読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

[棋聖戦コラム]盤外編…吉原由香里六段のトホホな“読み違い”

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 富山県高岡市で22、23日に行われた第45期棋聖戦七番勝負第2局。大盤解説会の聞き手になった吉原由香里六段は21日午後、東京から現地に向かう北陸新幹線の車中にいた。富山駅を過ぎ、ふとスマホを見ると、同局の新聞解説、鶴山淳志八段が、こんなツイートをしていた。

 〈探しています!!!!
  黒のキャリーケース(略)
  お昼を食べている間に知らない方に間違えてついて行ってしまったようです(略)
  お気付きになられましたら至急お戻りいただければ幸いです〉

 へえ、そんなこともあるんだなあ。そう思いながら、目の前をふと見た時、吉原六段はとんでもないことを発見した。

 あれ、これ私のスーツケースじゃない――。

棋聖戦第2局のために訪れた高岡市で、指導碁を打つ吉原由香里六段(22日)
棋聖戦第2局のために訪れた高岡市で、指導碁を打つ吉原由香里六段(22日)

 慌てて鶴山八段に連絡を取る。幸い、ケースを開けることができたので、中身を確認すると「ここにミネラルウォーターが入っているはず」などという鶴山八段の言葉の通りにモノが入っている。極めつきは、「棋聖戦第2局開催要項」の小冊子があったこと。「間違えたのは、私」だということが確定した。

 そういえばこの日、吉原六段は東京駅に早めに到着したので、ソバ屋さんで軽く食事をしたのだった。「スーツケースはここに」という店員さんの言葉に従って、カバン置き場の一番手前にケースを置き、食事を終えた後、当然のように一番手前のケースを手にとって店を出ていたのだった。まさかそこで「取り違え」が起こっていたとは……。まさか同じような黒いケースを持った鶴山八段が、同じ店で食事をしていたとは……。

 鶴山八段に平謝りに謝った吉原六段。「でも、まあ、誰とも分からないまったくの他人のスーツケースと取り違えたのではないのだから」と自分を慰めた。鶴山八段のキャリーケースを持ってきてしまったのはまずかったが、どこでどういうふうに取り違えたのかは分かったのだから、あとは鶴山八段に吉原六段のケースを持ってきてもらえばいい。

 一件落着のはずだったのだが――。

同じ会場では、鶴山淳志八段もアマチュアを相手に指導碁を打った(22日)
同じ会場では、鶴山淳志八段もアマチュアを相手に指導碁を打った(22日)

 不幸なことに、吉原六段のスーツケースはすでに、東京駅の「お忘れ物承り所」に回っていたのだった。「ご本人様でないと、お渡しすることはできません」ときっぱり言われてしまう。電話で何度説明しても、「事情は分かりますが、お渡しできません」。現代社会ならではの防犯対策、コンプライアンスの徹底が、壁となってそびえたっていたのだった。

 結局、荷物は東京駅に置かれたまま。鶴山八段は夕方の新幹線に飛び乗って現地入りし、吉原六段は化粧品や着替えなどを一式、高岡で調達して第2局に臨むことになった。

 「私って、こういうところがあるんですよねえ。網棚に荷物を置くと、2回に1回は忘れちゃうし……」と吉原六段。

 盤上では、大石が生きるか死ぬかという白熱の攻防が続いた高岡対局、盤外ではこんな「騒動」があったのでした。(編集委員 田中聡)

 ※本文は、吉原六段、鶴山八段の許可を得て書いております。

無断転載・複製を禁じます
1802699 0 棋聖戦 2021/01/28 15:00:00 2021/01/28 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210127-OYT1I50039-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)