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まさかまさかの「チーム西山」ドラフト指名[山口恵梨子の将棋がちょっと面白くなる話]

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 8月に日本将棋連盟から受け取った1本のメールから、その後の数か月、私の生活は激変することになりました。

 「第2回女流ABEMAトーナメントにつきまして」と題されたそのメール。

 ABEMAトーナメントは、チェスでよく使われる「フィッシャールール」で行われる“超早指し”の非公式棋戦です。

 フィッシャーというのは、対局者に持ち時間が与えられ、1手指すごとに一定時間が残りの持ち時間に補充される時計のルールなのですが、ABEMAトーナメントでは最初の持ち時間が5分、1手指すごとにわずか5秒の補充というメチャクチャ厳しいレギュレーション! 序盤戦は持ち時間を増やすために両者、目にも止まらぬ速さで進んでいきますし、最終盤なんかはほぼ1手5秒以内で指すハラハラドキドキの展開に…。棋士からすれば読みの速さと正確性、直感力が問われる上、視聴者の立場からすればめちゃくちゃエンタメ性の高い大会と言えます。

MCや聞き手の仕事依頼かなと思っていたら…

 この大会、羽生善治九段の着想をもとに生まれ、男子は2018年に第1回を開催。第3回から1チーム3人の団体戦形式に。昨年、個人戦で第1回の大会が開かれた女流トーナメントも、今年からトップの女流棋士をリーダーに、1チーム3人で戦う団体戦になると聞いていたのですが……メールを読み進めていってビックリ!

 し、指名されている。しかも、西山さんに!

 いや、正直、最初はてっきりMCとか聞き手のお仕事依頼なのかなと思っていたのですが、西山朋佳女流三冠率いる「チーム西山」の中に何と私の名が! しかも、上田初美女流四段、そして監督の藤井猛九段というそうそうたるメンバーと一緒に!

「ほんわか」西山さん、「強いお姉さん」上田さんとチーム結成

 西山さんとは、彼女が奨励会で三段昇段を決めた直後の6年前、数か月間だけ研究会で教えていただいたことがあり、ほんわかしておしゃれで 可愛(かわ) い女の子という印象を持っていました。しかし三段リーグの戦いが始まると、次第に交友がなくなり、将棋会館ですれ違っても話すことなく会釈のみという間柄でした。

「憧れのお姉さん」の上田女流四段。困った後輩を助けてくれる優しい人です
「憧れのお姉さん」の上田女流四段。困った後輩を助けてくれる優しい人です

 上田さんとの初めての出会いは、私が小学生の時。同じ道場に通っている「将棋がめちゃくちゃ強い憧れのお姉さん」と「数少ない後輩女子小学生」という関係でした。上田さんが男の子よりも強くて、どんな時も女子を守ってくれるので、男性9割という環境でも、私は安心して将棋を続けていくことができました。ただ彼女が結婚してお母さんになってからは、交友がなくなり、こちらも将棋会館ですれ違っても会釈のみという間柄でした。

 そんな3人がチームになりました。

 西山さんによると、ドラフトでは「自分が公式戦で勝ったことがない人」というコンセプトで選んだそうなのですが、それはそれで接点がなさすぎて、メールを受け取った後も、どうしようかな、とモジモジしていたのですが(基本、おとなしくて人見知りなので…)、西山さんと藤井先生が動いてくださいました。

チーム運営に奔走した西山さん、心の中で「一生推します!」

「尊敬する存在」の西山女流三冠。タイトル戦が続く過密日程の中、チーム運営に奔走してくれました。これからも全力応援します
「尊敬する存在」の西山女流三冠。タイトル戦が続く過密日程の中、チーム運営に奔走してくれました。これからも全力応援します

 西山さんはグループで会話ができる連絡網を作ってくださり、練習やチーム動画の打ち合わせなどの段取り、そしてチームTwitterの運営もてきぱきと。さらに、監督の藤井先生がお忙しい時には、私たちのコーチングまでしてくれました。ご自身でもフィッシャールールの練習をしつつ、女流公式タイトル戦が続く過密日程をこなしながらです。

