挑戦者・一力九段が先勝…棋聖戦第1局詳報

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 囲碁界の最高位を争う第46期棋聖戦七番勝負第1局が13、14の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われた。勝負は14日午後6時57分、挑戦者の一力遼九段(24)が井山裕太棋聖(32)に勝ち、シリーズ1勝を挙げた。読売新聞オンラインでは、動く棋譜やタイムラインで対局の模様を詳報する。

棋聖戦七番勝負第1局 動く棋譜速報

動く棋譜がうまく表示されない方はこちら

※動く棋譜は、IE(インターネットエクスプローラー)11では閲覧できません。他のブラウザでご利用ください。

第46期棋聖戦七番勝負第1局 フォトギャラリー

対局後のフラッシュインタビュー

一力遼九段

幸先のいい1勝を挙げ、笑顔の一力九段=守谷遼平撮影

――初戦の勝利おめでとうございます。1日目、下辺からの競り合いがありましたが、そのあたりの形勢判断は。

「(18手目の)三間に開いた時、相手の打ち込みに、かけついでこすむのは、AIでちらっと見たことがあったのですが、その後はハッキリとわかっていなかったです。午前中はまずまずと思っていましたが、右上など、もう少し頑張っても良かったのかなと」

――2日目のフリカワリのあたりの形勢判断は?

「実戦のフリカワリは自信があったわけではないですけど、それなりにヨセ勝負になるのかなとは思っていました」

――上辺を大きくまとめることができました。そのあたりは?

「一応、40目ぐらいまとまる形になって、少し残るかと思ったのですが、(166手目の)コスミツケが味の悪い手で、(展開によっては)負けになっててもおかしくなかったかと思います」

――最後の黒の仕掛けは読み切っていましたか?

「いやいや全然、読めていたわけではなかったですが、取りにいくしかないので、最後、耐えていたのは運が良かったなという感じです」

――次戦への抱負を

「第2局がすぐありますし、重要対局が続くので、コンディションを整えて頑張りたいです」

井山裕太棋聖

一力九段に破れた井山棋聖(左)=守谷遼平撮影

――初日が終わった段階で、形勢をどのように見ていましたか?

「初日はちょっと苦しくて、基本的には感じの悪い展開だったのですが、悪いなりに先に長いかなと思っていました」

――2日目のフリカワリでの形勢判断は?

「多分、良くはないと思いますが、上辺もまだどう決着するかわからなかったので……。ただ、実戦の形では足りなかったのかもしれないですね。(相手が)囲いに行ったあたりでも、やりようはあったと思いますが、具体的には分かっていなかったです」

――次戦に向けて。

「少しでも良い状態で望めるように精いっぱいやりたいと思います」

タイムライン

1月14日

【第1局の総括】

 第1局を新聞解説の大西竜平七段に振り返ってもらった。

「第1局からどちらが勝ってもおかしくない大熱戦になりました。一力九段は終始、自分を信じて碁を打っている感じがしましたし、メンタル的に良い状態でこのシリーズを迎えることができているのではないかと思います。負けた井山棋聖も、感想戦を聞く限りでは、序盤から形勢に自信が持てない状態で指し進めていたようですが、悪いなりに我慢強く打ち進め、紙一重の戦いに持ち込んでいます。今後も同様の接戦が続くのではないかと予想します。一力九段の研究に裏打ちされた自信満々の戦いぶりに、井山棋聖がどのように底力を見せていくか、楽しみにしています」

検討室から 
86(82の下)

 実戦のハイライト、黒179~白192(手数は2桁に変換)。黒79のハネダシが井山棋聖の迫力満点の勝負手だが、黒91と抱えたとき、白92のブツカリが読みの入った好手だった。これで上辺の黒は眼ができず、勝負手は不成立。一力九段が大熱戦に決着をつけた。

午後6時57分

 井山棋聖が投了。

午後6時45分

 上辺に侵入してきた井山棋聖の黒石を、一力九段が鮮やかな読みで討ち取った。

午後6時半

 黒179手目のハネダシで検討室には「ついに最終決戦。この手が成立するかどうかで勝敗が決まる」との声。

午後6時23分

 一力九段も残り時間が1分に。

午後6時17分

 井山棋聖の残り時間が1分に。

午後6時

 周囲はすっかり暗くなった。残り時間は両者10分を切り、寄せの勝負に。半目を争う大接戦とみられ、一つも間違えられない神経を使う夜戦に突入した。

午後5時25分

 145手目、井山棋聖は長考の末、左の白石にツケを打った。控室では検討されていなかった一手。「へ~」という声が上がり、山下九段らも推移を見守っている。

午後5時15分

 白144と一力九段が上辺を大きくまとめようとした局面で、井山棋聖が長考に沈んでいる。控室では、上辺の白地を消すために思い切って踏み込むのではないか、との声。そうなると決戦だ。緊張が高まってきた。

