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【俺はググらない】どうして人は夢を見るのか 三島和夫さん「夢を見ることで記憶が整理されている」

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 睡眠と夢の状態はどのような関係があるのか、夢を見るときと見ないときの違いはあるのか…。夢の本質に迫るには、睡眠医学からのアプローチも重要です。睡眠医学に詳しい秋田大学の三島和夫教授に聞きました。

 なぜ短時間の睡眠は体に良くないのかも解説してくれています。睡眠不足の小学生は必見!

 夢を見ているときは、かなり脳の活動が活発になっています。眠っている状態にもかかわらず眼球の動きが活発になっている、いわゆる「レム睡眠」だと、脳波のうちでもアルファ波やベータ波と呼ばれるものが出ています。この状態の時は夢を見やすいと言われています。脳波を測定するポリグラフ検査では、レム睡眠の時に被験者を起こすと、8割くらいの確率で「夢を見ていた」と話します。

 眠りが深くなると、眼球運動が起きないノンレム睡眠に移行し、シータ波やデルタ波といった脳波に変わります。こうなると脳の活動は遅く、夢を見ることは難しくなります。ノンレム睡眠でも全く夢を見ないというわけではありませんが、夢を見ても、色や風景がぼんやりした、ストーリー性のあまりない夢になります。

 寝ている間、レム睡眠とノンレム睡眠は交互に状態が変わります。レム睡眠、ノンレム睡眠の1セットはだいたい90分サイクル。7、8時間寝れば、4、5回レム睡眠の状態になるのです。結構な割合で夢を見るとされるレム睡眠の長さは、眠り初めて1回目は5~10分程度で、明け方が近づくにつれて長くなり、朝方には30分以上になります。明け方になるにつれて脳が活性化している状態が長くなっているということですので、夢は「起きるための準備」ではないかとも言われています。

 すべての人は寝ているときに何らかの夢を見ていると考えられています。しかし、それを朝になって覚えているかどうかは、個人差があります。なぜ個人差が出てくるのかはよく分かっていません。ただ、思い出せる夢というのは、自分自身が意識していなくても、心に何か引っかかっている、自分にとって意味のあることであることが多いようです。

 そもそもなんで夢を見るのか? それは、実はよく分かっていない、というのが正直な答えです。ただ、いろいろな研究から「おそらくこうだろう」という役割が見えてきました。この20年くらい言われているのは、「記憶の整理」という役割です。脳には、勉強して記憶した事柄から、道ですれ違った人の顔まで、さまざまな記憶がしまい込まれています。そういうものの中で「これは大事だ」と判断したものを、睡眠中に記憶の回路にまわし、固定させています。その一部で出てくる現象が夢だと考えられているのです。

 ただし、だからといって固定しようとしている記憶がそのまま夢の内容に出ているのかどうかは、分かっていません。記憶にしまい込まれているものを取り出して整理していく作業の中で、ランダムに引き出されたものが夢として登場するだけではないかと考えられています。

 そうなると、夢の内容は以前経験したことのある記憶だけが出てくるはずですが、自分が行ったこともないような場所を歩いているということもしばしばありますよね。これは、手当たり次第に記憶が引き出され、不完全につなげられることから生じます。たとえばテレビで見たことがあるだけの場所でも、自分で行ったことのように夢の中では経験されることがあります。ランダムに引き出された記憶によって、混乱したストーリーになってしまうのです。

 では、見たいと思った夢は見られるものなのでしょうか。一般に、夢に出てきやすく、またその夢が記憶に残りやすいのは、情動的に刺激が強いできごと、衝撃的なできごとだと言われています。たとえば「ゲームが大好きでゲームのことばかり考えていたら夢に出てくる」ということはあり得るのではないでしょうか。実際、私も小学生の頃、キャンプに行ったのがすごく楽しくて、そのことばっかり考えていたら夢で見たことがあります。

