井山棋聖が勝ち、1勝1敗のタイに…棋聖戦第2局詳報

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 井山裕太棋聖(32)に一力遼九段(24)が挑戦する囲碁の第46期棋聖戦七番勝負第2局が21、22の両日、千葉県勝浦市の「三日月シーパーク勝浦ホテル」で行われた。勝負は22日午後6時20分、井山棋聖の白番中押し勝ちとなり、シリーズ対戦成績を1勝1敗とした。

 期待通りの熱戦となった本局の模様を「動く棋譜」やタイムラインでお楽しみください。

棋聖戦七番勝負第2局 動く棋譜速報 黒番:一力遼九段、白番:井山裕太棋聖

※動く棋譜は、IE(インターネットエクスプローラー)11では閲覧できません。他のブラウザでご利用ください。

第46期棋聖戦七番勝負第2局 フォトギャラリー

終局後のフラッシュインタビュー

■井山棋聖

――封じ手のあたりの感触は?

 「封じ手の直前に(76手目で)右上をハネた手に対し、切断にこられました。当然、そうこられるとは思っていたのですが、そこで手が止まっているようでは、ちょっとリズムとしては、はっきりおかしくて……。昨日の時点では厳しかったかなと思っていました。2日目に入って、凡ミスも出たし、まずいのかなと思っていました」

――その流れの中で、白は地を取り、黒は中央の3子と厚みを取る分かれがありましたが、そのあたりはどのように?

 「全く予定の行動ではなくて、はっきりと判断できていなかったんですが、あまり良くないと思って打ってました」

――どのあたりで優勢を意識されましたか?

 「空間が黒も広いのでよく判断ができていなかったです。左辺から中央の白を厳しく攻めてこられたのですが、黒の模様に入り込みながら、しのぎになっていたので、この一団がものすごくいじめられるようなことがなければ……。ただ、それでもよく分かっていなくて、分かったのは最後の最後です。ずっと判断も読みも含めて分からないことだらけでした」

――10連覇のかかるシリーズの1勝目を挙げたことへの感想を

 「ひとまず一つ勝てたことは良かったですけど、これから先は長いので、気持ちを新たに頑張りたいです」

■一力九段

――封じ手あたりの形勢は?

 「(77手目の)ツケも正しいかどうか分からなかったのですが、(黒76)とハネて頑張ってこられたので、切って行きたくなるところかなと。実戦は(85手目で)ノビて、振り替わりのようになったんですけど、実戦の形勢もよく分かっていなかったですし、もう少し頑張る手があったかもしれないですね。実戦は結構、白地も多いですし、後の打ち方が難しかったです」

――中央の白を攻めを仕掛ける形になりましたが。

 「普通に寄せ勝負にしているのもあったかもしれないですが、何が正しいか分からなかったです。(134手目に)コスまれた時に、打ち方に困っているようではおかしかったですね」

――シリーズは1勝1敗のタイになりました。次戦にむけて。

 「後半ミスが多かったので、そのあたりを修正して、次も精いっぱい頑張りたいと思います」

本局の総括

 許十段に第2局を振り返ってもらった。

 「1日目の午前中から細かい競り合いが続き、封じ手の段階では、少し間違えれば、一気に勝負が決まってもおかしくない、ギリギリの厳しい戦いになりました。封じ手直後の右辺の争いで、一力さんが(85手目のノビで)少し妥協した部分があり、感想戦でも『もう少しいい手があってもおかしくなかった』と話しておられました。

 最終的に勝敗を分けたのは、上辺の白130の出に対して、一力九段が黒131と白石を取りにいったところかと思います。あそこで(白132と)抑えておけば、ヨセ勝負になっていたと思いますが、白134のコスミがうまい手でした。結果的に白138とカウンターを決められ、一気に差が開きました。秒読みという短い時間の中でも、ああした手を見つけられる井山棋聖の強さを改めて感じました。

 シリーズ自体は1勝1敗のタイになりましたが、この1、2局は最後まで勝敗が分からない接戦だったので、名人戦に続き、今後も激戦が続くと思います」

タイムライン

1月22日

午後6時20分

 一力九段が投了。158手までで白中押し勝ちとなった。

午後6時15分

 前傾姿勢になり、何度も頭をかいた一力九段。155手目で上辺を囲いにいって頑張ったが、白156と取られて、左上の黒に無条件の生きがなくなった。検討室では「終局が近いのでは」との声が。天を仰ぐ一力九段。

