藤井竜王の「6分」に感じたすごみ、高田四段のタピオカドリンクに見た勝負師の感性[観る将が行く]

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 藤井聡太竜王への挑戦権をかけた第35期竜王戦決勝トーナメントが幕を開けた。読売新聞オンラインでは今期も“ () る将”の担当記者が竜王戦の現場で目撃した棋士たちのドラマをつづっていく。

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口をつけなかった? タピオカドリンク

タピオカドリンクを手に、対局室に現れた高田四段
タピオカドリンクを手に、対局室に現れた高田四段

 読売新聞オンラインの竜王戦担当になって、もう3年になるが、飽きるどころか、最近はどんどん沼にはまっていく自分を感じている。

 なにせ、魅力的すぎるのだ。勝つか負けるか、すべては自分次第。そんな厳しい世界で生きる「棋士」という人たちが。

 将棋担当歴で言えば自分と“同期”にあたるカメラマンのWくん――将棋ファンのみなさんは彼の名前をご存じだろうが、このコラムでは当初からイニシャルにしている――も多分、同じ気持ちだと思う。

 先日、ゲスト出演した読売新聞のポッドキャスト番組「新聞記者 ここだけの話」でも、高田明浩四段と「タピオカドリンク」について熱く語っていた。

 舞台は今期の竜王戦ランキング戦6組決勝。勝てば決勝トーナメント進出が決まる大一番で、しかも相手は同じ19歳の伊藤匠五段。藤井竜王と同い年の若手同士の激突とあって注目を集めたこの対局に、高田四段は朝、かなりビッグサイズのタピオカドリンクを片手に現れた。

 棋士は対局中の栄養補給に自分の好きな飲み物やおやつを持ち込むことができる。タピオカというのもいかにも19歳らしい選択だ。ただ、Wくんがカメラを向けて驚いたのは、すでにストローもさしてあるタピオカドリンクに、ほとんど、いや、おそらく一度も口をつけた形跡がなかったことだ。ラベルを見ると、どうやら、新宿のルミネで購入したものらしい。

 「新宿から千駄ヶ谷の将棋会館までそれなりに時間かかりますよね。その間、口をつけないって、結構すごいことだと思うんですよ」と力説するWくん。なるほど、確かに。自分が好きな飲み物ならなおさらだ。会館に着くまでに一口、二口は飲みたくなるだろうし、なんなら、飲み干してしまうかもしれない。

 選ばれたトップ棋士しか出られない竜王戦本戦出場、ランキング戦優勝をかけた大一番。高田四段はどんな心境でタピオカドリンクを持って対局に向かったのか。その日は大熱戦の末に敗れたため、声をかけることはできなかったそうだが、Wくんは高田四段の勝負師としての独特の感性を感じたのだそうだ。

Wくんがゲスト出演したポッドキャスト番組はこちら

ラジオ体操第一と第二「両方で6分ですから」

インタビューに答える藤井竜王
インタビューに答える藤井竜王

 取材をしていて、さりげない言葉に勝負師としてのすごみを感じることもある。藤井竜王はその代表格だ。

 先日、竜王戦本戦開幕に合わせ、読売新聞オンライン用の動画インタビューを撮影したときのこと。将棋漬けの毎日を送る藤井竜王の目下の課題は体力作りなのだそうで、最近は「毎日、家で体操をしています」という話題が出た。

 どんな体操なのか気になったので、撮影が終わった後に聞いてみたら、ラジオ体操を気の向いた時間にやっているのだという。

 「第一ですか?」と重ねて問うと、藤井竜王は穏やかな表情で「いえ、第一と第二両方です」と答えてくれたのだが、その後の一言にハッとさせられた。

 「両方で6分ですから」

 ! 子どもの頃から慣れ親しんでいる国民的体操なのに、恥ずかしながらその所要時間というものを意識したことがなかった。ネットで調べると、確かに「両方ともたったの約3分」「短い時間で全身運動」などと書かれている。

 以前、藤井竜王が運動不足解消に散歩を始めたものの、「行った先から帰ってくるのが面倒」という理由ですぐにやめたと聞いたことがあるが、なるほど。できる限り、無駄なく体を動かしたいと考えれば、ラジオ体操にたどり着くのも納得できる。そして他の時間は……。

 対局室で盤に向かう藤井竜王の鋭い目を思い出すと同時に、自分にとって、これほどまでに意味のある「6分」は存在するだろうか、と思った。

丸山九段の食事、大橋六段のスーツの色…本戦から目が離せない

大きな扇子がトレードマークの丸山九段。食事に何を注文するかも注目の的だ
大きな扇子がトレードマークの丸山九段。食事に何を注文するかも注目の的だ

 その藤井竜王への挑戦権を争う本戦出場棋士たちも、個性派ぞろいだ。

 将棋へのストイック過ぎる姿勢から「軍曹」と呼ばれる永瀬拓矢王座に、おしゃれでは他の棋士の追随を許さない佐藤天彦九段。丸山忠久九段は食事の注文でも毎回、ファンを沸かせる大食家だし、目下、藤井竜王に4連勝中の「藤井キラー」大橋貴洸六段はスーツの色でも注目を集める。

 まるで漫画の世界を現実に持ってきたような顔ぶれだが、その個性も、盤の前で頼れるのは自分一人という厳しい勝負の中で、それぞれがたどり着いた勝負師としてのこだわりに違いない。

 ついに本戦が開幕した今年の竜王戦。最強の勝負師たちはどんな熱いドラマを将棋ファンに見せてくれるのか。“読売竜王戦チーム”では、勝敗を超えた棋士のすごみ、魅力を少しでも多く伝えられたら、と思っている。

藤井竜王へのスペシャルインタビュー(ポッドキャスト版)

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