午後4時45分

 井山棋聖の残り時間もすでに1時間を切った。

午後4時半すぎ
参考図8-a
参考図8-b

 白が上辺の地をどうまとめるかが焦点だ。検討室では、参考図8―a、白1から打ち進めて白5のアテも決め、白7で中央をめいっぱい広げるか、参考図8―b、白1と引き、黒4に白5と囲う展開にするかという検討が行われていた。河野臨九段は「前者の方が、白は少し地が大きそうです。どのような進行になるにせよ、両対局者は際どいヨセ勝負なると見ているはずです」。長考の末、一力九段はaの白1を選んだ。

午後4時

 上辺での駆け引きが始まった段階で、一力九段の持ち時間が残り1時間を切った。

午後3時

 井山棋聖が黒125でコウを解消。左下の白を取った。一方、白は右辺で黒7子を捕獲。大きなフリカワリとなった。戦いは広大な上辺一帯を巡る攻防に移っていきそうだ。

 午後のおやつはともに「フルーツの盛り合わせ」を注文した。

午後2時半
121(112)

 実戦の112~121手(2桁に変換)を示した。中盤の神経を使う折衝だ。控室の山下敬吾九段らの検討によると、黒13に代えて黒20、あるいは黒17に代えて黒20とするのがよかったのではないかという。20の地点が急所で、白の大石に生きを強いるとともに、中央の黒も厚くなった。実戦で井山棋聖は黒17とつながる手の価値を重視したようだ。白が20の急所に回り、大石が生きた。白も納得できる進行となった。白は左下を生きにいくか、左下を捨てて、右辺にまわるか、選択の岐路を迎えている。

午後1時半

 現地のホテル椿山荘東京で大盤解説会がスタートした。解説は林漢傑八段、聞き手は星合志保三段。林八段は「久々の大盤解説会。うれしいですね」とファンに呼びかけた。

午後1時

 対局が再開された。

【2日目午前の総括】

 新聞解説の大西竜平七段に2日目午前の戦いを振り返ってもらった。

 「激しい戦いが続いていたが、昼食休憩直前の一手黒109は『ついに決行したか』という一手。下辺の白を分断し、どちらかを厳しく攻めていく狙いで、この手が成立するのであれば、黒ペースになっていく。白の一力九段としては、黒にも隙があるので、そこをついていきつつ、黒の攻めをいなしたいところ」

午後0時
昼食は、井山棋聖がざるそば、一力九段がかけそば=守谷遼平撮影

 昼食休憩に入った。激しい戦いが続く局面。日本棋院のライブ中継に出演したメンバーからは「この状況だとお昼ご飯をじっくり味わえる感じではないのでは」との声も

午前11時40分

 二人の昼食情報が検討室に。井山棋聖が冷たい蕎麦、一力九段が温かい蕎麦。飲み物はいずれもウーロン茶を注文した。食事の注文は1日目からシンクロ気味の流れだ。

午前11時
ネット番組で棋士による解説が流されている=守谷遼平撮影

 日本棋院のライブ中継動画に検討室から林漢傑八段と星合志保三段が出演。星合三段は「午前中からバチバチの戦いが」と興奮気味。林八段は「勝負所が来ています」。二人は午後1時半から現地で行われる大盤解説会にも出演する。

午前10時

 おやつの時間。井山棋聖はホットコーヒー(カフェインレス)、一力九段がオレンジジュースを注文した。

午前9時50分
参考図6

 一力九段は白94(△)で中央のラインを割いて行った。参考図6、黒1以下は想定図の一つ。白は8のアテを打ち、10と1子を助け、黒を左右に分断する。険しい競り合いになる。

午前9時
封じ手を打つ井山裕太棋聖(右は一力遼九段)

 両者一礼。1日目の棋譜を再現していく。立会人の山下敬吾九段が封じ手を開封。予想されていた右辺のツケコシだった。

午前8時54分

 一力九段が入室。盤を丁寧にふく。ほどなく井山棋聖が対局室へ。

1月13日

【1日目の総括】

 初日の対局を新聞解説の大西竜平七段に振り返ってもらった。

 「白の一力九段は序盤に下辺でポイントを上げ、落ち着いた差し回しを見せている。左上の三々に入られたときにすべて受けたとこを見ても、悪くないとみているのではないか。黒番の井山棋聖は白26の割り込みをおそらく予想していなかったと思う。相手の研究を感じ、少し不安になったかもしれないが、その後の打ち回しはミスもなく、下辺の一間トビ(黒39)など、井山さんらしい手も飛び出した。現状、左下の白に薄みがあり、黒がここに仕掛けていくような展開になれば、激しい局地戦に発展する。明日も朝から一瞬でも目を離せば、状況が変わる面白い戦いになるはず」