午後6時過ぎ

 一力九段の残り時間も10分を切り、秒読みに入った。

午後5時55分

 井山棋聖の146手目。秒読みに追われる中、井山棋聖は左辺の白を確実に生きる方針を選んだ。左辺の黒も生きることになるが、「これであれば、何事もなければ白優勢です」と許十段。

午後5時45分

 白138のオキが厳しい狙いだ。左辺の黒と、左辺から中央にかけての白の両方の大石が生きる展開となった場合、黒は左辺の地が大きく減ることになりそうだ。一力九段は何かうまい手をひねり出せるだろうか。

午後5時43分

 一力九段が長考に沈んでいる。左辺での折衝の結果、上辺の黒が薄くなり、白がポイントを挙げた。何事もなければ井山棋聖がリードを奪いそうだ。井山棋聖は秒読みに追われる中で、正確な手を打ち続けることができるか。一力九段の残り時間も20分を切った。

  午後5時20分

 白134のコスミは控室でも検討されていた手だ。井山棋聖は秒読みの中でも、正確な着手を続けている。

午後4時55分

 井山棋聖は残り8分まで考えて、上辺の出を打った。残り10分を切り、秒読みに入った。戦いは山場を迎えている。

 

 「ここまでいい感じで戦えてきた井山棋聖ですが、左辺から中央の石にはまだ半眼しかなく、一手間違えると一瞬で勝負が決まるギリギリの中で戦っています。その中でこの残り時間。もっと考える時間がほしいところですが……」と許十段。

午後4時47分

 130手目を考慮中に、井山棋聖の残り時間が15分となった。

午後4時35分
参考図13

 黒が左辺から中央にかけての白に圧力をかける展開になっているが、黒129(△)に対して、控室では許十段が白1のトビを示している。黒2と中央を守れば、イからの手段を見て、白5のオキが厳しい狙いになる。

午後3時25分
参考図12

 白116(△)まで左辺の黒模様は制限されたが、白も眼が薄い形だ。「ただ、黒は本気で取りに行くことはないのでは」と許十段。黒5、7などと白を攻めながら、上辺をまとめることが想定されるという。

午後3時

 午後のおやつの時間。井山棋聖がチョコレートケーキとアイスコーヒー、一力九段がショートケーキとホットコーヒー。

 盤面では、白が左辺の黒模様をどう削減するかが焦点になっている。白110は左辺に弱い石を抱えながら踏み込んだ手で、「井山棋聖らしい」と許十段。一力九段も黒111、113と反発して、再び勝負所を迎えている。

午後1時40分
参考図11

 左上の折衝で先手を取った井山棋聖は、白112のノビに回った。「手厚い手です。黒イと出る味も消しています」と許十段。

午後1時

 両者一礼し、対局が再開された。休憩前にも長考していた一力九段は再び前傾姿勢になり、考慮を続ける。暖かい午後の日差しが射し込む対局室。井山棋聖はすぐに上着を脱いだ。

2日目午前の総括

 2日目午前中までの戦いを許十段に振り返ってもらった。

 「封じ手以降、井山棋聖が最強の頑張りを見せた印象です。一力九段の85手目の伸びた手が、黒としてもう少し頑張る手もあったかと思いますが、黒が中央の厚み、白が実利を取る分かりやすい振り替わりになりました。AIの評価値では若干、白に触れていますが、中央はまだ広いので、勝負はこれから。長期戦になりそうです。午後は、黒としては、左下の白を攻めながら、中央をまとめていく形。白は中央の黒の地をどう消すかか課題になります」

午後0時

 一力九段の長考が続く中、昼食休憩に入った。昼食は井山棋聖が天ぷらそば(冷)、一力九段は天ぷらそば(温)。

午前11時過ぎ

 一触即発の緊張する流れが続いていたが、穏やかな分かれとなった。黒は中央の白3子を取って厚くなったが、白は92の大きなツギを打ち、右辺で地を確保した。黒93から左辺で新たな競り合いが始まった。

午前10時
参考図10

 一力九段の黒85(△)に対して、白1から3が検討されている。黒は4、6と中央の白3子を取るぐらいだ。「これは白も頑張りました。長期戦です」と許家元十段。

 朝のおやつは井山棋聖が緑茶(アイス)、一力九段がアップルジュース。

午前9時35分
参考図9

 白84(△)に対して黒1から3と攻め合いに持ち込んだ時に、白4が粘り強い手だ。白12から出切って、右下の白の生死をかけた超難解な戦いだ。控室の検討でも、容易に結論が出ない。

