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    グローバルキャリア教育で未来を実現…瀧野川女子

    • 見晴らしのよい高台に立つ学園
      見晴らしのよい高台に立つ学園

     瀧野川女子学園中学高等学校(東京都北区)は、2020年の大学入試改革とその先の未来を見据え、「創造性教育」と「国際教育」を2本柱とした教育改革を行っている。大きな変化が予想できる将来の世界に、新しい価値や仕事をもたらす起業家精神を養うのが目的だ。山口龍介副校長に、同校で進められている教育改革について聞いた。


    ICT化で授業の進度は2倍、理解度もアップ

    ――瀧野川女子はICT化が進んでいますね。

     山口副校長(以下、山口) 2010年から今に続く教育改革に取り掛かり、その基盤として、学校全体のICT(情報通信技術)化を進めてきました。授業によっては進む速さが2倍を超え、かつ平均点も上昇するといった、大きな成功を収めました。

    ――生徒全員にiPad Proを配布していますね。数学の授業などで効果を上げていると聞きます。

     山口 16年からiPad Pro(12.9インチモデル)とApple Pencilを導入し、翌年から全生徒全教員が、全科目の授業や教育活動で利用しています。

     利点を挙げると、板書やノートに写す時間を省略することができ、事前に黒板に書く内容を電子ファイルで送信することで、生徒は概要を知った上で授業に臨めるので、より高度な内容から授業を始めることができます。これで授業時間の1、2割以上の時間を省略できます。その分を自分で考えて答案を書く時間に充てることができるのです。

     数学の例を挙げると、記述式の答案を生徒同士がリアルタイムで自由に見ることができるので、どんどん他の生徒の答案を見るように指導しています。答案とは「案」の字が示すように、「自分はこう考えます」と誰かに提案するものです。誰が読んでも自分の考え方が伝わる答案を書けるように指導しています。同時に、記述式の答案を読んで他の人の考え方を理解することの大切さも伝えています。

     数学は、言葉では考えたり伝えたりすることができない数や量などについて、数字や記号で考え、伝え、受け取り、より良いものを生み出す、コミュニケーションの学問と私たちは考えているからです。そして、先生は生徒全員の答案をリアルタイムで手元のiPadで見ることができ、生徒たちの状況を把握して、次の授業展開をより良いものへと変えることができるのです。

    デザイン思考を取り入れた独自設置科目「創造性教育」

    ――「創造性教育」を導入したきっかけは。

    • 生徒の成長を熱く語る山口副校長
      生徒の成長を熱く語る山口副校長

     山口 東京工業大学大学院でロボット創造学を学んでいたとき、新入生が、「答えは何ですか」とすぐ解答を求めてくるので驚きました。答えがないからこそ研究するものです。これでは本質的で能動的な学びにはなりません。大学の先生方とも議論するなかで、中高生時代の学びがいかに大事かを痛感しました。学校改革を進める中で構想をまとめ、恩師でもある東京工業大学名誉教授でロボット研究と創造性教育の世界的な大家である廣瀬茂男教授と、同じく東京工業大学でデザイン思考を教える齋藤滋規教授にご協力いただき、本校での創造性教育が始まりました。

    ――デザイン思考を取り入れた「創造性教育」の授業はどのようなものですか。

     山口 中学1年から高校2年までの間に、思いを形にし、世に送り出せる創造性と、それを仕事へとつなげていく起業家精神を、起業を体験する高校2年の「事業化実習」に向けて体験的に学び取っていきます。

     中学1年の「理想の街を(つく)ろう」プログラムでは、実際に手を動かし、試行錯誤しながら発想を膨らませ、チームで新しいアイデアを形にしていきます。こうした中でデザイン思考を、体験的に身に付けていきます。

     中学2年では、プログラミング教育とテクノロジー応用能力を育むことを目的に加え、大道芸ロボットを製作して、日本機械学会主催の「ロボットグランプリ」に参加しています。参加1年目は大学生や社会人を抑えて準優勝しました。4年目の今年は、安眠を誘う「羊さんロボット」などを製作中です。もこもこした手触りでかわいいんですよ。

     また、鹿児島県の奄美大島で行う「奄美冒険旅行」も大好評で、新しいことに挑戦していくエネルギーへとつながっていきます。

     中学3年の「自由研究」では、指導教員と一緒に思い切り好きなこと、すごいと思うことを追求し、その面白さを伝えて世の中をより豊かにすることを目指します。1年間の研究成果から優秀作を選び、校内の発表会で、その研究をした生徒が全校生徒にプレゼンテーションします。世の中に向き合う、人の心を動かし、世の中を変えていく、そういう心構えを学んでいきます。

