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ゲームのオンライン家庭教師事業「ゲムトレ」を運営する実業家の小幡さん。以前の取材で、この事業は不登校児の支援の側面もあることを説明してくれました。
スポーツも勉強もうまくいかない、学校で活躍できない子どもでも、実はゲームだったら強い、ということはあります。でもゲームがいくら強くても大人は評価してくれません。そんな子どもたちにゲームで評価される場をつくり、自己肯定感を高めてもらうことで居場所をつくる、そんな効果もあると語っていました。
小幡さん自身、小学2年生から不登校になり、小中学生時代はほとんど地元のフリースクールに通っていました。18歳で起業し、自身の経験をもとに著書も出版している彼が、大人になるとはどんなことだと考えているのか。
小幡さんの回答は……。

「はやく自由になりたい」「家を出たい」
小さな頃から、そう思っていました。そのためには、稼げるようになって経済的な自由を手に入れる必要がある、そう考えていたのです。
僕は何かを強制されるのが本当にダメで。だから学校はイヤでした。ルールがあらかじめ決められていて、しばりが強く、自分の話したい人とコミュニティを作れない、友だちを自分で選びにくい環境です。気の合う人ができずあまり楽しくない。5つ年上の従兄がいるのですが、従兄と遊んでいる方が100倍楽しかった。だから当然の結果として、小学2年生で不登校になりました。
行きたくない学校に行くことを強制されるのは、自分に「力」がないから。親に「やれ」と言われたら、抵抗はしても最終的には従うしかありません。親は学校の先生でした。親がキライというわけではないのに、僕の行動を縛ってくるからキライになってしまう。僕は大人とは敵対していました。
「力」とは何か。大人になって経済的に自立すれば、何かを強制されることはありません。そういう力を、早く身につけたいと思っていました。大人になるということは、自分にとっては、経済的な自立が一番大きいと考えています。
中学生のとき、カードゲーム大会に出るための資金を自分で増やし、赤字を出さないように回すことができた経験は、そういう経済的な自立に向けて自分を成長させてくれたと感じています。元手になったのは、20万円ほどあったお年玉。それで初めて携帯電話を購入し、ネットを漁って収集した情報をカードゲームに生かしていたのですが、途中で「このまま続けていたらすぐにお金が底をつくじゃん」と気がつきました。
カードゲームの大会では勝利すると賞品としてカードがもらえます。そうして手に入れたカードをオークションに出して高値で売ってお金を増やしました。カードのやりとりでお金を増やしたり強いカードを手に入れたり。そのための情報をネットでつかんできて3年間、自分でやりくりしながらカードゲームに出場し続けました。
時にはネットオークションで出ているカードを購入し、届いてみたら、予想していたよりも弱いカードばかりでお金を無駄に使ってしまった…なんて失敗も。そのとき以降、オークションでカードを購入するときには丹念に写真をチェックして、少なくとも写真に映っているカードの合計だけ見ても元が取れるはずだ……というところまできちんと計算するようになりました。ネットの情報を鵜呑みにせずに自分で検証する力、いわゆる「ネットリテラシー」を身につけるにも役だったと思います。
子どもたちにも、お金を稼ぐ経験というのは大事だと思います。子どもにとっては1万円を稼ぐだけでも大変ですが、やりようはあるはず。ブログを開設してアフィリエイトで稼ぐとか、家のお手伝いをしてお小遣いアップを親と交渉するとか。自分でお金を稼いでみれば、お金を出して育ててくれている親のありがたみを知ることにもなるでしょう。
毎月決まった額のお小遣いをもらっているだけではお金のありがたみは分かりません。自分のがんばりしだいで稼げるお金は変わるということを実感してこそ、大人になる予行演習になると思います。
僕は高校時代にホリエモンさんを地元の和歌山のイベントに呼んだりして、いろいろなイベントを立ち上げていきました。毎回会場を借りるなど何か契約をするたびに未成年者は親の許可が必要なのが、正直言って面倒くさいな、と思い始めて。それで18歳のときにイベント会社を立ち上げたんです。なのに会社を設立するにも結局親の許可が必要でした。「ここでも親の許可が必要なのか」とうんざりしたことを覚えています。
そういう意味で、親の保護を離れる時期が今よりも早くなる18歳成人には賛成ですね。15歳で義務教育が終了した段階で大人と認めてもいいくらいだと思っています。
ほかの人の回答は…
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