【俺はググらない】「どんな結果に終わっても、恋は人生の糧」…詩人・文月悠光の回答

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 8月30日号のKODOMO新聞7ページで掲載した、読者の素朴な疑問に答えるコーナー「俺はググらない」。今回のテーマは「好きな人に好きになってもらうにはどうすればいいの」。

 回答者は若手女性詩人で今年2月にエッセイ「臆病な詩人、街に出る。」を出版するなど活躍の場を広げている文月悠光さん。慎重に言葉を選びながら、ときに自分の経験も交えて語ってくれたその回答は…。

慎重に言葉を選びながら語ってくれた文月さん(撮影:キムラタカヒロ)
慎重に言葉を選びながら語ってくれた文月さん(撮影:キムラタカヒロ)

 私は子どもの頃、この世界に自分を好きになってくれる人がいるのかと計り知れない疑問を抱えていました。そんなことが起きたら奇跡じゃないか、って。10代前半の自分の気持ちを思い出してみると、そんな大きな不安感の中で生きていたと思います。

 その反面、小学生の時は純粋に恋愛への憧れを持っていました。お手本は少女漫画。漫画の主人公のように、誰かに「君はステキだ」と承認されたいと願っていました。今ではそういった欲求はストレートすぎて(まぶ)しく感じますが。

 大人になっても、恋愛に難しさを感じている人は少なくないですよね。「相手の気を引く方法」といったマニュアル本がちまたにあふれています。でもマニュアルで相手の心をつかむということは、「借り物の言葉や態度で相手の気を引く」ことになります。「相手はこんな人だから、こういうふうに言うと喜ばれるかな」ならいいと思うのですが。借り物の言葉でうまくいったとしても、あとあと何らかの形で関係に響いてくるのではないでしょうか。

 自分が相手に認めてもらいたいなら、まずは自分が相手を認めてあげるといいですね。たとえば、相手の冗談に笑う、相手の小さな言葉を覚えておく、など「あなたのやっていることに興味があるよ」と示し続ける。相手の欠点が見えてきたときも「そういうところも含めて好きなんだよね」と受け入れること。「この人はこういう人」という思いこみにしばられず、相手と向き合うことが大事だと思います。

 …でも、実は私自身、そういうアプローチができる女の子になりたいと思いながら、教室の隅っこから好きな相手を観察していたタイプでした。相手は自分に興味なんて持つはずがない、と決めてかかって、遠くから観察していたんです。嫌われるのが怖かったんでしょうね。

 だから、10代の私の恋は片思いばかりでした。片思いって、自分一人の中で完結できますよね。勝手に好きになって、冷めるのも自由。相手を巻き込まないので、周りにも迷惑をかけなくて済みます。

 それでも自分の中に思いをしまっておくのが苦しくなると、告白することもありました。付き合いたい、関係性を変えたい、ということではないんです。ありがちですが、「自分がすっきりしたい」という勝手な都合による行動でした。相手の気持ちを推し量らないと関係を壊してしまうこともあると気づいてからは、告白にとても慎重になりました。

 そんなふうに自己完結していた自分からすると、ご相談者さんの「好きな人に好きになってもらいたい」という姿勢そのものが、すでにすばらしいです。自分の内側ではなく外側に意識が向いているということですから。

 私がそういう意味で自分の外側に本当に意識が向くようになったのは、中学生になってから。それまで私は、人間関係って「教室であらかじめ決められた席順」だと思っていました。自分の努力で人の気持ちを動かせるなんて信じられなかった。

 中学3年のとき、運動が得意な人気者の男の子を好きになりました。最初は自分と違う世界の人と思っていましたが、歌詞を書くのが好きな人で、互いの書いた詩を交換したり趣味の話をしたりするうち話が弾むようになったんです。それで毎日電話やメールをするようになりました。

 でも相手には彼女がいました。その彼女のことをいかに好きか聞かされたり、どんなプレゼントを贈るべきか相談されたり、都合のいいポジションですよね。結局恋は実りませんでした。でも、自分が動くことで距離を縮めたという経験は、自信につながりました。

 また、「どうしたら好きになってもらえるか」と考えるご相談者さんは、一方ではとても努力家なのだと思います。恋愛は相手の気持ちを操作できないから、努力が実らないときもありますよね。でもだからこそ、相手も自分を見守っていてくれたと知ったときは、満たされた気持ちになります。その経験は、相手と別れた後にも大切に残るものです。

 たとえ相手と気持ちが通じ合えなくても、恋をして「この人と親しくなりたい」と思えるだけで幸福なことだと私は思います。一人でいたときは抱かなかった感情が、胸に湧いてきたわけですから。

 それに、恋をすると自分自身も知らなかった自分に気づく場面があるんですよね。私は長い間、自分はマイペースで相手に干渉しないタイプだと思っていました。でも恋人ができると、相手にいろいろ教えてあげたい気持ちが強いことに気がつきました。これは恋をしなければ知らなかった自分の一面でした。

 過去の恋愛の反省が今の自分をつくってくれました。私にこんな素敵(すてき)な気持ちを抱かせてくれてありがとう、と相手へ感謝する心を持ち続ければ、どんな結果に終わっても、恋は人生の糧になると思います。

39451 0 お知らせ 2018/09/03 20:00:00 2018/09/03 20:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180903-OYT8I50084-T.jpg?type=thumbnail

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