 こういう経験は子どもの方が多いと思います。大人も強烈な体験をしたら夢に見ることもあるのでしょうが、ひとつのテーマや出来事に熱中するということ自体、大人には少ないでしょう。ただ、普通は「楽しかった」というポジティブな感情よりは、不安や恐怖といったネガティブな感情の方が頭に残りやすいです。実際には、「誰かに追いかけられた」などの怖い場面の方が夢の中では引き出されやすく、見たい夢を見るのは難しいのかもしれません。

 また、「今日はこんな夢が見たい」と自由自在に夢を見るスキルを身につけられるかという話になると、それはちょっと聞いたことがないですね。夢を外部的、あるいは意識的に操作するのは、相当大変だと思います。どんな夢を見ているのか、ということ自体、現状では夢を見た本人の記憶に頼らないと分からない状況なのに、それをさらに制御し操作するのは、科学的に方法論として確立するのはかなり先のことと言えるでしょう。

 ちなみに、夢そのものの話からは少しそれてしまいますが、私の専門である睡眠医学の観点から睡眠の質についてひとこと言いますと、良い睡眠には、「レム睡眠」「浅いノンレム睡眠」「深いノンレム睡眠」の三つがきちんとそろっていることが大事になってきます。寝てから最初の2、3時間は深いノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出てきて、その後明け方にかけて浅いノンレム睡眠が主体となり、レム睡眠の長さも長くなる、というのが、平均的な睡眠の状態です。

 睡眠時間が短いと、深いノンレム睡眠だけになってしまい、浅いノンレム睡眠は取れません。レム睡眠も寝始めの頃は短いので、ほとんど取れないことになります。そうすると、記憶力の低下や気分が不安定になることにつながります。アメリカでもいろいろ研究されてきたのですが、2、3時間程度の短い睡眠時間で三つの睡眠を行き届いた形でとることは、不可能なんです。健康に過ごすためにはある程度の睡眠時間を確保する以外に方法はありません。

 しかし今の日本の小学生は、世界の国の中でもトップレベルに睡眠時間が少ないのが現状です。6~13歳は、9~11時間の睡眠時間を取るべきだとされていますが、日本は圧倒的に足りません。これは、親が夜型の生活を送っているためにつられて就寝時間が遅くなってしまう、夜遅くまで勉強をしている…といった理由が考えられます。小学生の場合、「眠い」ということを自覚できなくて、いらいらしたりかんしゃくを起こしたりという気分の変化として表れることもあります。このため、親も子どもの気分の不安定を睡眠不足だと気づくのは難しい場合もあるのです。

 ちなみに、夜更かしして遅い時間に寝ても、遅い時間まで寝ているなら問題はありません。飲食店などで夜型の生活をしている人も、睡眠時間自体をきちんととることができているのなら、特段問題はありません。ただ、現実問題として、小学生の場合は決まった時間に登校し、授業を受けるためにきちんと朝起きないといけないですよね。週末は学校がないからといって朝寝坊し、そのペースが戻らなくて週明けに睡眠時間が短くなるのはしんどいです。「社会的時差ボケ」と呼ばれることもありますが、これは避けるべきだと考えます。

 夢を覚えているかどうか、どんな夢を見ているか、というのは、健康に睡眠を取れているかとは無関係な、個人差の大きな指標ですので、夢が睡眠医学的な健康のバロメーターとして使えることはありません。しかし、夢に興味を持ってくれた皆さんには、睡眠についても興味を持ってもらい、適正な長さの睡眠を取って健康を保つようにしてほしいと思っています。

 「どうして人は夢を見るのか」ほかの人の回答は…
 ◇とにかく明るい安村さん(お笑い芸人)「夢で予行演習をしているのかも」
 ◇松田英子さん(心理学者)「夢は現実とリンクしている」
 ◇久留島元さん(中世文学研究者)「昔の人は夢を買ったり盗んだりした…?」
 ◇斎藤環さん(精神科医)「夢は心の健康のバロメーター」

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1829725 0 お知らせ 2021/02/09 12:01:00 2021/02/09 12:12:45

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