[指す将が行く]悪手の海、果敢に泳いだ二人の勇者~竜王戦第1局

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文化部・吉田祐也

 幾多の名勝負を生んだ将棋界の最高棋戦・竜王戦七番勝負。今期はタイトル初防衛が懸かる豊島将之竜王(30)と、タイトル100期を目指す羽生善治九段(50)が全国各地で激闘を繰り広げる。文化部将棋担当の吉田祐也記者が、盤側で見届けた両対局者の息づかい、勝負の分かれ目について図面を交え、「指す将」の視点から観戦記をお届けする。

<七番勝負第1局>10月9日、10日 東京・渋谷 セルリアンタワー能楽堂

一礼する両対局者。盤側から「羽生世代」の名棋士、佐藤康光九段と森内俊之九段が見守った
一礼する両対局者。盤側から「羽生世代」の名棋士、佐藤康光九段と森内俊之九段が見守った

初期配置が意味を持った対局

 今期の竜王戦七番勝負第1局はある記録が誕生した対局となった。52手での終局。これは竜王戦七番勝負史上、最短手数だ。将棋の公式戦の平均手数は110手くらいなので、その半分以下で決着がついたことになる。

 負けた羽生九段が、ポッキリ折れて、あっさり終わった対局ではない。能楽堂の控室では「濃密な名局」という声も出ていた。勝利した豊島竜王は、感想戦でも険しい表情を崩さなかった。短手数の中で、両対局者は盤上没我し、読みをぶつけ合った。

 いや、まさか。将棋担当記者をしていて、こんな日が来るとは思いもよらなかった。図を見てもらいたい。上に(までの局面)とある。普通は、ここに指し手が入り、(▲7六歩までの局面)となるものだ。

 なぜ、指し手が入っていないのか。それは、駒を並べた初期配置を載せているからだ。まだ、互いに一手も指していない初期配置の図面を載せる日が、初めて訪れたのだ。本局はこの図面が大きな意味を持つことになる。

 将棋には「居玉(いぎょく)」という用語があり、先手は5九の地点、後手は5一の地点に玉がいることを指す。初期配置だと、互いの玉は5九と5一にいて、そこから動かない状態を「居玉」と称している。現代将棋はAIの影響もあって仕掛けが早くなり、玉をあまり囲わない将棋も増えている。

 とはいえ、さすがに玉が初期配置の5九や5一の地点のまま戦いを始めるケースは、ほとんどない。先手、後手ともに玉を左右のどちらかに動かして仕掛けることが通例なのだ。しかし、竜王戦の第1局は、「居玉」のまま激戦が幕を開けたのだ。

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1562600 0 竜王戦 2020/10/20 15:00:00 2020/11/07 14:24:10 2020/11/07 14:24:10 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201019-OYT8I50074-T.jpg?type=thumbnail

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