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[観る将が行く]仁和寺対局、“写真映え”する舞台を演出した職人芸

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 京都市の世界遺産・仁和寺で行われた竜王戦七番勝負第3局は“写真映え”する対局場そのものが大きな話題になった。特に2日にわたって熱戦が繰り広げられた「宸殿」の芸術的なふすま絵に感激した将棋ファンは少なくないことだろう。

仁和寺の宸殿で対局する豊島将之竜王(左)と羽生善治九段。対局者も含めて一幅の絵のような美しさだ
仁和寺の宸殿で対局する豊島将之竜王(左)と羽生善治九段。対局者も含めて一幅の絵のような美しさだ

 第3局の写真特集はこちら>>

 明治、大正期に活躍した、日本画家・原在泉が描いたこのふすま絵。実は対局中、仁和寺の関係者も、まじまじとその美しさに見入っていた。

原在泉が描いたふすま絵
原在泉が描いたふすま絵

 いつも見ているはずなのになぜ? 理由は簡単。普段はもっと暗いから。対局する棋士や将棋中継のために明かりを足し、室内を明るくしていたのだ。

 お寺での将棋の対局といえば、1937年の木村義雄と阪田三吉による大勝負「南禅寺の決戦」と花田長太郎と阪田三吉の「天龍寺の決戦」が有名だ。ただ、最近では、施設や設備が整ったホテルや旅館での対局が主流になっているし、そもそも世界遺産のお寺をどうやって対局場にするのか、現場で取材する前は不思議に思っていた。

対局室の全景。対局前日の検分に臨む豊島竜王(左)と羽生九段の上にはカメラや照明が見える
対局室の全景。対局前日の検分に臨む豊島竜王(左)と羽生九段の上にはカメラや照明が見える

 そこで、写真部のカメラマンのWくんに宸殿の全景を撮影してもらったのが、こちらの写真。天井にはLED照明のほか、盤面を写す天井カメラ(略して天カメ)が取り付けられている。

 対局2日前の朝からこの設営にあたったのが、囲碁将棋中継の設営に携わって5年というFさん(50)だ。日本将棋連盟から委託を受け、今期の竜王戦七番勝負全会場の映像関係のセッティングを担当している。

 仁和寺での作業は昨年に続き2回目だが、Fさんによると、苦労するのは「天井の高さ」だという。

 「対局も中継も問題なくできる明るさを保つには、照明を増やさないといけないのですが、天井が高い分、作業も大変です。昨年は3段の脚立で全く足りず、急きょ、はしごをお借りしたので、今年は大きな脚立を仁和寺さんにご用意いただきました」とFさん。天井を中心とした宸殿の設営にはほぼ丸一日を要した。

 美しい見せ方にもこだわった。

 両対局者の奥(上段の間)に掛け軸がかかっていたのを、中継をご覧になった方はご記憶にあるだろう。888年(仁和4年)に仁和寺を創建した宇多天皇(寛平法皇)を描いたものだが、そのままの状態では暗くて映らないため、かすかに上段の間に光を足し、対局者の奥に浮かび上がるよう演出を加えたという=写真=。

 「奥の部屋が明るすぎてもだめ。戦いの背景として美しく存在できるよう、調整に相当、苦労しました」

 なるほど、一幅の絵画のような芸術的な対局風景は、職人技とこだわりで作り上げられた“Fさんマジック”だったということか。

 世界遺産での作業はやはり緊張するに違いない。最後に「プレッシャーも相当でしょう」と話しかけると、こんな答えが返ってきた。

 「世界遺産でも、ホテルでも、建物を大切にするのは同じです。ただ、天カメをつるしてから撤収が終わるまで、何かあったらどうしようという不安で期間中は眠っていても1時間ごとに目が覚める日々が続きますね」

 竜王戦七番勝負の開催地は、地域活性化や地域の文化振興に役立ててもらう目的で、2016年から公募をもとに決められている。

 将来、どんな場所でどんな美しい対局風景が生み出されるのだろう。そして、それがもし、自分の街だったら……。職人の仕事に触れた今、そんな夢想をしながら、将棋中継を楽しんでいる。(藤)

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1615488 0 竜王戦 2020/11/10 17:54:00 2021/07/20 08:34:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201110-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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