【俺はググらない】恋愛の参考になる少女漫画は…少女漫画研究家・藤本由香里

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 8月30日号のKODOMO新聞7ページで掲載した、読者の素朴な疑問に答えるコーナー「俺はググらない」。今回のテーマは「好きな人に好きになってもらうにはどうすればいいの」?

 恋愛と言えば少女漫画。では、少女漫画は何か参考にならないだろうか。そこで、少女漫画に詳しい明治大学教授の藤本由香里さんに話を聞いた。その回答は…。

少女漫画に詳しい明治大学教授の藤本由香里さん
少女漫画に詳しい明治大学教授の藤本由香里さん
『君に届け』〈1〉 椎名軽穂著
『君に届け』〈1〉 椎名軽穂著

 好きな人にたった一人の相手として自分を選んでもらう、というのはとても難しいこと。世界中にたくさん人がいる中で、1対1で選び合った相手と互いに一致するのは奇跡みたいな話ですよね。だからこそ、恋愛というのは文学作品や漫画で多く取り上げられているわけです。

 少女漫画においては、最終的に恋が実ることが多いです。逆に言うと、それだけ現実では恋は実らないことが多いため、漫画ではみんなが憧れるような恋愛が求められるのでしょう。主人公が好きな人とカップルになれば、もちろん、めでたし、めでたし、なのですが、主人公がステキな彼と結ばれるということは、その彼が好きだった他の人は、みな失恋しているということですよね。まずはそういう認識を持っておくことが必要だと思います。

 さて、参考になる少女漫画ということですが、私がすすめたいのは「君に届け」(椎名軽穂、集英社)です。今回相談のあった小学生より年齢が上の高校生が主人公ですが、とてもピュアな物語です。恋愛に限らず人と人の関係についてヒントをくれる作品だと思います。

 主人公の黒沼爽子は、見た目や雰囲気が暗く、小説「リング」に登場する幽霊の「貞子」と名前が似ているというので貞子と呼ばれている、クラスでちょっと浮いた女の子。爽子とイケメンの風早翔太との恋愛が中心に描かれます。

 この爽子がものすごくピュア。浮いている存在ですが、決していじけていなくて、素直な気持ちを持った女の子です。毎日を自分なりに楽しく生きて「人には親切、モノには丁寧」。ほんとうにいい子なんです。

 そういう態度で生きていれば、恋人として好きになってもらえるかはともかく、少なくとも嫌いになる人はいないでしょう。魅力的で人に好かれやすくなれば恋愛がうまくいく確率も上がりますし、そうでなくても幸福な人生を送れるでしょう。爽子の生き方はそういう意味で参考になるところが大きいと思います。

 しかし、物語の最初の方で爽子はクラスメートに自分のことを分かってもらえず、みんなに避けられています。絵のタッチからあまり深刻には見えませんが、はっきり言って、いじめに近い状態です。このスタート地点は彼女にとってはなかなかつらい状況ですが、ここから彼女は、女友達や憧れの風早くん、恋のライバルなどと関係を作っていきます。

 その中でも単行本の第2巻で描かれる女子2人と親友になるエピソードは、とても心が洗われるものです。極端なことを言ってしまえば、彼女の良さが他の人に伝わるというこのエピソードの重要さに比べれば、風早くんとの恋愛は成就してもしなくても、実はどうでもいいことだと思えます。彼と仮にうまくいかなくても、親友ができて自分を受け入れてもらえた経験があれば、それだけでいい。異性で気の合う人(もちろん同性でもいいですよ!)もそのうちにできるでしょうし、たとえカップルにならずに生きていっても充実した人生が送れる。

 人づきあいの基本は小学生の時に作られると思います。初めは誤解され避けられていた爽子が、どうやっていろんな人間関係を築くのか、そんな時期の小学生が読んでも、決して損はしないと思います。

 もう1冊紹介するとしたら、「高校デビュー」(河原和音、集英社)もオススメ。高校に入りたての女の子がモテるための秘訣(ひけつ)を男の子に教えてもらう物語ですが、体育会系のノリでコーチを頼んで恋愛の特訓をするのが楽しい作品です。「君に届け」より恋愛に比重が大きく、こちらも参考になるのではないでしょうか。

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40247 0 お知らせ 2018/09/07 05:20:00 2019/06/06 13:02:37 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180905-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

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