。

    • 根本知己教授
      根本知己教授

     根本 知己(ねもと・ともみ) 51歳

     北大電子科学研究所教授、ニコンイメージングセンター長。最先端の光やレーザーの技術を用いて、「誰も見たことのない」生命の世界を観察できる顕微鏡を開発している。

    2018年08月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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