[観る将が行く]しぐさでわかる長考のサイン

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 豊島将之竜王に羽生善治九段が挑戦する第33期竜王戦七番勝負の第1局は、初日からプロもファンもびっくりするような超急戦に突入し、竜王戦七番勝負史上最短手数の52手で豊島竜王が勝利した。

考慮中の豊島竜王
考慮中の豊島竜王
盤面を凝視する
盤面を凝視する
確信に満ちた手つきで指す
確信に満ちた手つきで指す

 読売新聞文化部の将棋担当・Y記者によると、ここまでの急戦はなかなかお目にかかれないとのこと。しかも、序盤から一気に終盤戦に突入する感じで、両者とも1日目の午後から長考の連続。初日に封じ手も含めて27手しか進行しなかったというのは、序盤戦の研究も進んだ最近の将棋界では珍しいという。

 「一歩も引かない。まさに両者の意地と意地のぶつかり合いですよ。ちょっとでも間違えると、即負けるというギリギリの道を二人とも選んでいます」とY記者。

 なるほど。竜王戦のポスターを見て、第一感として“秘めたる闘志”という言葉が浮かんだものの、この戦局は闘志という言葉では物足りず、激情と言っていいかもしれない。棋士って、やっぱりすごいな。

 丸一日、両棋士が駒を動かす姿をほとんど目にすることがなかった“観る将”の記者だったが、現場では意外なほど待たされている感覚はなかった。というのも、Y記者がビシビシと展開を言い当ててくれたからだ。

考慮中の羽生九段
考慮中の羽生九段
読みの合間に体を動かす
読みの合間に体を動かす
ゆったりした手つきで指す
ゆったりした手つきで指す

 「あ、これ、羽生さん長考に入りますよ」
 「これはこのまま昼食休憩に入りますね。のんびり原稿を書いていてもらえば」

 などなど。長考の予想が本当にピタリとあたる。もちろん、その後の展開や勝敗を分ける重大な分岐点かどうか、という分析もあるのだが、Y記者に言わせると、しぐさでなんとなく予想できるのだそうだ。

 例えば、豊島竜王が22手目で△6二金と指した場面。その瞬間、羽生九段は足を崩して、盤面を前のめりに見つめた。Y記者によると、「相手の手を見て、座り直すのは長考のサインの一つ」。さらに「ここで席を立てば、かなりの確率で長考」と話していると、羽生九段は席を立った。次の▲3三角成を指すまで、羽生九段は実に1時間42分もの時間を費やした。

 う~ん。人間同士の戦いって、こういう部分も面白い。そう言えば、藤井聡太二冠もすごく表情が豊かだ。長時間にわたる将棋観戦に飽きないのも、こうした肌感覚で分かる棋士の感情の動きや駆け引きがあるからだろう。

 もちろん、記者や観戦者が感じるこの空気感を、対局者が感じていないわけがない。

 お互い一歩もひかない“殴り合い”のような対戦となった第一局。対局者はそれぞれ相手の一挙手一投足にどんな決意を感じたのだろう。

 「この七番勝負を振り返るとき、そんな記事を読みたいなぁ」

 隣にいるY記者に向かって、心の中でひそかに語りかけてみた。(藤)

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1537746 0 竜王戦 2020/10/10 18:18:00 2020/10/10 18:52:42 2020/10/10 18:52:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201010-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

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