【俺はググらない】「地球型」とは違う生物がいてもおかしくない…小林憲正・横浜国大教授

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 横浜国立大学の小林憲正教授は、生命の材料がどのようにできたかを実験室で解き明かす研究をしています。地球以外に生命が発見されれば、その生命との比較で地球の生命がどのようにできたのかも理解が進むでしょう。「宇宙人はいるか」という問いは、「我々はどうやってできたのか」という問いにもつながっているのです。

太陽系にも生命がいる可能性は十分

横浜国立大学・小林憲正教授
横浜国立大学・小林憲正教授

――生命が誕生するためにはどんな条件が必要なのでしょうか。
小林 今考えられているのは、(1)液体の水(2)有機物(3)生きていくためのエネルギー源、この三つです。有機物というのは生物の体を作る材料、具体的にはたんぱく質のもとになるアミノ酸などですね。エネルギー源は、太陽の光や火山活動の熱などです。これらの条件を満たす場所は、太陽系の中だけでも10か所くらいあります。その中には宇宙人と呼べるような知的生命はいないでしょうが、生命がいる可能性は十分あります。

――太陽系の中のどんな場所にいると考えられているのでしょうか。
小林 有力なのは、火星の地下です。また、エウロパやエンケラダスなどの木星・土星の衛星は、地表だけではなく地下に液体の海が広がっていると考えられている星があります。また、金星の地表は気温が高く、生物がいるのは考えにくいですが、金星の上空には気圧がほぼ1気圧で温度も1~100度程度のところがあります。ここには水と硫酸からなるエアロゾルが存在し、上空に浮いている生物がいるかもしれないという説もあります。

 ただ、これらに高等生物はいないと考えられています。火星は40億年ほど前には地球と同じように海があったと言われています。しかし、どこかの時点で干上がってしまい、今のような岩だらけの地表になってしまいました。これだけ大きく環境が変わってしまうと、もしも40億年前に生命が生まれていたとしても、地球の生命と同じように高等生物に進化するのは難しいでしょう。

RNAでない分子で自己複製する生物がいてもいい

――小林先生は、宇宙人はいると思いますか。
小林 生命ができるところまでいく星はいっぱいあるのではないでしょうか。1995年以降、太陽系外にたくさん惑星が見つかっています。銀河系内には数千億個の恒星がありますが、そのほとんどが惑星を持っていると考えられています。先ほど挙げた条件を満たす、生物がいる可能性のある領域(ハビタブルゾーン)にある惑星も珍しくないでしょう。あとは液体の水からなる海が、ある程度の期間、長続きする環境にあれば、生命が生まれ、長く存在することは十分考えられます。

 ただ、一般的には生命が高等生物にまで進化するのは難しい部分があります。たんぱく質とRNAが結びついて生命が誕生し、細胞核ができて、多細胞になり、知能を獲得して……という進化の過程は、いずれも相当低い確率でしか起きないと考えられます。しかし、地球と同じようなことが地球でしか起きないと考えるのは、「地球ファースト」な考え方に過ぎません。地球型の知的生命はあくまでひとつの例であり、違った条件では別の高等生物ができる可能性もあるのではないでしょうか。

 たとえば、地球の生命は自分を複製するためにRNA、DNAを使っていますが、RNAではない分子を使っている生物がいてもいいと考えています。

――具体的にはどういうことでしょうか。
小林 生命の材料になるたんぱく質は、アミノ酸がつながったものです。アミノ酸は宇宙でもどこでも作ることができますが、RNAやDNAといった核酸の場合、そうはいきません。これをどうやって作ったのか、が問題になっています。

 私は「がらくた仮説」を提唱しています。たんぱく質やRNAといったものがきれいにできたのではなく、それらを構成する分子ががらくたのように雑多に集まり、まずは長い時間、その状態が維持されるような物質になったのではないでしょうか。最初はがらくたのようにいろんなものが含まれ、何千年も維持している間に、その中で有用なものが選ばれるという過程があったと考えています。それが地球生命の場合、たまたまRNAだったのではないでしょうか。

