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【俺はググらない】どうして人は夢を見るのか 久留島元さん「昔の人は夢を買ったり盗んだりした…?」

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 夢と言えば、空想上のバクという動物。なんと夢を食べるという言い伝えがあります。これって、妖怪なんですかね? 妖怪の専門家と言えば、京都精華大学特任講師の久留島元さん(中世文学)。日本人がバクや夢のことをどのように考えてきたのかを久留島さんの案内でたどってみましょう。

 ちなみに今回のインタビューとは全く関係ありませんが、久留島さんは俳句にも精通しています!

 初夢になにかの店でなにか買う 久留島元

『和漢三才図会』三八巻獣類に描かれたバク。国立国会図書館デジタルコレクションより
『和漢三才図会』三八巻獣類に描かれたバク。国立国会図書館デジタルコレクションより

 夢を食べると言われているバクはもともと、実在のバクをもとに想像された、中国の古典に出てくる動物でした。「鼻がゾウのようで、体がクマのようで、目はサイに似ている」と描写されていて、まあ一言で言うとよく分からない動物ですね。でも麒麟や獅子のような空想上の動物と一緒に描かれることが多く、バクの姿を絵に描いておくと魔除けになる、という言い伝えが中国にあったのです。中国では、バクは特別に夢と関連づけて語られることはないようです。

 バクのことを書いた中国・唐代の詩人、白楽天の詩が平安時代に日本に紹介され、日本でもバクの存在が知られるようになりました。で、どういうわけか日本ではバクが「夢を食べる」という話になったのです。たとえば後小松天皇(1377~1433)または後陽成天皇(1571~1617)が夢に宝船を見て、その絵を描いたとき、「(バク)」の字を宝船に書いたと言います。これは伝説に近いお話ですが、バクというのは縁起の良いものと見なされていたことがこうしたエピソードからも分かります。

 江戸時代にはバクのお札が売られていたのだとか。その様子が、井原西鶴の「好色一代男」に出てきます。江戸時代の人は初物を食べると寿命が延びると言うくらい、初物が大好きだったので、夢も初夢で縁起のいいものを見たいという風潮が生まれてきました。それがバク信仰と結びついて、「バクのお札を持っているといい初夢が見られる」と信じられていたようです。中国では単に魔除けの効果を持つと言われていたバクが、日本に渡ってきたときに、魔除けの種類が夢に限定されたのです。その中で、「悪い夢を食べてくれる」という話が広がったようです。中国には、初夢を重視する文化はあまりないと思います。

 では、夢そのものはどのようにとらえられてきたのでしょうか。日本では、神様、仏様からのメッセージが夢に出てくると言われていました。昔話のわらしべ長者も、長谷寺の観音から夢でお告げをもらい、そのお告げに従って行動することでお金持ちになる話ですよね。夢は自分でコントロールできないことから、死後の世界や前世とつながっていて、不可思議な世界と交流する場だと考えられてきました。自分たちの世界とは違う世界があって、自分たちを動かしている。そういう「裏側の世界」が夢とつながっていると言うのです。そういう場だからこそ、神仏とつながってお告げがもらえたのです。

 その一方で、いいお告げの夢は、実は見るだけでは成就しないという側面もありました。専門家に、夢の解釈を聞かないといけないのです。「宇治拾遺物語」には、ある男が都をまたぐ夢を見た話が残っています。その夢を奥さんに話すと、「股が裂けそうだね」と言われてしまいます。その後、専門家にみてもらうと、「世界を股にかけるという意味。すごく出世するけど、つまらない人にしゃべったので、最後には失脚するでしょう」と言われるのです。その男が、大納言まで上り詰めたのに応天門の変で失脚した伴善男でした。

 一般の人には夢の意味は解釈できないけれど、「裏側にある世界」のことを知っている陰陽師などの専門家の人なら解釈できる、というわけです。逆に言うと、むやみに他の人に夢の話をすると、つまらない解釈でつまらない結果になる、という戒めでもあります。いい夢について人に知られると盗まれてしまう、と考えられていたのです。

 夢が盗られてしまうなんて、現代の感覚から言うととても奇妙ですが、夢をもらったり売り買いしたりしたエピソードも残っています。吉備真備が若い頃、夢の専門家に相談に行ったところ、次に相談した人の夢がとっても縁起の良いものだったので、「あの人の夢を買う!」と申し出ます。夢を買ったところ、大出世したのです。似た話として、北条政子が妹の夢をもらって出世したという話もあります。

 夢はただ見るだけではなく、その後夢をどう扱うかによって人生に良い影響も悪い影響も与えると考えられていたのです。いい夢でも悪い解釈で変な方向に転がるのと同じように、悪い夢でもポジティブに解釈されることでいい方向に転がることもあると信じられていました。もしかしたら、「言霊」のようにイメージを言葉にする時の力が人の心理に作用することを昔の人は経験則で知っていて、それが信仰レベルになっていったのかもしれませんね。

 「どうして人は夢を見るのか」他の人の回答は…
 ◇とにかく明るい安村さん(お笑い芸人)「夢で予行演習をしているのかも」
 ◇松田英子さん(心理学者)「夢は現実とリンクしている」
 ◇三島和夫さん(睡眠医学研究者)「夢を見ることで記憶が整理されている」
 ◇斎藤環さん(精神科医)「夢は心の健康のバロメーター」

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1829737 0 お知らせ 2021/02/09 12:02:00 2021/02/24 11:15:23 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210205-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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