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    論理力で育てる強豪…バスケットボール部

    • 神奈川トップクラスの実力
      神奈川トップクラスの実力

     113年の伝統を誇る女子大併設の中高一貫校、相模女子大学中学部・高等部(相模原市)。

     この学校は、勉学と部活動の両立を積極的に推進していることで知られています。同校がめざすのは、「生涯にわたり社会に貢献できる女性を育てる」(衛藤武市校長)こと。こうした理念に基づき、部活動も重要な教育機会ととらえています。今回は各クラブの中でも、神奈川県内トップクラスの実績を築いている中学校のバスケットボール部を密着取材しました。

    テニスボールで練習?

     学校を訪問したのは11月下旬。秋晴れの穏やかな日、小田急線「相模大野」駅から10分強歩くと、広大なキャンパスの一角に小学部・中学部の体育館があった。練習開始は午後4時。すでに中学生の部員25人が準備運動を始めている。広いコートの半分ずつをバトン部と分けあっての使用だ。

     練習が始まると、彼女たちのレベルの高さが伝わってきた。部員はペアになると、バスケットボールのドリブル練習を始めた。これだけなら体育の授業でも行われている練習風景だろう。

    • ボールを追う表情は真剣そのもの
      ボールを追う表情は真剣そのもの
    • ふたつの動作を同時に。スゴイ!
      ふたつの動作を同時に。スゴイ!

     ところが、彼女たちは同時にもう一方の手でテニスボールを相手に投げ、相手も片手で受け止めていた。左手と右手で違う動きを同時にすることになり、かなりの集中力と反射神経が要求される。ドリブル練習でも、足の間を何度もくぐらせるなど、そのボールさばきとスピード感に「県トップ」の実力がどれほどのものかよく理解できた。

    中学生向けの指導方法を模索

     バスケ部を率いるのは、2008年に着任した数学科の田島稔先生。神奈川県内の県立高校で21年間、バスケ部の顧問を務めたベテランだが、着任後すぐに「より詳細な説明が必要であること」に戸惑ったという。

     思い当たったのは、基礎的な技術をマスターしている高校生との指導方法の違いだ。

    • 指導法の研究に熱心な田島先生
      指導法の研究に熱心な田島先生

     「中学生には、中学生にあった指導があるはず」。田島先生は練習試合の際に他県の強豪チームの指導者に話を聞いたり、専門雑誌の関連記事などを集めたりと、研究を深めた。

     その結果、導き出した答えが、中学生のうちは基礎的な体力づくりをし、ボールを支配する技術を高めるのが重要だということ。高校、大学とバスケを続け、一流選手として活躍するためには、早い段階でそれらを身につけることが必要なのだという。

     こうした長期的な視点に立った方法を実践したところ、チームは年を追うごとに力をつけてきた。昨年は神奈川県総体で2位、今年は同大会優勝(関東大会ベスト8)を果たした。この軌跡が、田島先生の新たな指導法が正しかったことを証明している。

    強豪ならではの「大先輩と練習」

     この日、卒業生で11月下旬の全日本大学選手権大会で優勝を飾った松蔭大学1年の福田(かなで)さんが川崎市から駆けつけ、生徒たちと汗を流した。「私もこの部に育ててもらいました。だから、後輩たちの役に立ちたいと思っています」。

     福田さんのような卒業生は珍しくないという。大学でバスケを続けている場合でも、練習の合間を縫って、母校へ足を運んでくる。卒業後も深い関係を保てるのは、何より強豪校ならではのことだろう。

     強豪校への憧れも生徒たちを集める。実際、今年の新入部員13人は全員が小学校からの経験者。中学の1学年約100人の1割と“バスケ部率”も高い。なかには13歳にして身長175センチという大型選手の姿もあり、今後への期待も膨らむ。

     8月に主将に就任した山田可乃(よしの)さん(中2)は「先輩たちに支えてもらう立場から後輩を支える立場になったので、責任が重いです。常に相手の気持ちを考えて、部員の模範になりたい」と、言葉に力を込める。目標は来年1月の新人戦を制し、3連覇することだ。

     練習は火曜~金曜日が午後4時から2時間、土曜日は午後の3時間。日曜日は他校との練習試合や大会出場で埋まるというハードスケジュールだ(月曜日は部活動の休養日で休み)。

    コートに怒鳴り声はいらない

     ここで、子をもつ親なら誰もが気になることがある。「強豪校」と聞けば、「うちの娘は厳しい指導に耐えられるだろうか」というものだ。

     結論から言うと、そんな心配はご無用。取材の最中、田島先生が一度も怒鳴り声をあげたりしないので、主将の山田さんに聞いてみた。「いつもこうなの?」と。

    • 田島先生の指導はわかりやすいよ
      田島先生の指導はわかりやすいよ

     「普段からそうなんです。何かあれば、きちんと言葉で説明して、わかるようにしてくれるんです。だから、みんなきちんと先生の考えを飲み込める」

     田島先生は、体育会のイメージから離れたこの指導スタイルについて、「大人になっても、怒りをぶつけて考えが伝わるようなことはありません。物事はきちんと論理的に考え、正しく言葉にすることによって、初めて相手に伝わるもの。色々な指導法に取り組みましたが今では自分自身がそう振舞うことで、生徒たちにもこんな習慣を身につけて欲しいのです」と語ってくれた。部活を通じてどんな大人に成長して欲しいのか、明確な目標が伝わってくる。

     田島先生によると、教員のための指導マニュアルがあるわけではないものの、他の部活動も全般的に同様の雰囲気で指導が行われているという。「人が最初に出会う教育者は母親である」。創立者・西澤之助の言葉に基づき、「母親の心を養う」ことが同校の理念。それが部活指導にも脈々と流れているのだろう。

     温厚な田島先生だが、もちろん、指導者として大きな夢も描く。2020年の東京五輪の話題に触れると、「この子たちはちょうど大学2、3年生。代表チームの一員になってくれる子も出てくれたら」とほほを緩めた。

    勉強の頑張りにも応える

     同校では、文化部・運動部(計23部)の部活動への参加を推し進めてきた。現在、中学1年107人のうち80%以上の生徒が何らかのクラブに入部して、勉強との両立を目指して頑張っている。

     大学進学の2013年実績では、お茶の水女子大や東京外語大、横浜市立大のほか早慶、上智、GMARCHなどに続々合格を果たした。

     放課後の学習支援として自習室に英語と数学のチューターが常駐し、生徒の疑問を日々解消するなど地道な取り組みが実を結んでいるようだ。夏休みなどの長期休みには希望者を対象とした主要5科目の特別講座もあり、部活動と同様、生徒の頑張りにしっかり応える態勢が整っている。

     入試広報担当部長の木野正一郎先生(社会科)は「学業と部活動の充実を図ってきたことが本校の発展につながっています。この広々としたキャンパスで、のびのびと育って欲しい」と話す。取り組みの随所に学校の理念がきちんと表現されているのが相模女子の特徴だ。勉強に部活にと納得できる10代を過ごしたい女子は、一度訪ねてみて欲しい。

    (文と写真:林弘典)

    掲載日:2013年12月20日

    2013年12月20日 19時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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