 「女流トップを走る努力家で尊敬する存在」。自分自身、西山さんのことをいつの間にか、遠い存在というか、概念的な存在として捉えてしまっていたのかな、と思いました。「尊敬する努力家」というのは今でももちろん、変わらないですけど、チームメートとして感じたのは、情に厚くて、賢さゆえの優しさを持つすてきな女性だということでした。

 いまや「好きすぎて西山さん一生推せる…」と思っているんですが、チームが解散しても言い続けたら、重すぎる愛情表現は負担になりそうなので、心の中で (ひそ) かに全力応援していきます。

藤井猛先生の熱血指導、奥様には手料理までふるまってもらい

勢ぞろいした「チーム西山」のメンバー。(左から)私、上田女流四段、西山女流三冠、監督の藤井猛九段
勢ぞろいした「チーム西山」のメンバー。(左から)私、上田女流四段、西山女流三冠、監督の藤井猛九段

 「監督を引き受けたからには、ちゃんとやるから」

 そうおっしゃていただいた言葉通り、藤井先生にはオンラインでの将棋指導から、ご自宅で開催する研究会まで大変お世話になりました。

 チームが結成されてからは完全に師匠と弟子3人の関係だったと思います。作戦の考案から具体的な攻め方、受け方まで的確な指導をしていただき、数えてみると私はこの数か月で19局も指していただいていました。感謝しかないですし、トップ棋士である藤井先生にそこまでの時間を割いていただいたということで、恩返しの方法は勝つしかありません。予選、準決勝をご覧頂くと他のどのチームよりも全員必死な雰囲気だったと思います。

 小学生の頃、私が道場で将棋を指す時は、アマ四段の父が必ず後ろで腕組みをしながら観戦していたのですが、チームの将棋を見守る藤井先生の表情を見て、その時の父を思い出しました。他のどのチームよりも温かく、優しさゆえの厳しい言葉をたくさんいただきました。宝物です。

 そして、もうお一方。藤井先生の奥様です。ご自宅での研究会の際は、「遅くなったからいいわよ!」と手料理をふるまっていただきました。前菜から出していただくフルコース形式で、ご家族で行ったレストランのレシピを完全再現されたサラダが絶品でした。藤井先生の奥様もチーム西山の一人でした。

上田さんと作戦を共有、決勝進出のチーム西山に注目を

 私は去年の第1期白玲戦から使う戦法を振り飛車から居飛車に変えて戦っているのですが、今回はその居飛車が早指しで指して勝てるレベルになっていないということで、チーム全員と相談した上で予選、準決勝では振り飛車を使うことになりました。いくつかの作戦は上田さんと共有して同じものを使っています。上田さんについてもたくさん書きたいんですが、詳しくは彼女が書かれている コラム を読んでくださいね。

 今も昔も、困った後輩を助けてくれる大好きな優しい人です。

 女流ABEMAトーナメントは12月上旬まで続きます。里見香奈女流四冠率いるチーム里見を破り、決勝進出を果たしたチーム西山は、果たして優勝をつかむことができるのか。

 チーム西山、そして私が心から信頼している、西山朋佳女流三冠、上田初美女流四段、藤井猛九段の公式対局の応援をどうぞよろしくお願いします。

プロフィル
山口 恵梨子( やまぐち・えりこ
 日本将棋連盟所属の女流棋士。堀口弘治七段門下。16歳で女流棋士となり、2010年に初段、16年二段に昇段。白百合女子大学卒。将棋が好きな人のためになる情報満載の「 女流棋士 山口恵梨子ちゃんねる 」をYouTubeに開設。ツイッターは @erikoko1012
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使い方
2556706 0 竜王戦 2021/11/29 13:54:00 2021/11/29 14:00:04 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/11/20211126-OYT8I50055-T.jpg?type=thumbnail

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