【封じ手予想】
予想される封じ手

 白78(△)の局面で、井山棋聖が封じた。控室で予想されている封じ手の第1候補はイのツケコシだ。第2候補はロと出る手で、これに対して白はハとつぐところなので、黒の井山棋聖はその後の展開を今夜ゆっくりと考えられる。そのほか、中央に黒ニと飛ぶ手や、右上黒ホのシマリもありえるという。

午後5時32分

 井山棋聖が79手目を封じる意思を示した。

午後4時半
参考図5

 黒77(△)まで、左上隅の黒が治まった。ここで、右上白1のカカリが目に付くが、これに対して黒が4のツケからのキリ味を見て、ポイントを稼いでくる可能性があるという=参考図5=。控室で大西竜平七段らが検討している。

午後3時

 午後のおやつ。井山棋聖が「フルーツの盛り合わせ」とグレープフルーツジュース、一力九段が「ショートケーキ」とホットコーヒーを注文。

3時のおやつを試食する大西七段(左)と星合三段

 検討室では、大西竜平七段と星合志保三段が3時のおやつを試食。もともとショートケーキが大好物という星合三段は「クリームは上品で心地よい甘さでスポンジはふわふわ。甘いものをたくさん食べるタイプではないですが、このケーキなら5個は行けそう」と顔をほころばせた。

 フルーツ盛り合わせを食べた大西七段は「メロンは思わずかぶりつきたくなりました。想像通りの甘さとおいしさでした。赤いイチゴとのほどよい酸味と相まって、完璧な組み合わせです」。盛り合わせには白いイチゴも入っており、「どんな味なのか気になっていたが、実は赤いイチゴより甘い。イチゴ単体としては、こちらが好きです」と笑顔で話した。

午後2時50分
参考図4

 井山棋聖が左上黒65と三々に入った局面。控室で河野臨九段らが白1と右から押さえた図=参考図4=を検討している。白は二段バネから左上の地を確保。黒12のツケコシから振りかわる展開になり、果たしてどちらが得をするか。

午後2時半
参考図3

 白62(△)までの局面。盤の上半分が大きく空いており、右上黒1のシマリが大場=参考図3=だが、それだと白は2以下、中央の黒石を圧迫してくる。「ですので、黒はまず中央の石を補強したいところです」と控室の河野臨九段。

午後2時

 対局の模様は日本棋院のYouTubeチャンネルでライブ中継されており、検討室にいるプロ棋士が随時、出演して戦況を解説している。この時間は山下敬吾九段と星合志保三段が初手から戦いを振り返った。

検討室から

 第1局の記録係は近藤登志希二段と青木裕孝二段の二人が担当し、午前中は1時間半、午後は1時間交代で対局室に入る。近藤二段が二人の対局の記録をつけるのは、昨年の名人戦第6局に続き、2回目。「二人の間はピリピリしていて、相変わらず怖かった。音を立てないようにひたすら気を付けている」とのこと。ちなみに一力九段には「長考した手の後に一度、席を立ち、戻ってきたら消費時間を確認する」という癖(?)があるといい、「セットの行動なので、常に準備をしています」という。

午後1時

 対局が再開された。

【1日目午前の総括】

 1日目午前中までの展開を新聞解説の大西竜平七段に振り返ってもらった。

 「一力九段の白26の割り込みが印象に残りました。井山棋聖が黒23で正面衝突で戦う手を選んだのに対し、ほぼノータイムで対応しており、もし研究済みの進行であれば、一力九段にとっては気持ちよい展開になっているのではないでしょうか。現在は、左下で白のいいツケが出て、井山棋聖にしても選択が難しい局面です。これから左下で戦いが起きるので、そこでどちらがポイントを挙げるかが注目されます」

午後0時
魚介のキターラ トマトソース

 昼食休憩に入った。注文は両者とも、「魚介のキターラ トマトソース」。キターラはギターの弦のような形をした南イタリアの生めん。手長エビ、イカ、アサリなどの魚介類がたっぷり使われているのはもちろん、トマトソースにも具材をソテーした際に出ただし汁が加えられている。この魚介のうまみが凝縮された逸品は、季節によるが、対局会場の「ホテル椿山荘東京」のルームサービスで注文することができるという。

