【俺はググらない】意地悪されて「いやだな」と思ったことは、相手も嫌だろうと考えて…渡辺弥生さん

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 そもそも、どうして人は自分がされたらいやだなと感じる「意地悪」を他人にはしてしまうのでしょうか。特に、小学生くらいの時期に意地悪をしてしまう原因はどこにあるのでしょう。それが分かれば、どう対処すればいいかも見えてくるかもしれません。

 発達心理学に詳しい法政大学の渡辺弥生教授に、心理学的な見地から「意地悪」の理由やその対処法について聞きました。

 渡辺教授の回答は…

 人間、子どもの頃は誰しも未熟です。他者の気持ちを推測する心は、周囲のいろいろな人たちと関わる中で、時にはケンカしながら、だんだん身についてくるものです。心理学の立場から言うと、こうした心の発達は三つの側面から捉えられます。1.認知(考える力)、2.行動、3.感情、という三つです。それぞれの面から、人はどうして意地悪をしてしまうのか、詳しく見ていきましょう。

1.認知

 相手のことを考える力は、個人差はありますが発達段階があります。おおよそ7~8歳までは、自分の思考から離れて他人の立場に立つことは難しいものです。たとえば、小1くらいだと、笑っている人を見ると「うれしいんだな」、泣いている人を見ると「悲しいんだな」という表面から相手の考えを推測するくらいの認識しか持てません。ところが、小3くらいになると「笑ってるけど、悲しいのを我慢しているかも」と本音と建て前がずれていることに気づき始めます。そして、小6くらいになると、自分以外のいろいろなクラスメイトの立場に立って考える力もようやく身についてきます。そのため、こうした認知の力が弱いと、自分では良かれと思ってやっているのに、結果的に他人にいやな思いをさせていることがよくあります。

 また、自分で自分のことをモニターする「メタ認知」という能力がありますが、これは小4くらいからできるようになってきます。「自分は今、意地悪なことを言っているな」「こういうことを言われるとすぐカッとしてしまうな」という自分のことを客観的に観察できるようになるのです。そして、自分をモニターするモニタリングができると、それじゃあ、「カッとしないためにどうしたらいいか」と考え、自分をコントロールすることもできるようになります。これに加えて、時間的展望、つまり「この行動をしたら後でどうなるか」という先を見通して考える能力も十分に発達していると、その場の怒りを抑えて、他者にいやな思いをさせるのを思い止まることもできるようになります。

2.行動

 意地悪なことばかりする原因を、行動面から考えることもできます。相手が悪いと思っても、相手に意地悪することではなく、「どうして、**なことするの」と尋ねたり、「@@したほうがいいと思うよ」と冷静に話すことで済むものです。ところが、意地悪ばかりする小学生は、どのような行動をとればうまく解決できるのかわからないことが多く、行動レパートリーが少ないために、問題のある行動ばかりしてしまうことがあるのです。そのため、自分が「相手にこういう気持ちになってほしい」と取った行動も、的確な行動ではなく、裏目に出てしまうこともあります。

3.感情

 意地悪なことはダメだと考える力があっても、いざとなると意地悪な行動をしてしまっていることがよくあります。先に述べた、考える力も、行動もできるはずなのに、どうしてそうなるのでしょうか。これは、正しい行動しようと思っても、悔しいとか、腹が立ったと言った感情が抑えられずに、正しい振る舞いをジャマするからだと考えられます。

 小1くらいから「社会的比較」を始めるようになります。つまり、自分と他人の違いが気になるようになります。運動会のかけっこでも、保育園ではビリでも笑っていられますが、小学校に入ると「あの子に負けた」「ビリになった」ということを気にするようになります。また、大好きだから意地悪をしてしまう、という「反動形成」という心の動きもあります。注意を引きたくて、相手の持ち物を盗んで出方を見る、といったこともしてしまいます。

 中高学年になって、人と自分を一層比較し、クラスの中で自分がどういう位置にいるかが気になってくると、ねたみや軽蔑、「ざまあみろ」という気持ちが生まれてきますよね。これが意地悪につながることも多分にあります。また、思春期に入る前というのは、友だちと「仲良くなりたい」という気持ちと「放っておいてほしい」「自由になりたい」という気持ちのバランスがとれていない時期でもあります。親友が他の人と仲良くしているのを見ると、とられたくないと思って意地悪をすることもあるでしょう。

