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    生徒の友情から生まれたバリアフリーイベント…玉川聖学院

     玉川聖学院中等部・高等部(東京都世田谷区)は3月7日、「バリアフリー街歩きイベントin自由が丘」を開催した。イベントを企画したのは高2生の2人で、4歳から車いすを使用している田崎花歩さんと友人の奥山美沙さんだ。2人が作成した「自由が丘バリアフリーマップ」にユニバーサルデザインのコンサルティングを行うベンチャー企業「ミライロ」が注目し、同社とのコラボレーションイベントとなった。当日は約50人の生徒らが参加して、車いすで街を巡った。

    車いすだからって遊びに行けないのはおかしい

    • 生徒が自由が丘の街を車いすで歩き、バリアフリー情報を集める
      生徒が自由が丘の街を車いすで歩き、バリアフリー情報を集める

     奥山さんが、自由が丘で遊ぼうと仲良しの田崎さんを誘ったときのことだった。「『段差があるから出かけるのは難しい』と言われて、すごく違和感があったんです。車いすだからって、遊びに行けないのはおかしいんじゃないかと。それなら、車いすでも利用しやすいお店を探して、私たちだけでなく、みんなに役立つよう地図にしようと思いついたんです」

     そこで2人は昨夏からバリアフリーマップの作成に取り組んでいたが、その秋になって奥山さんがボランティアで参加した障害者イベントで出会いがあった。

     「バリアフリー地図アプリの『Bmaps(ビーマップ)』のブースがイベントに出店していたんです。そこで、自分はこういう活動をしていると飛び込みで説明しました」。さらに、2人はスライドを作成し、後日、Bmapsの企画・運営をしている「ミライロ」でプレゼンテーションを行った。それが評価されて、この日のコラボイベントにこぎつけた。

    車いすに乗って初めて感じる不便さ

    • ミライロの講師・飯田晴也さんから車いすの使い方を教わる
      ミライロの講師・飯田晴也さんから車いすの使い方を教わる

     「Bmaps」は、障害者や高齢者、ベビーカー利用者、外国人らさまざまなユーザーが外出時に求めるバリアフリー情報を投稿・共有できるアプリだ。アプリを開くと地図が表示され、店舗のレビューや入り口の段差の数、コメント、写真を確認することができる。多くの人が投稿することで情報が集まり、多様な人がスムーズに外出できる社会の実現を目指しているという。

     コラボイベント当日は、ミライロの飯田晴也さんらが講師として同校を訪れ、車いすの使い方や「Bmaps」の投稿の仕方をレクチャーした。参加した高1、高2の有志約50人は8班に分かれて、車いすに乗る人、車いすの介助をする人、写真を撮って投稿する人、メモをする人など役割分担をし、自由が丘の街を歩いてまわった。

     参加した生徒のうち、車いすを普段から使っている生徒は田崎さんを含め2人。他の生徒は初めての車いすに四苦八苦。スタートして間もなく、段差に激突して「きゃっ!」と叫び声を上げる場面もあった。「方向転換が難しくて、大回りしないとぶつかってしまう」「レンガ畳の道はでこぼこが多くて、ガタガタする」「エレベーターが狭くて、車いすと介助者が一緒に乗れない」など、実際に乗ってみて、車いすの人が不便に感じていることを体感した。

    『ハード』はなかなか変えられなくても、『ハート』はすぐに変えられる

    • Bmapsの画面。各スポットのバリアフリー情報が得られる
      Bmapsの画面。各スポットのバリアフリー情報が得られる

     約2時間の車いす街歩きの後、学校に戻り、各班でディスカッションを行い、発表して意見を交わし合った。Wi―Fi環境の教室で各班がiPadを用い、街で撮ってきた画像をプロジェクターに映し出す。

     「目線が低いので、車や他の歩行者に神経を使う」「排水溝にタイヤがはまったり、スロープが急で塀や電柱にぶつかりそうになったりして、車いすが使いやすい道路になっていない」「段差プレートが設置してあっても、車いすで乗り越えられないことも多い」「忙しいからと対応してくれない店もあれば、店員2、3人がかりで車いすを持ち上げてくれるお店もあった。『ハード』の面はなかなか変えられなくても、『ハート』の部分はすぐに変えられると思った」と、さまざまな意見が発表された。

     主催した田崎さんは、「みんなの意見は、車いすユーザーの私が普段感じていることと同じです。今日のイベントで気が付いたことを、みんなの将来に生かしてほしいです」と締め括った。

     ミライロ広報の岡田麻未さんは、「このイベントに参加した高校生が、10年後、20年後に、今日感じた視点を思い出して、商品開発や建物の設計などに携わってくれるとうれしいです」と話した。この日、生徒たちが投稿したレビューは151件に上り、自由が丘エリアのバリアフリー情報はさらに充実したものになった。

    学校全体で育てる心のバリアフリー

    • この日のイベントで生徒が投稿したバリアフリー情報
      この日のイベントで生徒が投稿したバリアフリー情報

     同校は、阪神・淡路大震災を経験したバーナード・バートン理事長の下、耐震性の優れた新校舎を建設する際に、障害者に優しい設計を取り入れた。この4月、車いすの生徒2人を新入生に迎え、学校全体で車いすの生徒は4人となった。車いすの新入生の母親は、「建物のバリアフリーも大切ですが、心のバリアフリーがまず先なのです。生徒たちが主体になって、バリアフリーに取り組む姿勢は素晴らしい」と話す。

     イベントを指導した羽鳥光昭教諭は、「生徒に生まれてきた『やりたい』という気持ちを、私たちは応援し、見守ってきただけなんです」と笑う。「こちらが手を貸さなくても、やりたい気持ちがあるから、自分の言葉で話せるんです。それは今の大学入試改革で求められている力と同じです。知識はAIに聞けば教えてくれる時代です。だから、それを使いこなせる人になってもらいたいのです。彼女たちはどこの大学に行っても、社会に出ても大丈夫でしょう」

     奥山さんは、「友達の田崎さんがいなかったら、この活動は始まらなかったし、これほどは行動できなかった」と振り返る。田崎さんは、「夢は地元の商店街も巻き込んで、さらにバリアフリーマップを充実させること。お祭りのとき、高齢者の方が見やすいバリアフリーマップを配布するのが目標です。将来はインターネットのルート検索に、車いすルートを設定できるようにしたいですね」と話した。

     友達を思う気持ちから生まれたこの日のイベント。その思いは周りの生徒や大人たちをも巻き込んで、育っている。同校で芽生えた心のバリアフリーは、これからさらに大きく育っていくだろう。(文と写真:小山美香)

    2018年04月11日 05時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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