午前11時50分

 一力九段の白50に検討室にいた河野臨九段は「非凡なツケ」と思わず声を上げた。「白は下辺で黒を分断しながら、中央に頭を出そうとしている」

午前11時30分
参考図2

 黒49(△)までの局面。黒は左下隅、右下隅、下辺で地を持ち、白は中央に勢力を張っている。ここで白1なら、黒2とこすんで左下の白を包囲しに行く手がありそうだが、白3とかけつぎ、黒4のアテに白5とコウにはじけば、白も弾力がある。控室ではこの図をはじめ、様々な変化を検討している。

午前10時20分

 白26の割り込みはほぼノータイムでの着手だった。検討室では参考図1の白4のノビが考えられていただけに、「躊躇なくいったのはすごい」という声。大西七段は「研究していることをうかがわせる一手」。立会人の山下敬吾九段は「割り込むと、黒が下辺で地を作って収まる形になり、黒からすれば決して不満はない形なのだが、白の一力さんはあえてそれを選んでいて、どのような狙いがあるのか」。

午前10時

 注文はともにグレープフルーツジュース。

午前9時半
参考図1

 19手目の井山棋聖の打ち込みから、いきなり本格的な戦いになるかどうかの分岐点を迎えている。控室では新聞解説の大西竜平七段が検討を進めている。「この図になればいい勝負という印象」と大西七段。

第46期棋聖戦七番勝負第1局、初手を打つ井山裕太棋聖(右は一力遼九段)(13日午前9時、東京都文京区で)=守谷遼平撮影
午前9時

 対局開始。ニギリの結果、黒番は井山棋聖に。

午前8時53分

 一力九段が対局室に。盤をふき、正座して井山棋聖の入室も待つ。ほどなくして井山棋聖も姿を現した。

1月12日

棋聖戦を前に、意気込みを語り、記念撮影に応じる井山裕太棋聖(左)と一力遼九段(12日午後4時42分、東京都文京区で)=守谷遼平撮影
午後5時

 会場でファン参加型のイベント「棋聖戦トーク」がスタート。イベントの冒頭、登壇した井山棋聖は「今年も棋聖戦という最高の舞台で戦えることを光栄に思う。七番勝負は対局者としてはこれ以上ない舞台であり、最も厳しい舞台。目の前の結果に一喜一憂せず、最高の自分を出したい」とファンの前で決意表明。一力九段も「今期は井山棋聖の10連覇がかかる注目されるシリーズになる。最高の舞台で、1局でもいい碁をお見せしたい」と話した。

 棋聖戦トークには、立会人や大盤解説を担当する棋士らも参加。立会人を務める山下敬吾九段は今回の棋聖戦について「日本囲碁界最高の戦い。一瞬の隙が命取りになる目が離せない戦いになる」と語った。棋聖戦トークの登壇者が予想した七番勝負の勝敗予想は以下の通り。

■山下敬吾九段 4勝2敗で一力九段

 「一力九段は天元戦で負けた後から、どれほど調子を戻しているのか。井山さんは12月から対局が少なかったので、調整がどうなのか。第1局で両者の調子を見極めたい」

■大西竜平七段 4勝3敗で一力九段

 「この二人なので難しい戦いになるはず。ただ、きょう一力九段とお会いして、メンタル的にも調子が良さそうに見えた」

■林漢傑八段 4勝3敗で井山棋聖

 「お二人のタイトル戦は今回もフルセットまで行く可能性が高いと思う。井山棋聖の棋聖戦9連覇を調べてみると、1~3局目の勝率が非常に高かった。一力九段が前半の3局でどれだけ頑張れるかが、ポイントになりそう」

■星合志保三段 4勝3敗で井山棋聖

 「去年の井山棋聖の強さがすごく印象に残っている。フルセットまでいった時の井山棋聖の強さを評価して」

 午後4時半
検分に終えた両対局者(12日午後4時29分、東京都文京区で)=守谷遼平撮影

 ホテルに到着した両対局者が対局室に入り、検分を行った。開幕局が「ホテル椿山荘東京」で開催されるのは5年連続。対局室がある料亭「錦水」の音羽の間は将棋の名人戦などでも使われ、囲碁・将棋ファンなら一度は訪れたい聖地の一つだ。広大な庭園内に建つ数寄屋造りの料亭で、庭に面した窓からは、美しい池が広がる。

 検分の後、両者はNHKのインタビューに答えた。「年末年始はゆっくり過ごすことができた」という井山棋聖は10連覇を目指す今シリーズについて「こういうチャンレンジができる機会はなかなかない。自分のベストを出し切りたい」。一力九段は「今回は九段からの再スタート。棋聖戦は1年で最初の棋戦でもあり、いいスタートが切れるよう頑張りたい」と述べた。

棋聖戦第1局 対局室ライブ中継(日本棋院囲碁チャンネルより)

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2668325 0 棋聖戦 2022/01/12 14:50:50 2022/01/14 20:59:08 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220112181318_kin_182930698-1.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)