[観る将が行く]食事は将棋の“0手目”?
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豊島将之竜王の初防衛か、羽生善治九段のタイトル通算100期か――。9日に開幕した第33期竜王戦七番勝負は将棋界の最高棋戦の名にふさわしく、将棋ファンの注目を集める対戦となりました。
せっかくの機会なので各局の2日にわたる熱戦を、できるだけ多くの人に思い切り楽しんでもらいたい!! というわけで、七番勝負を速報する読売新聞オンラインでは“
と、威勢良く書き出したものの、オンライン担当デスクからの指示は「とにかく現場で面白いネタを見つけてきて」というアバウトなもの。新聞記者の現場取材ではだいたい、こうしたあいまいな指示から始まるケースが多い。とは言え、なにせ初めての将棋取材。おまけに最高棋戦の現場とあって、周りもバタバタと忙しそうだ。
まずは情報収集してみよう。読売新聞で事務方を務めるMくんに声をかけてみた。
「オンラインでコラムを書くんだけどさ、何か面白いネタってないかなぁ。将棋めしとかさ」
「そうですねぇ。将棋めしだと……」

思案顔で分厚いファイルから1枚の紙を取り出したMくん。よく見ると「料理オーダー表」と書かれていて、料理とおやつのメニューがずらりと並んでいる=写真=。なるほど、希望のメニューに対局者は○を付けるわけか。ん? でも、1日目、2日目と2日分の欄が設けられているけど……。
「はい。この紙は事前に対局者に配られていて、前日に会場入りした時に受け取るのです」
!! そうなの? 東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われる対局時には、途中で係の人が注文を取りに来るシーンをよく見る。実際、今年の竜王戦の挑戦者決定三番勝負で、丸山忠久九段がメニューを見ながら、かなり“長考”していた。だが、言われてみれば、確かに竜王戦七番勝負のような番勝負の中継で、誰かが注文を取りに来るシーンってあまり見ないかも。
Mくんによると、竜王戦七番勝負では会場によって若干の違いはあるものの、基本は事前に料理オーダー表が示されていて、対局前に2日分の注文を受けることが多いとのこと。
対局に集中する意味もあるのだろうが、頭をフル回転させる長丁場では、食事も戦いの一部。翌日の体調とか、その時の気分もあるだろうに、会場入りする時には2日後の食事まで決めているとは、戦いの“0手目”といった感じがしなくもない。
ちなみに、セルリアンタワー能楽堂(東京都渋谷区)で行われた第1局で、豊島竜王と羽生九段に渡された料理のメニューは表の通り。
竜王戦第1局 料理オーダー表 | |
昼食
両日 午後0時半 | 国産牛ビッグハンバーガー(170g) |
アメリカンクラブハウスサンドウィッチ | |
ルーベンサンドウィッチ
(パストラミ、スイスチーズ、サウザンアイランドなど) | |
パニーニ
(生ハム、トマト、トリュフソースなど) | |
オマール海老と帆立貝のクリームスパゲッティー | |
特製かるめら 黒印度カレー | |
ずわい蟹と茸のピラフ 卵白仕上げ | |
サワークリームで仕上げたビーフストロガノフ
バターライス添え | |
鶏照り焼き重 | |
国産牛の網焼き”ステーキ重”温野菜添え | |
四川飯店伝統の麻婆豆腐御膳 | |
五目チャーハン | |
海の幸入り焼きそば | |
おやつ
両日 午前10時 午後3時 | 紫芋のガトー |
かぼちゃのプリン | |
プリンアラモード | |
ティラミス | |
マロンのロールケーキ | |
キャラメルムース チョコレートと生姜風味 | |
マドモアゼル”u” (苺のティラミス風) | |
巨峰のジュレとブランマンジェ | |
イチジクのタルト | |
モンブラン | |
フルーツの盛り合わせ |
ホテルの担当者によると、食事はルームサービスで提供されるメニューを中心に、対局者と同じ食事を食べてみたいというファン向けに、セルリアンタワー東急ホテル1階のガーデンキッチン「かるめら」の秋の新メニューを加えたのだそうだ。一方のおやつは、ホテルらしく洋菓子をベースに、「フルーツの盛り合わせ」を候補に加えた。熱心な将棋ファンの方々なら、きっとその理由はおわかりだろう。


対局前に両者はどんな“0手目”を選択したのか。そして、みなさんだったら、どのようなメニューの組み合わせで勝負の一戦に臨むだろうか?


食事を考えただけでもワクワクする。至高の戦いが幕を開けた。(藤)