     昨年から始めた中学3年の「伊勢歴史旅行」も好評です。私たち日本人とは何者かということを全身で感じ、学び取ります。

     高校1年では、「商品企画コンペティション」を行って、より高度なデザイン思考を学びます。世の中に今までなかったもの、人々に「これが欲しかった」と思わせるものを作り出すのがデザイン思考です。具体的なテーマで手を動かしながら学ぶことで、生徒たちも楽しみながら無理なく理解できます。そして高2で集大成として「事業化実習」をします。

    ――事業化実習ではどんなことをするのですか。

     山口 実際に新しい仕事を始め、働くとはどのようなことか、大学でどのような専門性を身に付けて社会へと出ていけばよいかを学びます。15人1チームになり、自分たちで出資して模擬企業を設立します。デザイン思考を使ってオリジナル新商品を開発し、自分たちで生産して学園祭で販売します。挙がった利益でさらに商品を生産し、ハワイ諸島修学旅行でのハワイ大学チャリティーバザーでその商品を販売します。その売り上げは全額教育基金へ寄付します。最後は決算を行い、1年間の成果と思いをプレゼンテーションします。

    ――実学志向の学びですね。

     山口 実学志向は本校の伝統です。昭和の初めに私の曽祖母・山口さとるが本学園を創立したのは、女性の自己実現のためです。当時は総合職なんてありませんが、卒業生は銀行や百貨店などへ就職し、仕事を続けて昇進していきました。今90歳になる卒業生が「瀧野川では本当に力が付いた。それは今も昔も変わらない」と言ってくれました。

    ――こうした学びは2020年の大学入試改革にも対応していますね。

     山口 大学入試改革は世界標準の入試に近づくことです。本当の意味でのアドミッションオフィスの入試になると思います。何がやりたくて何を学びたいのか、能力に加えて意志や意欲を評価する入試ですから、本校の生徒にとってはチャンスです。事業化実習から学んだことを話し、そこからなぜこの大学に入りたいのか、入試の面接官に自分の情熱を訴えかけることができるのです。

     こうした教育改革を始めてから、難関大学への合格者も着実に増えています。それも、ただ勉強だけをして合格したのではなく、それぞれが楽しみながら学校生活に全力で取り組んだ上です。今年、筑波大学に合格した生徒は、6年間吹奏楽部で活躍しましたし、国際教養大学に合格した生徒も軽音楽部で活動する一方、委員会活動でも学校や地域に大きく貢献してきた生徒です。いずれも、やりたいことを見つけ、それを仕事につなげるために、どの大学のどの学部で勉強すればよいかという視点で進学先を選び現役合格しました。

     私たちが考える教育を6年間一貫教育に組み上げた中高一貫コースができて、今年で4年目になります。中学1年からICT化された教育や創造性教育を受けた生徒がどこまで成長していくか、とても楽しみです。

    世界で活躍するために英語を磨く「国際教育」

    ――先日、中高一貫クラスの高1の英語の授業を見学しました。どの生徒も積極的に英語を話す姿に驚きました。「国際教育」も充実していますね。

    • 創造性教育の集大成となるハワイ大学での事業化実習
      創造性教育の集大成となるハワイ大学での事業化実習

     山口 世界で活躍するには英語が必須です。目指すのは「話せる」「書ける」のアウトプットを重視した世界で使える英語です。英語教師の半分にあたる6人がネイティブの教師で、休み時間や部活など日常的に英語で話す機会があります。また、美術や音楽ではネイティブの教師が生徒と一緒に授業を受け、生徒が英語で説明します。日常に異文化体験があるのです。

     また、iPad Proを使った授業で、英語の実践的なトレーニングを積んでいきます。それを試せるのが、中1と高1で訪れる「ブリティッシュヒルズ」(福島県)です。オールイングリッシュで国内にいながら「海外留学」を体験します。また、ハワイ諸島修学旅行も英語へのモチベーションを高めてくれます。海外語学研修や正規留学制度への参加ももちろん奨励しています。

     内閣府の調査では、日本の若者は欧米に比べ、「自分の参加により社会現象が変えられるかもしれないと思う」という意識が低いそうだ。その点、同校の生徒は、社会で活躍する自分の将来像をはっきり描けているように思う。日本未来を変えていくキーパーソンに育ってほしい。

     (文・写真:小山美香 一部写真提供:瀧野川女子学園中学高等学校)

     

     瀧野川女子学園中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年11月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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