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    【俺はググらない】なんで勉強しなくちゃいけないの? 油井亀美也の回答

     読売KODOMO新聞の5月31日号で始まった新コーナー「俺はググらない」。読者の素朴な疑問に記者がグーグルに頼らず足で調査して答える企画です。紙面には載りきらなかったインタビューの詳報をお伝えします。

     宇宙飛行士の油井亀美也さんに今回のテーマ「なんで勉強しないといけないのか」という質問をぶつけてみると……

    • 油井亀美也さん
      油井亀美也さん

     実家がレタス農家で、子どもの頃は宿題よりも先に家の手伝いをするように言われていました。出荷用の段ボール箱を300個作るように言われたり、春に害虫や雑草を防ぐマルチシートを畑に張ったり。小学生のときは夏の間は家の手伝い、冬はスピードスケートをやっていてなかなか忙しかったですね。

     宇宙飛行士になりたいというのは小学3、4年生くらいから思っていました。宇宙に関する勉強は誰に言われるでもなくやっていましたね。天体望遠鏡で星を見たり、宇宙論に興味を持ってそういう本を読んだり。でも、それ以外のことは全然できませんでした。漢字テストなんて何回0点を取ったことか。

     勉強する意味は、最適な判断を下せるようになるためだと思います。生きているというのは判断の連続です。たとえば文房具を買うときに何を買うか。おこづかいで効率よく買うための正しい判断をしないといけない。多くのことを知っていれば知っているほど、最適な判断を下せるようになると思います。

     宇宙飛行士の場合、宇宙船が壊れたらどうすればいいかを知っておく必要があります。たとえばこの表示が出たときはどこが壊れているのかを判断し、そこを修理するためにはこの道具を使えばいい、ということを素早く判断します。命に関わりますから。しかも宇宙ステーションは1秒間に8キロ進んでしまう。どんどん状況は変わるわけです。

     でも宇宙船の機械のことだけ知っていればいいというわけでもありません。宇宙船に一緒にいる日本人以外の仲間と連携するために外国の言葉や文化も学ぶ必要があります。言葉や文化を知らないと行き違いが生じ、間違いが起こる元になるかもしれません。

     私自身は英語もロシア語も苦手でした。宇宙飛行士になる前、自衛隊でパイロットをしていましたが、アメリカで訓練を受けたときはその苦手な英語で受講しなければなりませんでした。そのときは若かったので気合で乗り切りました。

    ロシア語を勉強したのは宇宙飛行士になることが決まった後。40歳を過ぎて、もう若くないので気合では乗り切れませんでした。本を見ながら文法を覚えるのは好きではなかったので勉強し始めて1年間、なかなかロシア語の力が伸びませんでした。そこで、何のためにロシア語を勉強するかを考えたのです。それは、人とコミュニケーションを取るため。私は人と話をするのは好きなので、好きなことであれば力を伸ばせるだろうと考え直しました。

     JAXAの職員やパーティーで知り合ったロシア人など、ロシア語をしゃべる人をかたっぱしからつかまえて「私と友だちになってくれ」と言いました。その人たちとロシア語でスカイプやメールのやりとりをして、とにかくロシア語を使ってみたのです。そんな風に気の持ちようを変えるだけで、1年間勉強しても成果が全く出なかったロシア語が急激に伸びたんですね。どうせやらなくちゃいけないことだから、好きになる方法を考えたのです。

     勉強の仕方にはパターンがあると思います。一つのことを好きになると、そこから関連性を見いだして他のことも勉強するようになるんですね。私の場合、それが「宇宙」でした。宇宙のことを勉強すると、物理の勉強をするようになります。そうすると物理を支えている数学も勉強します。宇宙のことを誰かに説明するのに国語の勉強をしていないとうまく伝えられません。また、言葉で伝えられない宇宙のすばらしさを伝えるのに音楽や絵画といった芸術も勉強するようになります。一番好きなことをより深く理解するために必要な能力が広がっていくのです。それに好きなことを勉強するのであれば、どんなに大変でも大変とは思わないものですから。

     とは言っても、私自身も国語や美術は小学校のときはあまり勉強していなかったので、やっておけばよかったなと思っています。どうしても嫌いな科目は、それが得意という人に「どういうところが楽しいの?」と素直に聞いてみるのもいいかもしれません。

    2018年05月31日 16時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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