【俺はググらない】宇宙人に会えるかどうかは「文明の存続期間」しだい…縣秀彦・国立天文台准教授

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 国立天文台の(あがた)秀彦准教授は、読売KODOMO新聞で以前、望遠鏡の使い方を解説してくださいました(3月7日号)。その縣先生が「科学者18人にお尋ねします。宇宙には、だれかいますか?」という、アストロバイオロジーについて最先端の知見を持つ科学者18人の原稿を掲載した本を編集したことを知り、ここは縣先生にも聞かなければ、と国立天文台へ行ってきました。

縣秀彦・国立天文台准教授
縣秀彦・国立天文台准教授

――宇宙人はいると思いますか。
 今の宇宙論によれば、宇宙は138億年前、ビッグバンによって生まれました。最初は小さな点で、そこから広がっていったわけですから、「宇宙原理」というものが成り立つと考えられています。つまり、宇宙のどこであっても(ブラックホールの中心のような特異点を除けば)同じ物理法則が成り立ち、条件が同じなら起こる化学反応も同じはずです。宇宙を形作る材料となる元素も共通しているはずです。そうであるならば、逆にこれだけ広い宇宙の中で地球にだけ生物が生まれたと考えるのはむしろムリがあるのではないかと思います。

 1995年に系外惑星が発見されて以来、現在およそ4000個が発見されています。このうち、中心星の大きさと距離から液体の水が存在できると考えられる領域(ハビタブルゾーン)にあって、地球と同じ岩石を主成分としており、地球と似た大きさ(半分~2、3倍程度)の惑星は、数え方によっても違いますが、だいたい10個程度あると言われています。これらの惑星の大気を地球からの観測で調べれば、植物がいる証拠がつかめる可能性があります。系外惑星の表面を分光し、大気の成分を調査するのは、まだ実現できていませんが、これからの10~20年で最も面白いサイエンステーマだと考えています。

――宇宙人に会うことはできそうでしょうか。
 それは、我々がどのくらい自分たちの文明を長続きさせられるかにかかっています。

 この分野では大変有名な数式に「ドレイクの式」と呼ばれているものがあります。人類が接触しうる地球外文明の数を推定するための式で、「惑星が存在する確率」「生命が知的生命に進化する確率」などの変数がたくさんあります。これらの変数は今までの研究でおおよそ推測できるものもあればそうでないものもあるのですが、中でも最も決めるのが難しい変数に「文明の存続期間」という変数があります。

 たとえば我々の文明が数百年しか続かなかったとして、ある地球外知的生命の文明も同じくらいしか続かなかったら、138億年間の宇宙の年齢の中でそれらの文明が同じ期間に存在するのは奇跡のような確率になってしまいます。文明が長く続けば続くほど、他の文明と出会う確率も高くなるということです。しかし、我々は人類の文明しか知らないので、宇宙の中で文明というのがどのくらい続くものなのかは分かりません。まずは自分たちの文明を長続きさせることで、「文明の存続期間」の変数を大きくすることはできるでしょう。

 ただ、私も含め科学者は人類の未来に肯定的ではないのではないでしょうか。エネルギー問題、大気汚染、貧富の差などなど、自分のことしか考えない人間が文明を担っている限り、その文明が何万年も続くというのは難しいかもしれません。

4光年離れた恒星の探査計画も

――たとえば地球からそういった星へ行くことは不可能なのでしょうか。
 太陽以外で地球から最も近いところにある恒星はプロキシマ・ケンタウリと言います。この恒星にも惑星があることが分かっています。では、せめてこの星までは行けないものか……と思いますよね。

 しかし、ここまでの距離は4光年。光の速さで行くと4年ですが、もちろん光の速さでは行けません。今のロケットで行くと1万年以上かかります。現実的にはかなり難しいと思います。宇宙で見ればこんなに近い距離にある月にすら、数十年間誰も行っていません。なのにこれだけ離れたところまで莫大(ばくだい)なコストをかけて行くのは難しいでしょう。

 ただ、このプロキシマ・ケンタウリには探査の計画が持ち上がっています。「ブレイクスルー・スターショット」と言って、1辺2cmの超小型探査機をたくさん飛ばし、レーザー光線を当てて光速の数十%まで加速させ、20年ほどかけて惑星の近くまで行きます。探査機が搭載した超小型のカメラで惑星の姿を撮影しようというものです。

 すばらしい計画ですが、技術開発は現状で追いついていません。カメラや通信機をこの計画が可能なほど小さく軽くすることは今のところできていませんし、耐久性の問題もあります。まだまだこれから開発が必要な分野なのです。

――アストロバイオロジーが今後、学問領域や一般の人に対して、どんな影響を与えると思いますか。
 イギリスのある科学館に訪れた人を対象にしたアンケート調査で、どんな分野の研究だったらお金をかけても構わないかを聞いたところ、唯一、もっとお金をかけてでも研究を進めてほしいという回答が多かったのが、生命探査でした。それほど、一般からの興味関心は高い分野です。

 環境問題が全地球規模で叫ばれるなど、現代は閉塞(へいそく)感があり、将来に夢を持ちにくい時代だと思います。その中で、宇宙における生命探査は、希望や夢、探求心をかきたてるアドベンチャーであるという側面があるでしょう。

 また、他の星に生き物がいると想像するだけでも、省みて自分たちの文明を客観的に振り返る目を持つことができるのではないかと思います。先ほども話に出た文明の持続時間を長くするということを真剣に考えるならば、SDGs(持続可能な開発目標)にきちんと取り組むことが必要です。そのモチベーションになるのではないでしょうか。

 学問領域に与えつつある影響は、天文学の位置づけが今まさに変わりつつあると感じています。宇宙論は物理学・数学をルーツに持ち、素粒子論などかなり難しい分野のひとつでした。しかし1995年の系外惑星発見以降、アストロバイオロジーが一気に花開き、天文学の領域に生物学、化学、惑星科学などが参入し、総合科学の様相を呈しています。様々な研究者が参入し、互いに風通し良く議論が進むことで、全く新しい知見が生まれてくることに期待したいと思います。

【「宇宙人はいるの?」 ほかの人の回答は・・・】

 ◇「地球型」とは違う生物がいてもおかしくない…小林憲正・横浜国大教授

 ◇我が家においでいただき、スキンシップを…詩人・谷川俊太郎さん

 ◇宇宙人は確実に存在する…天文学者・鳴沢真也さん

 ◇宇宙人の見た目は、人間とあまり変わらないかも…山岸明彦・東京薬科大名誉教授

無断転載禁止
786917 0 お知らせ 2019/09/10 09:40:00 2019/09/11 12:00:23 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190909-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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