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    読売KODOMO新聞のイベントやコンテストを告知します。

    書き下ろし「奇怪BOX」第2話…12歳の文学賞

     小学生限定(げんてい)の小説コンクール「12歳の文学賞」の募集が今年も始まりました。

     KODOMOページでは、2012年に大賞に輝いた西堀(にしぼり)凛華(りんか)さんと、優秀賞を獲得した仲川(なかがわ)晴斐(はるひ)くんが、中学1年生になった昨年夏に読売KODOMO新聞のために書き下ろしてくれた小説を紹介しています。

     今回は、西堀さん作「奇怪BOX」の第2話。タワー爆破事件で、多くの命を救った男性とは……。

     ・奇怪BOX第1話「ハエトリソウ」はこちら

     ・仲川くんの「知らぬが仏」はこちら(第1回 第2回 第3回 第4回

     ・審査員を務める作家のあさのあつこ先生直伝!「小説を書く6か条」はこちら

     

    奇怪BOX 第2話 モンタージュ
    • 絵・岡本かな子
      絵・岡本かな子
     1か月前に起こった、とあるタワーの爆破事件。規模は極めて大きく、10キロ・メートル離れた所からでも、その一部始終が見てとれる程だった。私たち警察はどれだけの犠牲者が出たのかと覚悟していたのだが、不思議なことに負傷者はゼロだったのだ。助かった人たちに話を聞くと、みな口を揃えて言った。 
     「逃げ道を教えてくれた人がいて、助かったんです」
     くわしく聞いてみると、爆発でパニックになっている時に現れた男性が、手早く誘導してくれたのだという。しかしその男性は、気付いたときにはいなくなっていたと……。何百人もの人が、「ある男性」によって助けられたというのだ。
     警察はその男性に感謝状を贈ることを決め、捜し出すことにした。居合わせた人たちから特徴を聞き、モンタージュ写真を作成。顔のパーツ1つ1つにつき、何百という種類の中から足し算のように組み合わせていく。
     「完成しましたよ!」。捜査員の声がせまい執務室に響く。私は飛びつくようにパソコンの画面をのぞいた。
     角張った輪郭、二重まぶた。鼻はけっして高いとは言えず、唇は薄め。眉は濃く、短髪は薄い茶色。パーツを組み合わせたとは思えない程の完成度だ。これならすぐに見つかるだろう。
     かくして、このモンタージュ写真は一般に公開された。ああ、どんな男性なのだろう。一言礼を言いたいという人もたくさんいるし、早く見つかると良いな、と思っていた矢先、1人の老人が私のもとを訪ねてきた。
     「これを見てください」
     老人が出した小さな写真には、モンタージュ写真そっくりの男が写っていた。私は椅子から飛び上がり、「知っているのですか!」と叫んだ。すると老人は写真をしまい、「私の息子です」。
     私は「息子さんは今どこに」とつめよった。が、老人はゆっくり首を振り、「あちらの世界に」。 
     私はしばらくその言葉の意味がわからなかったが、やがて理解した。
     「正義感の強い子でしてね。でも2年前の爆破事件で……。みなさんに自分と同じ思いをさせたくなかったんでしょうね……」
     私たちは壁に貼られたポスターのモンタージュ写真を凝視した。そういえばモンタージュの彼の目はどことなく憂いをおびていた。

     

    モンタージュ
     さまざまな像をつなぎ合わせて1つの画面を作ること。警察では、事件の目撃者の声などを参考に、複数の資料写真を合成し、捜索対象者に近い顔を作ることがある。

     

     次回、奇怪BOX第3話は「山川病院」です。公開は8月7日の予定です。

     

     「12歳の文学賞」は、9月30日まで募集中。詳しくは公式ホームページへ。

    2014年07月31日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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