 逆に言えば、他の星ではRNAでないものが自己複製を担う方がその星の条件下では効率良く稼働できるのであれば、それが選ばれている可能性もあると思います。

 どうして、がらくた仮説を唱えているかというと、アミノ酸を作ってつなげ、それをRNAと結びつけ……というふうにステップがいくつもある場合、それがうまく起きる可能性って限りなくゼロに近づいてしまうんですよ。むしろ、いろんな元素があるところにエイヤッと放射線を当てるなり何なりして一気にがらくたも含んだ分子を作り、その中から優れたものをチョイスする方ができた可能性が高いからです。

宇宙を漂う「生物の材料」を調べる研究も

――そうした「がらくた」はどこでできたのでしょうか。
小林 宇宙でも地球の大気でも起こりえると思います。せまい空間に元素が集まり、そこに放射線などで高いエネルギーを与えることで作れるからです。星と星の間の星雲でそういったものがつくられ、彗星(すいせい)に取り込まれて地球に降ってきたのかもしれないし、地球の大気の中でできたのかもしれない。

――宇宙でできた生物の材料が、本当に壊れることなく地球に降ってくるなんていうことがあるんですか。
小林 それを調べるため、「たんぽぽ計画」というものが進んでいます。これは地上から400キロの高さを回っている国際宇宙ステーションで宇宙を漂うチリをつかまえて、その中にアミノ酸が含まれているかを調べる計画です。生物の材料が宇宙を飛んでいる様子を、わたげを飛ばすたんぽぽになぞらえて、そう呼んでいます。今、とらえたチリの分析が進んでいるところです。

――もしもからだの材料から違う生命が宇宙にいたら、驚きですね。
小林 生物をつくるにはDNAが必須だ、というアタマでいると「DNAがどういう条件でできるかを探そう」という発想になりがちですが、実はそれでいいのかは誰にも分かりません。

 ひとつ、面白い例があります。系外惑星は天文学者が数十年間探していましたが、なかなか発見できませんでした。1995年、初めて系外惑星を発見したのはその道の専門家ではありません。このとき見つかったのは、木星ほどの大きな惑星でした。それまでの常識では木星のような大きな惑星は地球よりも遠いところを回っているはずでしたが、この惑星は、地球どころか太陽系で最も太陽に近い惑星・水星よりも中心星に近い距離を回っています。公転周期はわずか4日。これまで太陽系をもとにして惑星のでき方の理論をつくってきた専門家たちには、こんな太陽系とは全然違う惑星を想像できなかったのです。つまり、それまでの研究成果に基づく常識にとらわれていては、新しい発見はできません。

――宇宙人がいると分かったら、どんな事態になると想像できるでしょうか。
小林 たまたまちょっと先のレベルの文明であれば、いろいろなことを教えてもらえるでしょうね。かなり遠くにいるでしょうから、直接コンタクトをとることは難しいでしょう。

 ただ、コンタクトをとることが難しくても、「我々は宇宙でひとりではない」ということが分かるだけでも意味があることではないかと思います。人類が世界の中心だという考えは、科学の発展とともに打ち破られてきました。「天が動いているんだ」という天動説は、コペルニクスやガリレオの唱えた地動説に取って代わられました。そのとき中心にいた太陽も、今では銀河系の片隅の星に過ぎないことが分かっていますし、そもそも銀河系のような銀河自体、この宇宙には数千億個あります。惑星も、ほんの30年前は太陽系以外見つかっていませんでしたが、今では数千個が発見されています。生命が他の星に見つかれば、我々は特別な存在ではない、という考えが正しいことがいよいよはっきりします。そうなることで自分たちの存在を客観的にとらえ、謙虚になることができるのではないでしょうか。

【「宇宙人はいるの?」 ほかの人の回答は・・・】

 ◇我が家においでいただき、スキンシップを…詩人・谷川俊太郎さん

 ◇宇宙人は確実に存在する…天文学者・鳴沢真也さん

 ◇宇宙人の見た目は、人間とあまり変わらないかも…山岸明彦・東京薬科大名誉教授

 ◇縣秀彦さん(天文学者)の回答

無断転載禁止
775325 0 お知らせ 2019/09/02 17:25:00 2019/09/10 11:08:03 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190902-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