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藤井二冠、水面下での読み…[竜王戦見聞録]藤井聡太編<1>

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 今期竜王戦で史上初の4年連続ランキング戦優勝を果たした藤井聡太二冠。3組での戦いと本戦の対局を振り返る。

イラスト バトルロイヤル風間 
イラスト バトルロイヤル風間 

 1月に行われた3組1回戦で畠山鎮八段に快勝した藤井二冠は3月、2回戦で大ベテランの高橋道雄九段と顔を合わせた。「タカミチ」の愛称で知られる高橋九段は、1回戦で若手強豪の増田康宏六段を下している。

 戦型は高橋九段が得意とする横歩取りになった。藤井二冠は「青野流」を採用し、早い段階から力戦になった。第1図は中盤の難所で、藤井二冠が▲6六角としたところ。プロでも先手持ちか、後手持ちか、形勢判断が分かれそうな局面だ。

 この数手前、1時間を超える長考に沈んだ藤井二冠は読み筋をまとめた上で、第1図の形勢について「わずかに先手が指せる」と判断していた。桂損ながら大駒の働きの差が大きいとみていた。ただし、第1図からは気になる変化がある。後手が△8七歩成と踏み込んできたらどうするのか。藤井二冠の読みは▲8三歩△同飛▲8四歩△8一飛▲8七金△8六歩▲8八金△4五歩▲3三角成△同桂▲2一飛(参考図)というもの。手数が長く難解な順だが、腕自慢の方は並べてみてほしい。参考図の▲2一飛で「先手が少し指せる」と判断していた藤井二冠。後手が角交換を挑んでくるケースも長考で想定していた。

 高橋九段は第1図から△8五飛と指した。以下、▲8八歩△8七桂に▲2五飛(第2図)が気持ちのいい返し技だった。アクロバチックな空中戦ならではの展開だ。「けっこう前から形勢が悪いと感じていた。ここでは既に思わしい順がない」と悲観していた高橋九段は無理に粘ることをせず、79手と短手数で藤井二冠が勝利を手にした。

 実戦の盤上には現れなかったが、藤井二冠の水面下での読みの深さや形勢判断の精度の高さを示した一局だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本将棋連盟は4月から5月にかけて遠征を伴う対局を延期した。2か月近く公式戦がなかった藤井二冠は「将棋をじっくり見つめ直した」と話す。この高橋九段との対局も、丹念に復習した。難易度の高かった実戦での形勢判断が正しかったことを確認して、自信になったという。(吉田祐也)

メモ

 還暦を迎えた高橋九段はタイトル獲得通算5期の実力者で、竜王戦の前身である「十段」を最後に保持していた棋士でもある。若手時代は相矢倉を得意とし、重厚な棋風は「地道流」と呼ばれていた。近年は横歩取りなどの戦型を好み、派手な攻め合いをいとわない棋風に変化している。

 

[竜王戦見聞録]藤井聡太編<2>はこちら

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1531668 1 竜王戦 2020/10/08 20:10:00 2021/07/08 18:12:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201008-OYT8I50079-T.jpg?type=thumbnail

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