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【俺はググらない】お金持ちになるにはどうすればいいの 森剛志さん「お金のエキサイティングな増やし方とは…」

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 甲南大学教授の森剛志さんは、長年「お金持ちとはどういう人なのか」について研究してきました。2004年までは日本では納税額の多い人の個人名を公表していたので、たくさん納税している人=お金をたくさん持っている人にアンケートを取ったり、インタビューしたりして「日本のお金持ち研究」(日経BPM)などの本に研究結果をまとめています。

 今では高額納税者は非公表となったので研究手法は変わりましたが、お金持ち研究は続けています。お金持ちはどういう職業なのか、どんな教育を受けてきたのか、どんな暮らしをしているのか…森教授の研究からは、どんなお金持ち像が見えてくるのでしょうか?

 お金持ちの人の職業は、時代によって移り変わっています。

 高度経済成長期の1960年代、戦後の荒廃から出てきたのは、知恵と技術で起業した松下幸之助のような企業のオーナーです。エレクトロニクスやゼネコン、石油など、まさに重厚長大の産業で、こうした企業が育ちました。

 高度経済成長が進み、田中角栄の「列島改造論」が出てくると、日本のインフラを整備しようと、都市近郊の開発が進みます。田中内閣より少し前ですが、都市近郊の農家に土地を提供してもらうため、1969年、土地売却の税制が変わりました。それまで土地売却の売却益をほかの所得と合算して課税していたのを、土地売却は別立てにして減税することで、土地譲渡がしやすいようにしたのです。ここから一気に土地成り金の出現する時代となりました。

 「土地の値段は上がり続ける」。そんな土地神話がつづきますが、90年代前半のバブル崩壊で土地の値段は下がり始めます。ただ、急に土地成り金がいなくなるわけではなく、そこから10年かかって土地成り金は姿を消していくのです。

 次にやってくるのは「起業家」と「医者」の時代です。高齢化で接骨院等の需要が高まったこと、医療技術の進展で高度な手術もカンタンに受けられるようになってきたことで、特に開業医のお金持ちが増えました。起業家にも通じるのですが、大企業や大学病院で出世していくというロールモデルが過去のものとなり、個人の才覚でお金をかせぐことが新たな「出世」コースとなったのです。起業家については、特に2000年代のITバブルで生まれたIT長者が有名でしょう。

 ところが、2020年代に入った現在、これまでのようなお金持ちの職業の変化とは全く違う、根本的な変化が起きています。お金持ちに対する感覚が変わってきたのです。2010年以降、新自由主義の拡大とともに「お金持ちが極端に大金を持つことを社会が許す」という風潮が生まれてきたのです。これまでは格差にも限度がありました。大企業の役員クラスでも年収が1億円に届かないというケースは普通にありました。しかし2010年以降、グローバル化が進む中で海外企業との競争に勝ち抜くため、経営者のもらう報酬についても高水準な海外の基準に合わせるようになってきました。その典型的な例が、日産自動車のカルロス・ゴーン氏です。

 それまでの日本社会で平等を重んじていたのは、日本のトップ層の大学で教えられる思想が平等を重視していたからだと思われます。戦後のトップスクールの経済、社会科学系の学問では、平等の重要性を説いていました。マルクスとか平等とかが経済学の王道だったのです。その考えが根底にあったため、「いくら企業で出世しても、一番もらっていない人の10倍くらいにとどめるのが常識」という観念が通用していたのです。しかし現在では、それが100倍以上になる役員もたくさんいます。グローバル化した時代では、優秀な人材は海外企業と同レベルの報酬でないと来てくれません。ヘッドハンティングでとられてしまう恐れもあります。こうした競争の激化から、格差が社会に受け入れられてきたのです。

 しかし、その反動はアメリカでも日本でも起きています。カルロス・ゴーン氏の一連の騒動を受けてのバッシングもその一つ。アメリカではトランプ旋風が吹き荒れ、ヨーロッパではブレグジットが強行されるなど、反グローバルを標榜する動きがここ数年目立ちました。現在世界中をさいなんでいるコロナは、いわば反グローバルをサポートする自然の摂理ですが、今後我々がこのあたりの価値観をどう更新していくかはまだ分かりません。

 しかし格差社会がいきすぎるとダメだということは、世界史をひもとくとすでに分かっていることです。アメリカはまだ建国されてからの歴史が短いため、能力に見合った人間が活躍し、たくさんの報酬を受けるフロンティア精神を重視しているのでしょう。このため結果として格差の拡大を招くことに抵抗が薄いのかもしれませんが、フランス革命を経験したフランスなんかは、格差の拡大によって民衆が蜂起することの恐ろしさを、身をもって知っている国です。フランス大統領は市民の暴動を恐れているわけです。

 また、そこまでいかなくても、格差が拡大したシンガポールやアメリカのような社会は、国民の幸福感が必ずしも高いわけではないという調査結果もあります。格差社会は、親が子どもに投資する教育のレベルによって「階層を固定する」というさらに深刻な問題をもはらんでいます。こうした問題にどのように向き合うのかは、社会全体の課題です。

 また、私はこれまで、お金持ちの人たちに会いに行って、どんな人たちなのか、実際に見聞きしてきました。その中で、「どうしたらお金持ちになれるか」という問いのヒントになりそうなことをいくつか聞きました。たとえばタイヤのゴムを扱う自転車屋から医療機器のゴムを扱う大会社の社長になった男性は、「ゴムを扱う商売を続け、同じことをどんなときも突き詰めていったことが現在の成功につながった」と話していました。

 お金持ちたちは、自分がお金持ちになった要因は「才能に恵まれていた」のではなく、「強靱な肉体」や「正直さ」を持っていたからだ、と考えています。肉体的にも精神的にもタフだからお金持ちになれた、というのが、彼らのセルフイメージなのです。ただ、親が自分に教育投資してくれる階層にいたという人が多く、実際にはそうした環境も大きな一因だったと私は考えています。

 お金持ちの人と話していると、「どこまでお金を増やせば気が済むのだろう」とあきれるほど投資話や節税に熱心な人が多いことに気づきます。しかしお金というのは因果なもので、そういうふうに増やそうと思っていないと、すぐに時代に取り残されて、お金を失ってしまうのもまた事実です。土地成り金で、「昔は良かった。今は自分の持っている土地は空き家ばかりだ」と愚痴をこぼす男性がいました。その男性は子や孫に土地を分割していて、土地は駐車場などになっているため何を生み出すこともありません。土地を元手にして何か事業を始めようということがないのです。前の時代の稼ぐスタイルに固執していると、だんだん稼げなくなって、資産は減っていく一方なんですね。

 また、本当にお金持ちの人は時代についていくどころか、自分で時代を切り開いていく人たちです。ソフトバンクの孫正義さんなどその典型ではないでしょうか。携帯電話などの通信分野が世界を変える……それは、何十年も前から識者が認識していたことではありましたが、だからといって識者がそうした事業をできるわけではありません。お金がないと実際に世の中を動かす事業はできないのです。自分の持つお金を元手に、未来を自分の事業で切り開き、事業を拡大していく、それはお金の最もエキサイティングな増やし方なのだと思います。

 他の人の回答は…
 ・ 井上はじめさん「収入を増やさなくてもお金持ちになれる」
 ・ 佐藤ねじさん「マネーリテラシーを身につけよう」
 ・ 鈴木烈さん「思い込みが起業のチャンスに」

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1820331 0 お知らせ 2021/02/04 16:00:00 2021/02/04 16:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210201-OYT8I50070-T.jpg?type=thumbnail

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