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第7譜…仕切り直し
◇白 挑戦者 一力遼(1勝1敗)×黒 棋聖 井山裕太(1勝1敗)
(コミ6目半)
112~122
持ち時間 各8時間(白6・58分 黒6・05分)

両者ともに、コーヒーを飲みながらの対局だ。一力は砂糖とミルクをふんだんに入れて飲むのが好みのようだ。スプーンでかき混ぜると、溶け残った砂糖のざらざらという音が静かな対局室に響くほどであった。一力はそれをすくっておいしそうに口に入れている。
一力は時折、盤側に置かれているラムネ菓子も食べている。よほど脳に糖分を届けたいのだろう。対局ではそれほどエネルギーを消費するのだ。
対する井山はブラックで飲んでいるが、デカフェ(カフェインを除いたタイプ)でとの注文があったそうだ。興奮しすぎずに平常心を保とうということだろうか。

白12で中央の黒2子を制する。右下隅も大きな手に見えるが、両者ともに打たない。価値判断が一致しているのだ。「黒17で参考図の黒1と打っても、後に白AからEの味があるため見た目ほど大きくありません」と村川九段は言う。白16で布石のやり直しだ。
黒17から中央の黒を動き出して、左辺を消す手がかりを作る。白18を強要し、黒19と上の白を狙う。一力も白22と左辺を広げつつ、援軍を送る。読みの必要な攻防から一転、感覚が要求される局面となった。(大橋成哉)

第8譜…銃口
◇白 挑戦者 一力遼(1勝1敗)×黒 棋聖 井山裕太(1勝1敗)
(コミ6目半)
123~141
持ち時間 各8時間(白7・45分 黒7・11分)

雪が舞ったかと思うと晴れて、晴れたかと思えばまた雪が降り出す。安定しない長崎の空は、形勢が揺れ動く盤面を映し出しているかのようだ。最後に晴れるのは、果たしてどちらの空だろうか。
黒23、27は大空を舞う鳥のようで、なんとも優雅である。白の薄味を狙いながら、左辺に進出していく構想だ。白もどう対応するかが難しい。守ってばかりでは、形勢を損じてしまう。

一力は白28と、その鳥の頭にいきなり銃口を突きつけた。控室を驚かせた激しい一手だが、その狙いはわかりやすい。参考図の黒1と受ければ、白2、4と黒を切断しようというのだ。
この図は、黒としても自信が持てない。黒は左辺を消すことを優先して、黒29から中央を捨て気味に打った。複雑な攻防戦だ。
白34が一力の好判断だった。一見筋が悪く見えるが、断点は多くても黒から大した手はない。白40まで分断したことで、中央の黒を大きくのみ込むことができそうだ。白は形勢を持ち直したと言えるだろう。
まだまだ局面は広いが、両者とも残り時間が少なくなってきた。ここからが本当の勝負だ。(大橋成哉)
