【俺はググらない】子どもと大人の境目はどこにあるの 室井康成さんの回答「一人前というのは属人的なもの」

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 「成人式」や「七五三」というイベントが全国にどのように広まったのか、各地方で子どもが成長したお祝いや大人になった区切りはどのようにとらえられてきたのか。そうした社会的な意識の起源をひもといていくと、今では「当たり前」のことも数十年前さかのぼっただけで全然違ったということもよく見られます。

【俺はググらない】子どもと大人の境目はどこにあるの

 こうした歴史を各地に伝わる文献や聞き取りでひもとく「民俗学」。民俗学者の室井康成さんに大人と子どもの境目を聞いてみると……

室井康成さん
室井康成さん

 大人、というのは、昔は「一人前」のことを指しました。成人というのは法的に全国一律の基準で決められたものですが、自分のことは自分でできる「一人前」というのは、個人の能力に依存します。なので、かつて「一人前」と認められるかどうかは、年齢で一律に区切るのではなく、家業を運営する力を身につけているかどうかが基準でした。

 つまり、端的に言えば「親の仕事を手伝える年齢に達した」ということが一人前と認められる状態なので、農村部では14~15歳、漁村部では15~17歳、都市部では18~20歳前後、と集落の主な生業によって「大人」と認められる時期は違っていたわけです(もちろん、これも目安なので当てはまらない地域もあります)。一般的な傾向として、漁村での仕事は危険を伴う場合が多いため農村より少し年齢が上で、都市部の仕事は多様な人たちと関わることが多いために教育を十分受け、ある程度世故に長けるまで時間がかかったという見方ができます。また、女性に関しては昔は今よりも性別役割分担が強かったため、「出産ができる」「家事ができる」年齢に達することで一人前とみなされることが多かったようです。

 ただ、こうした地域ごとの一人前の意識が残っていたのは、せいぜい昭和の中頃まででしょう。今は高校や大学への進学率も上がり、都市と農漁村との情報の格差も薄まるなど、昔とは条件が違います。「20歳が成人」と法律で決められたのは明治時代ですが、そうした意識はすぐには浸透せず、戦後、自治体主催の成人式とともに全国に広まっていったと私は考えています。

 よく、武家の元服などの成人儀礼に成人式の起源を求める議論がありますが、元服と成人式は直接接続しているわけではありません。こうした成人儀礼は明治時代、日本に徴兵制が導入され、20歳で徴兵検査が導入されたことで徐々にとってかわられました。徴兵検査に合格することが「大人」だと認められる契機になり、成人儀礼は衰退したのです。徴兵検査が20歳に設定されたことが、民法上でも成人年齢が20歳に設定された原因だったと考えられています。

 「お酒は20歳になってから」というのも、歴史をひもとくとそんなに古い話ではありません。お酒はかつて貴重なもので、大人どうしの重要なコミュニケーションの要素でした。だから、お酒を飲むことができるのは大人の特権とみなされていたのです。かつては15歳とかで大人と見なされていましたから、それぞれの地域で大人と見なされればお酒を飲むことができました。

 1876年には民法で成人年齢が20歳と定められたのに、そこから未成年者の飲酒を禁止する法律が1922年にできるまで、何十年も間がありました。なぜかというと、各集落で大人と見なされることの方が、法律的に成人になることよりもお酒を解禁する上で重要視されていたからです。しかし日露戦争や第一次世界大戦を経て、国民の間で軍事の重要性が認識されると、あまり早くからお酒を解禁することで身を持ち崩し、徴兵検査に合格できないケースが出るのは大問題だということで、20歳で成人するまではお酒を飲んではいけない、という法律が作られました。未成年の健康を守るため、と言えばそうですが、国防上の問題もあって初めて法制化され、それが今も続いているのです。

 20歳で大人とみなされるようになったり、飲酒を未成年に禁止したりというのは、今では当たり前のように受け入れられていますが、それぞれの時代の事情を背景に成立したものです。それ以前には、年齢で一律に大人と子どもを区切るという今の考え方とは違う考え方がありました。私個人としては、一人前と認められるかどうかは属人的な話ですから、年齢で一律に区切るという今のやり方には、もう少し柔軟性を持たせてもいいのではないかと思っています。

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