 このように、私たちの心は不思議です。考える力が弱い、行動レパートリーが少ない、感情が抑えられないなど、いろいろな原因で、素直に、正しい行動が取れなくなることがよくあるのです。

 では、意地悪をされたときにはどういう対応をしたらいいのでしょう。まず、相手の立場に立ちましょう。意地悪なことをされて「いやだな」と思ったことは、相手も嫌だろうと考えて、自分はそういうことをしないという考えを持つことがまずは大切です。

 人間、相手からされるのはいやでも自分がするのはOK、と考えてしまいがちです。それでは、まだ未熟な自己中心的な段階にいることになってしまいます。自分をモニタリングして、意地悪がどうしてダメなのかを考えて、自分はしないようにしましょう。たとえ、意地悪をされても、その場では、いやなことに対しては「それはやめてね」とおだやかに言いましょう。もしもたたかれたら「絶対やめてね」と言うのが良いです。たたき返してはいけません。繰り返すだけで解決になりません。気持ちを穏やかに、望ましい行動をとりましょう。

 小学生は人と関係を築いていく「ソーシャルスキル」がまだ未熟な段階です。意地悪な子はその人自身が悪いというよりは、先ほど見てきたように認知が弱いために相手の気持ちに気が回らなかったり、社会的比較をし始めて感情を制御できなかったり、仲良くしようと思って取る行動が裏目に出ていたりと、やっている行動が未熟な場合が多いと言えます。

 誰かが失敗したりダメな部分が見えてきたりすると、その人全体を否定してしまいがちですが、そうではなくてやり方がダメなのだ、まだスキルを身につけられていないと考えるといいのではないでしょうか。そして、「こうすれば良いよ」と教えてあげましょう。そもそも互いに未熟な段階ですので、「ちょっといやなことを言われたから仲間から外す」ということをしていたら、友だちはできません。その考えだと、自分もいつ外されることにもなりかねません。

 また、何も原因がないのに意地悪をするということはあまりありません。気がつかないうちに自分が相手を傷つけていたことが原因だということもあります。繰り返しになりますが、人は自分勝手になりがちです。トラブルがあると、お互いに、相手が先に何かしたと思ってしまいがちですが、実は、その前に相手が嫌なことを自分でも気がつかないうちにしていた可能性もあるのです。たとえば、消しゴムを取られる意地悪をされたとしましょう。その消しゴムがちょっとかわいいアニメキャラのもので、見せびらかしていた、なんてことはなかったでしょうか?それに腹を立てて取ったのかもしれません。もちろん、だからといって消しゴムを取って良いということにはなりませんが、自分の気持ちを理解してほしいと思ったのかもしれませんね。

 意地悪をされたとき、自分にも非があったかもしれないと思えば「優しくする」というのもひとつの方法になるでしょう。でも、小学生に「優しくしてあげて」と言うのは、実はとても難しいんです。「優しくする」というのは抽象的すぎて、具体的にどうすればいいかよく分かりませんよね。大人の人は、「たとえば優しくできないときはこんな言い方ならできるかな」と、具体的な仕草や言葉掛けを教えてあげましょう。「さびしいのかもしれないから『遊ぼう』って誘ってみよう」とか、具体的な言動を例にとって示してあげることで、ソーシャルスキルを身につけるきっかけを作ることができると思います。

 実はソーシャルスキルトレーニングのための動画をYouTubeであげています。最近は新型コロナの流行で医療関係者が差別され、誹謗中傷の的になる事例がよく聞かれます。これも相手の状況を認知し、相手を思いやる感情を持ち、その感情を伝えるために行動するというソーシャルスキルがあれば解決できるのではないかと考えています。

 医療関係者が「コロナがうつるから離れろ」などと言われるのではなく、「命を守るために頑張ってくれてありがとう」と拍手で迎えられるような社会を作るために、小学生向けの動画を作成しているので、ぜひ見てみてくださいね。

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1245549 0 お知らせ 2020/05/28 09:41:00 2020/05/28 09:41:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200507-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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