【俺はググらない】子どもと大人の境目はどこにあるの 斎藤環さんの回答「世界の中心であると同時に世界の一部に過ぎない自分」

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 この「俺はググらない」のコーナーでは、これまで何度も精神科医の斎藤環さんにお世話になってきました。2018年5月の「 なんで勉強しなくちゃいけないの? 」、2019年5月の「 全力って何? 」、2020年12月の「 どうして人は寝ている時に夢を見るの? 」につづいて今回は4回目。

【俺はググらない】子どもと大人の境目はどこにあるの

 精神的に大人になるというのはどういうことか……今回も明確な言葉で定義してくれました。

斎藤環さん
斎藤環さん

 昔から「成熟の指標」として言われているのは、心理学者のエリクソンの言う「アイデンティティーの確立」です。青年期は「アイデンティティー(自己同一性)」が未確立で、これが確立されれば精神的に成熟したとみなされます。

 しかしこれはとてもあいまいな表現ですので、私なりに整理し直してみましょう。次の二つが達成されたら精神的な大人と言えるのではないでしょうか。(1)欲求不満耐性が身につく、つまり「待つことができる」「我慢強い」ということです(2)自分の情緒を伝え、相手の情緒を読み取る「情緒的なコミュニケーション」ができる、この2点がバランス良く達成されることが大事です。

 (1)欲求不満耐性

 「欲求」とは、物欲、性欲などさまざまなものを含みます。実現可能性が高いものは早く達成できるように行動し、可能性が低いものはあきらめる。これを適切に判断できることが大事です。たとえば小学生だと、高学年になればスマホが欲しいと思う人も多いでしょう。家庭や学校によっても方針は違いますが、そうした欲求を主張するだけではなく、「中学に入るまで待ちなさい」と言われれば待つことができる、という我慢強さは大人になるのに必要な条件でしょう。

 (2)情緒的なコミュニケーション

 理路整然と理屈だって説明することも大事ですが、それだけでは相手を説得することはできません。上記のスマホの例で言えば、「お母さんはスマホを持つことのどこに不安を感じているのか」「何がクリアされればスマホを持つことを許してくれるのか」を先回りして読み解き、そこに向けてアピールして説得する、こうしたことができるのは大人と言えるでしょう。

 こうした精神的な成長に必要なのは、「自分が世界の中心であると同時に世界の一部に過ぎない」という矛盾した認識です。世界の一部に過ぎないからこそ、他者に対して自分のことをアピールしコミュニケーションを取る必要があります。しかし、世界の中心にいるという意識を持っていないと、そもそも自分は欲求を満たして良い人間なんだと考えることができず、そうしたコミュニケーションを取る土台が生まれないのです。

 こうした矛盾した認識を手に入れるには、二段階の人間関係の構築が必要です。「自分は世界の中心である」という認識は、適切な親子関係によって得られます。親は自分が自分であるというだけで愛してくれる唯一の存在です。そこで生まれる健全な自己肯定感がまずは必要です。その上で、友だちや部活の先輩後輩、あるいは世代の異なる人間との交流といった幅広い人間関係が、「自分は世界の一部に過ぎない」という認識をはぐくみます。様々な人間関係によって、相手を尊重するコミュニケーションを取らないと自分の欲求を通すことができないと気がつくのです。

 いわゆる「アサーティブコミュニケーション」と呼ばれる「他者に配慮しつつ主張は通す」というコミュニケーションをとることができる人を、精神的には大人と呼びます。人を押しのけるコミュニケーションしかとれないのは困りますが、自分を出すことができないのも困ります。読者の小学生には、そうしたコミュニケーションを身につけてほしいと思います。

 その一方、社会と個人は、成熟に関して言えば、社会の成熟が低いほど個人の成熟は高く、社会が成熟すれば個人は成熟しなくても良い、という関係にあります。今の日本は個人的な成熟がなくても生きていける社会です。これは必ずしも悪いことではありません。

 発展途上国では低年齢でも大人にならないと生きていけないことを思うと、社会が成熟したことによって多様な生き方が許容されたととらえることもできます。そうした社会では成熟の価値自体が相対的に下落していきます。「つまらない大人になるな」という言い方にそうした価値観が見て取れます。

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