午前9時15分
参考図8

 封じ手前までは「井山棋聖が、相手の攻めに、生きるか死ぬかの険しいコースを選ぶか、かわしにいくか」が注目されていたが、井山棋聖は険しいコースを選んだ。許十段によると、黒83(△)に対して、参考図8の白1のハネから3と右辺に手を入れればつぶれることはないかったが、これでも、中央の白をゆっくり攻めて、黒が悪くないという。井山棋聖は、実戦では白5と飛び、「さらに険しい激戦コースに入りそう」と許十段。

午前9時
井山棋聖(左)が封じ手を打ち、対局が再開された(右は一力九段、中央は立会人の高尾紳路九段)=守谷遼平撮影

 「時間になりました」という呼びかけ。両対局者は前日の棋譜を再現する。封じ手は,前日から大本命と言われていたハネ。

午前8時54分

 この日も千葉・勝浦は快晴。一力九段が朝日射し込む対局室へ。ほどなくして井山棋聖も入室した。

1月21日

1日目の総括

 1日目の対局を許十段に振り返ってもらった。

 「お互い安定していない石があり、一手一手慎重に考えなければならない局面が続いています。現在は一力九段が仕掛けていって、井山棋聖が真正面から戦うのか、緩くかわしていくのか、井山棋聖の選択が注目される局面です。形勢はまだ互角だと思いますが、明日は朝からいきなり勝負所になります。井山棋聖が真正面から戦うことになれば、いきなり生きるか死ぬかの決戦に突入しますし、ここでうまくかわせば、そのままヨセ勝負になっていくのではないかと思います」

午後5時31分
参考図7

 井山棋聖が封じ手の意思を示す。一日目の対局は超難解な変化を残す局面で終わった。

 黒77(△)に対して、井山棋聖が大長考の末に封じた。封じ手の予想は参考図7のイが本命視されている。「ロもあるかもしれませんが、ちょっとマニアックな手ですかね」と解説の許十段。

午後4時50分
参考図6

 黒77(△)からの切断に対して、白は真っ向から戦うのではなく、参考図6の白3を利かしてから白5と決戦を避ける打ち方もある。白は右辺を渡ったが、黒8でイからの出切りを防いで中央が厚くなった。「これなら長期戦です」と許家元十段。

午後4時29分

 一力九段の77手目に控室では「行った!」の声。右下の白石を切断にいく一手だ。着手した後、一力九段は一度、席を立った。井山棋聖はそれを見て、棋譜を確認した。

午後4時
参考図5

 白76(△)の場面で一力九段が考えている。解説の許十段は参考図5の黒1から3の切断という強硬手段を検討している。黒23までは一例だが、この攻め合いは黒が一手勝ちだ。高尾九段は「大きな勝負所を迎えた」

午後3時

 午後のおやつ。井山棋聖は「ショートケーキ」とアイスティー。一力九段は「献上菓子(和菓子)」と紅茶を注文した。

午後1時50分
参考図4

 黒49のコスミツケに対して、参考図4の白1が自然な手だ。黒は2から4と白を分断し、白15まで下辺を生きる展開が想定される。解説の許十段は「この図になれば、下辺の白の切りからの折衝は少し黒が得したかもしれません。でも、まだまだこれからの勝負です」

午後1時

 対局が再開された。

1日目午前の総括

 1日目午前中の戦いを許十段に振り返ってもらった。

 「四隅はそれぞれ部分的にはよくある定跡ですが、この組み合わせは初めて見た形で、珍しい布石になりました。序盤は一力九段が積極的にいった印象です。黒25と挟んで仕掛けにいったり、黒41のハネも頑張った手でした。それに対して、井山棋聖も最強手で応じている印象です。個人的には白46でケイマでかわした手が印象に残りました。午後の戦いで、黒番の一力九段は下辺の白の薄みを突きたいところ。白番の井山棋聖は、右辺の黒一子を攻めていく形になるのではないでしょうか」

