文字サイズ
    中学受験サポートに協賛する会員校の特色や、会員校からのお知らせなどを掲載しています。

    多様な文化伝える帰国生「学びの核」に…学習院女子

     学習院女子中・高等科(東京都新宿区)は、帰国子女を対象に「帰国生入試」を行っている。帰国生たちは入学後、海外で身に付けた英語力やリーダーシップに磨きをかけるとともに、自ら体験した世界の多様な文化を日本育ちの生徒たちに伝えるなど、グローバルな視野を生かしている。このほど、帰国生向け学校説明会を訪れ、その様子を取材した。

    40年前から受け入れ「日本育ちの生徒へいい刺激」

    • 国の重要文化財に指定されている正門
      国の重要文化財に指定されている正門

     7月上旬、同校と同じキャンパス内にある学習院女子大学の教室で「帰国生学校説明会」が行われた。中等科・高等科の増渕哲夫科長(校長)が「学習院女子の自由な部分、先進的な部分、伝統的な部分を感じ取っていただけたら」と挨拶(あいさつ)して始まった。伝統を受け継ぎながら、学校行事や部活動などに励む在校生の姿を紹介し、「異文化を体験している帰国生の皆さんには、日本で育った生徒たちにぜひ、いい刺激を与えてほしい」と語りかけた。

     学習院女子中・高等科の源流は、江戸末期の1847年に開講した京都御所前の学習所にさかのぼり、1885年に設立された華族女学校が前身。1946年に近衛騎兵連隊跡地だった東京・新宿区戸山の現在地に移転し、2010年に今の校舎が完成した。海外帰国子女の受け入れは1977年から40年以上の歴史がある。

     広々としたグラウンド、10面あるテニスコート、温水プールなど設備も充実している。明治の華族女学校からの伝統や、その校名からしとやかな校風を想像しがちだが、「恵まれた施設を活用し、部活動が盛んです。元気な生徒が多いですよ」と同校の教師は話す。

    • 「帰国生に期待する」と話す増渕科長
      「帰国生に期待する」と話す増渕科長

     学校説明会では、帰国生にとって関心の高い英語教育について詳しい説明があった。中等科入学後は「海外帰国英語クラス」と「一般英語クラス」に大きく分かれる。基本的に帰国生のうち、英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通っていた生徒は「海外帰国英語クラス」、日本人学校で過ごした生徒は「一般英語クラス」の既習者組で学ぶ。日本で育っていても、英語学習経験が豊富な生徒は同じ既習者組に入るという。そのほかの一般の生徒は「一般英語クラス」の初習者組でのスタートになる。

    帰国後も伸びる英語力 中3で英検1級も

     「海外帰国英語クラス」では、帰国生の英語力にさらに磨きをかける。外国人教師による「英語A」の授業は日本語禁止で、プレゼンテーションやディベートなどを通して実践的な力を伸ばしていく。日本人教師が担当する「英語B」の授業でも、英ケンブリッジ大学出版などのネイティブスピーカー向けテキストを使い、生きた文法を身に付け、ボキャブラリーを増やしていくという。

     一方の「一般英語クラス」も独自のプログラムを組む。「英語A」は中高一貫校向けのハイレベルな「NEW TREASURE ENGLISH SERIES」(Z会出版)を教科書に使用。「英語B」ではNHKラジオ基礎英語や、ネイティブスピーカーの教員が作成した学校独自の教材を用い、リスニングやスピーキングにも力を入れる。少人数による習熟度別の授業で、「ペアワークやグループワークなどで発表する機会を多く取り入れ、表現力を身に付けていきます」と同校は説明する。

    • 海外英語クラスの文法の教科書
      海外英語クラスの文法の教科書

     高等科に進むと「英語表現」の授業が始まり、上級・中級・基礎のクラスに分かれる。高3では米CNNテレビのニュースなどを題材に、編集ソフト「パワーポイント」を使って資料を作成し発表も行う。また、希望すればドイツ語やフランス語を学ぶこともできる。

     多彩な英語教育プログラムの効果は、しっかりと表れている。現在、中学2年の帰国生は「日本に帰ったら、英語を忘れてしまわないかと心配でしたが、逆にボキャブラリーが増え、英語力が伸びました。中2で英検準1級も取れました」と話す。中3で英検1級を取得する生徒もいるという。

    持ち前のリーダーシップを授業や特別活動に発揮

     説明会で興味深かったのは、「本校の帰国生は、それぞれの学年で核になっていきます。友人関係においても核になる貴重な存在です」と、学校側が話していたことだ。

    • 帰国生の英語教育について話す樋口教諭(左)とカートライト教諭
      帰国生の英語教育について話す樋口教諭(左)とカートライト教諭

     英語科のメリンダ・カートライト教諭によると、生徒が主体になってプレゼンテーションなどを行う欧米型の授業の中で、帰国生たちは海外で身に付けたリーダーシップをさらに伸ばしていくという。同じく英語科の樋口真利子教諭も「彼女たちは活発に手を挙げるので、他の生徒たちに良い影響を与えます。そのリーダーシップは学校行事や委員会活動、部活動などの特別活動でも発揮されています」と話す。

     説明会でスピーチした中学3年の帰国生は、「住んでいた国の文化を地理の授業で紹介したり、国語でスピーチの素材にしたり。自分の海外経験がこの学校で生かされています。行事でもリーダーを経験し、成長できました」と喜ぶ。

     説明会場には「帰国生の部屋」も設けられ、英語教育の成果などを展示。説明係として帰国生の女子生徒たちが、訪れた受験生や保護者らに、学校生活の様子や受験のアドバイスなどについて、丁寧に話していた。

     そのうちの1人の帰国生は、「学習院女子の日本育ちの友だちは、私の海外生活の話をとても興味を持って聞いてくれます。それに、この学校には同じ帰国生の友人もたくさんいて、分かり合えるので心強いです。中には3か国、4か国の海外経験がある友だちもいて、私にとっても新鮮な刺激になっています」と話す。

    学校で育む日本人のアイデンティティー

     樋口教諭も、実は帰国子女だという。「私の場合、2歳の時から海外にいたので、帰国というより、日本という国にやって来たという感じでした。景色も習慣も、遊びのルールもすべて違い、なじむまで大変でした」と振り返る。

     「帰国子女に対して周囲の人が一方的に抱いているイメージと帰国子女自身が帰国後に直面する現実との間にギャップがあり、それによって帰国子女が(つら)い思いをすることがあります。しかし、本校の生徒たちは帰国生に対して興味・関心を持って温かく接します。また、本校には帰国子女や海外経験のある教員が、英語科だけでなく他の教科にもおり、見守っています」と語る。

     学習院女子では高校卒業後、海外の大学へ進学する生徒もいる。高3の卒業論文を英語で書く生徒も少なくない。「英語で文章をまとめ、発表する機会がとても多いため、表現力が鍛えられ、海外の大学で学ぶのに必要なアカデミックな英語力も身に付けることができます」

     一般に帰国子女は海外生活とのギャップに、自分を見失うケースもあるという。しかし、「本校では学校生活を通して、日本人としてのアイデンティティーを自然に身に付けられる。それも我が校ならではの大切な点です」と樋口教諭は強調する。

     帰国生の生徒たちが「ごきげんよう」とあいさつを交わし、元気にのびのびと学校生活を送っている様子を目にし、彼女たちが海外生活の貴重な体験を生かしつつ、日本人としてのアイデンティティーを育んでいることを感じた。

    (文・写真:小山美香)

     学習院女子中等科・女子高等科について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年10月03日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    スクールヨミダス