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    先生の思いが生徒に伝わる体験授業…帝京大中

     帝京大学中学校・高等学校(東京都八王子市)は今年もゴールデンウィーク期間中に、中学1年生計110人を対象とした体験授業を開いた。今年は、12年目となるタケノコ掘りに加え、ハンデを持つ人たちとの共生を体験する車椅子バスケットボールが実施された。体験を通してさまざまな気付きを得た生徒たちの様子をリポートする。

    世界に通用するテクニックを感じる

     「今日は、競技用の車椅子に乗ってもらって、車椅子バスケットボールを楽しんでもらえればと思います」。高く通る声が、体育館に響いた。

     帝京大学中学校は5月2日、1年生を対象に車椅子バスケットボールの体験授業を開いた。講師は、平昌(ピョンチャン)パラリンピック・アイスホッケー代表で、元車椅子バスケットボール選手の堀江航さんだ。

    • 車椅子バスケットボールの講師を務めた堀江航さん
      車椅子バスケットボールの講師を務めた堀江航さん

     堀江さんが、ジャージー姿の中1生男女50人に尋ねる。「この競技用の車椅子と普通の車椅子の違いが分かりますか」。挙手した生徒の回答に耳を傾け、「素晴らしい。タイヤが八の字に付いているね。普通の車椅子は垂直についているから、そこが違うね。動きやすくできているんだ」。

     競技用車椅子の説明が済むと、堀江さんがお手本を見せる。勢いよく走り出した車椅子に手でブレーキをかける。そしてターン。方向転換するたび、キュ、キュとタイヤが鳴り、生徒たちは堀江さんの見事な操作に目を奪われた。

    「みんな、乗りたくてうずうずしているでしょ」

    • 車椅子を操ってプレーを披露する堀江さん
      車椅子を操ってプレーを披露する堀江さん

     いよいよ生徒たちが挑戦する番だが、生徒たちからは声がない。世界で活躍してきた堀江さんの迫力に、気おされてしまったようだ。「気合が足りないな」と堀江さんが苦笑する。

     でも、「ヨーイ、ドン!」の掛け声で、生徒たちが10台の車椅子を走らせ始めると、いっぺんに声が弾けた。

     「がんばれ!」「おお、すごい、才能あるじゃん」

     今度は、10人の生徒が堀江さんをつかまえるゲームだ。

     「めっちゃ、簡単」「みんなで、挟み撃ち、挟み撃ち」「囲め、囲め!」

     生徒たちは夢中になっているが、堀江さんは、するすると生徒たちの間をすり抜けていく。2分間の攻防は、堀江さんに軍配が上がった。

     参加した男子生徒の1人は「追いつくだろうと思ったけど届かなかったり、待ち構えようとしても、堀江さんに先に通られたりしてしまう。もう数秒早く先読みできれば、捕まえられたのに」と悔しそう。体操競技をしている男子生徒は、「堀江さんは手の操作ではなく、重心をずらして曲がっている。そこが違う」と自分たちとの差を分析した。

    • 競技用の車椅子の動かし方を体験する生徒たち
      競技用の車椅子の動かし方を体験する生徒たち

     その後、ゲーム形式の車椅子バスケットボールを体験して、約1時間30分の体験授業は終了した。

     さらに感想を聞いてみると、女子生徒の1人は「普段やっているバスケと違って、ボールを落としたら手が届かない。車椅子を操りながらボールを扱うのは難しいから、パスが通ったときはなおさら面白かった」と話した。また、男子生徒の1人は「結構難しかったです。車椅子を使っている人は、僕らが思っている以上に、いろんなことに気を付けて使っているんだと思いました」と話した。

     生徒たちは初めて体験するスポーツを楽しむ一方、ハンディキャップを持つ人たちについても貴重な気付きを得たようだ。

    タケノコはどこでどう生えているのか体験する

     同日に行われたもう一つの体験プログラムがタケノコ掘りだ。同校の敷地には広い里山があり、その一角の竹林で実施されている。今年で12年目となる恒例行事だ。

    • 学校の敷地内にある竹林でタケノコ掘りに挑戦
      学校の敷地内にある竹林でタケノコ掘りに挑戦

     制限時間は1時間。生徒たちは思い思いの場所で地面に目をこらすが、なかなかタケノコは見つからない。竹林はある程度整地されているものの、(ささ)の茂る傾斜地になっていて、やぶ蚊もいる。「畑の畔を挟んで2列になって掘るものだと思っていました」と話した女子生徒は、小学校時代に体験した芋堀りをイメージしていたらしい。

     勝手が違って悩んでいたようだが、やがて友達と3人がかりで大物を掘り出した。「3人の共同作業です。掘れたときには、達成感がありました」

     すぐに見つけた女子生徒もいたが、タケノコの先にハエがたかっていて、手が付けられない。「先生、なんとかして」と助けを求めて悲鳴が上がる。

    • タケノコの頭が出たら、先生がスコップで手伝ってくれる
      タケノコの頭が出たら、先生がスコップで手伝ってくれる

     1時間はあっという間だ。終了間際になっても傾斜がきつい木の根元で、タケノコの周りをシャベルで懸命に掘りこんでいる男子生徒がいた。ジャージーを脱いで白い体育着になった背中には、6匹のやぶ蚊が張り付いていたが、それも気が付かないほど夢中だ。

     しかし、ここでタイムアップ。スコップを持った先生がやってきて「よくここまで掘ったけど、時間だから、ここで終わり」と宣言。丁寧に掘り進めていたタケノコを根元からざっくり掘り起こす。「自分一人の手で採りたかった」と男子生徒は、ちょっぴり残念そうだった。

     体験授業の終了後、生徒たちはタケノコを手に里山から校庭に集まった。その中にタケノコを持っていない男子生徒がいた。見つからなかったのだろうか。

     「他の2人が掘るのを手伝っていたら、自分のを掘る時間がなくなっていました」という。そう話す表情には、残念さや悔しさは感じられなかった。同級生と協力し合えた喜びが上回っているからだろう。

    車椅子バスケットボールは先生のメッセージ

    • 掘り上げた大きなタケノコをかざす生徒
      掘り上げた大きなタケノコをかざす生徒

     タケノコ掘りは、1人の教員がホームルームの時間に、クラスの生徒を里山に連れて行き、体験させたのが始まりだった。それが人気を集めて学年挙げての行事になったという。

     この日、タケノコ掘りを指導した中学1年担任の小澤盛博先生は、「タケノコ掘りに限らず、うちの学校は、教員が個人的にやり始めたことが、『それ、いいじゃない』と周りに認められて本格化することが多い。一つの学年でやってみて良ければ、次の学年でもやる。そのような形で引き継がれて広がっていくんです」と話す。

     車椅子バスケットボールにも同じことが言える。1年生の学年主任・田中由紀先生が話す。「さまざまな個性を持つ他者との共生を学ぶプログラムの一環として、昨年の体験学習にはブラインドサッカーを取り上げました。その狙いに共感して、同じような体験学習がいいねと学年の先生たちで話し合い、今年は車椅子バスケットボールになったんです」

     今年の1年生の目標は「Challenge!! ~世界を閉じるな~」だという。何事にもチャレンジし、世界を広げてほしいと、先生たちが生徒たちに投げかけたメッセージでもある。車椅子バスケットボール体験は、そのメッセージを受け止める良い機会になったはずだ。

     (文:鶴見知也 写真:中学受験サポート)

     帝京大中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月11日 16時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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