午後0時
昼食は、井山棋聖が鍋焼きうどん、一力九段が勝浦風三日月タンタン麺=守谷遼平撮影

 定刻になり昼食休憩に入った。井山棋聖は一力九段が席を立った後も、少しの間、盤面を見つめていた。昼食は、井山棋聖が「鍋焼きうどん」、一力九段は「勝浦風 三日月タンタン麺」。タンタン麺を試食した柳九段は「汗が出るほどの辛さとボリューム感。一力九段はエンジンを吹かしている感じだね」

午前11時20分
参考図3

 井山棋聖が白46とした局面(参考図3の△)。下辺での難解な駆け引きが続き、一力九段はパタパタと扇子で顔を仰ぎながら、熟考を続けている。

 控室では、黒1が検討されている。黒3に白4と受けると、黒5からの仕掛けがある。下辺の白は生きたが、黒19まで渡って黒が不満ない分かれだ。

午前10時20分
参考図2

 42手目、井山棋聖が長考の末、下辺の出(参考図2の□)から、切り(参考図2の△)に踏み切る。

 日本棋院のライブ中継で解説を担当する柳時熏九段は「午前中はゆっくりした展開だと思っていたが、急に激しくなった」。白□、黒□の交換があるので、黒1と取りに行く手は成立しない。

午前10時

 午前のおやつは両者注文なし。ドリンクは井山棋聖が緑茶(アイス)、一力九段がアイスコーヒー。

午前9時50分

 白40手目の時点。「ここまでいい勝負かな」と解説の許十段。検討室では対局開始直後から立会人の高尾九段と新聞解説の許十段が対局の行方を検討している。

午前9時過ぎ
参考図1

 7手目で一力九段は左下にツケ。検討室では「おっ」という声が上がった。新聞解説の許家元十段は「黒11では、黒1と左下を続けて打つと、先に10やイに挟まれるのを嫌ったのかもしれない」(参考図1)

午前9時
太平洋を一望できる対局室で、初手を打つ一力九段(左は井山棋聖)(21日午前9時、千葉県勝浦市で)=守谷遼平撮影

 立会人の高尾紳路九段の「時間になりました」のかけ声で対局開始。一力九段が黒番だ。

午前8時53分

 一力九段が対局室へ。ほどなくして井山棋聖も。この日の勝浦氏は快晴。朝の爽やかな光が窓から対局室に注ぎ込む。

1月20日

夕食

 記念撮影を終えた両者は部屋で夕食をとり、翌日からの決戦に備えた。この日は、房総産「しあわせ絆牛のローストビーフ」や川津産「ところてん」、房総名物の「さんが焼き」などが振る舞われたという。

検分を終え、「三日月シーパーク勝浦ホテル」の噴水前で記念写真に納まる井山棋聖(左)と一力九段=守谷遼平撮影
午後5時40分

 ホテル正面の噴水の前で記念撮影。カラフルな光が水しぶきで反射し、頂上決戦の華やかな雰囲気を盛り上げる。

検分に臨む井山棋聖(左)と一力九段=守谷遼平撮影
午後5時25分

 対局室で検分。両対局者はその後、NHKなどのインタビューに答えた。

 井山棋聖は対局会場の印象について、「対局室からも自室からもきれいな景色が見えて、すごくいい所」と笑顔を見せ、今局についても「気持ちを新たにという部分を重視して、自分なりにコンディションを整えてきた。結果を恐れずにベストを尽くしたい」と意気込みを語った。

 一方、一力九段は第1局について、「手応えも課題も見つかった。結果的にうまくいったが、かなり運が良かったところがあった」と振り返り、明日からの戦いに向け、「第1局と同様、目の前の一局に集中していきたい」と話した。

午後4時40分

 井山棋聖、一力九段らが対局会場となる千葉県勝浦市の「三日月シーパーク勝浦ホテル」に到着。太平洋に面した房総地域を代表するリゾートホテルで、海の向こうに沈む美しい夕日が一行を迎えた。

 改称前の「勝浦ホテル三日月」時代の2020年1~2月には、新型コロナウイルスが最初に流行していた中国・武漢からの帰国者を受け入れ、地元住民らが激励のため、砂浜にメッセージを書いたり、竹灯籠を置いたりして注目された。対局室の外には美しい砂浜と広大な海が広がり、大きく育ったヤシの木が風に揺れる。窓を開けると雄大で穏やかな波音が聞こえてくる。

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2689246 0 棋聖戦 2022/01/20 16:18:58 2022/02/18 09:30:51 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/end2-1.jpg?type=thumbnail

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