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    世界の課題に目を開く「SGクラス」…佼成女子

     国際教育に力を入れている佼成学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)は、2014年に始まった文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に制度初年度から指定された。翌年には校内にモデルクラスとして「SGクラス」を新設した。独自のカリキュラムや、生徒の成長などについて宮川典子・国際部長に聞き、今春同校を卒業したSGクラスの1期生にも学校生活を振り返ってもらった。

    興味を引く話題や校外学習で動機付け

    • 「効果的な学習のためには動機付けが大事」と語る、国際部長の宮川教諭
      「効果的な学習のためには動機付けが大事」と語る、国際部長の宮川教諭

     英語力だけでなく、SGクラスではコミュニケーション力や異文化理解にも力を入れている。高1、高2では、このクラスだけの特設授業「国際文化」で、グループワークやディスカッションを通して課題解決力を身に付ける。世界の諸問題などに関して「あなたはどう思う?」と問いかけて、主体的に考えることを促す。

     プレゼンテーションやディスカッションに慣れていない公立中学校から来た生徒も、1年間で見違えるように変わる。人前で話すことに慣れ、やがて自信を持ち、最終的には「人に何かを伝えたい」と能動的な姿勢へと変化する。クラス全体も、互いの意見を認めて応援し合うような雰囲気になるという。

     宮川国際部長は、「効果的な学習のためには動機付けが大事だ」と話す。社会問題に興味を持たせるため、国際文化の授業だけでなく英語の授業においても貧困、飢え、食料廃棄といった地球規模の課題を取り上げることが多い。同時に、生徒が多角的な視点を持てるよう気を配っている。

     適正価格の取引で海外生産地の貧困解消を目指す「フェアトレード」を推進するNPO法人への訪問、各国の留学生が学ぶアジア学院での農作業体験、在日留学生とのワークショップといった校外学習にも、高1から取り組む。留学生とのディスカッションでは、英語をツールとすることでコミュニケーション能力を育成し、異なる背景を持った人たちにいかに対応すべきかを自然に習得できる。高3では、さまざまな大学の先生が専門分野の講義を行う高大連携授業で、受験の先を見据えた学びに親しむ。

     中でも大きな動機付けとなるのが、海外研修だ。SGクラスの生徒は、高2年次にタイで2週間、フィールドワークを行い、高3年次にはロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)でフィールドワークに基づいた英語論文を書く。キャリア教育にもつながるプログラムだ。

     1期生は手探りの部分もあったが、成果は出た。14人のうち2人は、文部科学省から補助金が出る留学制度「トビタテ!留学JAPAN」の審査をパスし、高1の夏休みに短期留学を果たした。また8人が、面接や論文などで合否を決めるAO入試を利用して難関大学に合格した。宮川国際部長は「想定外の質問などに対する対応力を養い、論文を書く力も付けてきたからこその結果だ」と胸を張る。

    英語面接に挑戦して難関大学に合格

     高校3年間を同校で学んだSGクラス1期生の河野葵(こうの・あおい)さんは、最も思い出深いイベントとして、タイでのフィールドワークとイギリスでの海外研修を挙げた。人生初の海外渡航で、この時、初めてパスポートを取得した。

    • SGクラス1期生の河野葵さんと大島千鶴さん
      SGクラス1期生の河野葵さんと大島千鶴さん

     タイでは、山岳民族出身者など貧しい家庭の子女に農業などを教えるNGO団体「フェドラ」と、裕福な子が通う私立女子高校「レジナ・チェリ・カレッジ」を訪問した。設備も、学ぶ内容もまるで違い、そのギャップに驚いた。

     事前学習のおかげで得るものが多かった一方で、本の内容を鵜呑(うの)みにする危険を感じる出来事もあった。タイの山岳地帯に暮らすカレン族の人が主張することが、本の情報と違ったのだ。読んだ本の多くは、タイ政府の視点から書かれたものだったと気付いた。「多角的な視点の大切さも学べた」と河野さんは話す。

    • ロンドンでの研修
      ロンドンでの研修

     イギリスでは、世界有数のアジア・アフリカ研究の拠点であるロンドン大学SOAS校で講義を受け、論文執筆のイロハを教わった。ここで学べる高校生は佼成女子の生徒だけだ。事前準備から執筆に至る本格的な論文作成の経験は、大きな財産となっている。

     帰国後、「佼成女子で得た経験や知識をもっと深めたい」と、グローバル人材の育成を掲げる千葉大学国際教養学部への進学を希望。3年間学んだことをフルに生かしたいと考え、小論文と英語面接から成る「特色型入試」での入試に挑戦した。

     河野さんは帰国子女ではない。しかし高1、2年次の「特設英語」(TOEFL iBT対策授業)では、1コマ90分間の高度な内容を英語で受講した。またスピーキング力アップのため、『SKYPE Lesson』を受けていたので、スピーキングの基礎はできているという自信があった。外国人教師が常駐する「グローバルセンター」に通うなど努力を重ねて、見事合格。「佼成女子の先生方は、100求めたら150、200で返してくれた」と河野さん。「将来は、経済的・社会的に低い地位に追いやられがちな外国人労働者の立場を、教育の力で引き上げたい」と目を輝かせた。

    先生の言葉に支えられて部活と両立

     大島千鶴さんは、中学・高校の6年間を同校で学んだ。全国大会にも出場するほどの実力がある書道部に中学から在籍した。自身もテレビで披露するほどの腕前を持ち、熱心に書道に取り組んだ。

     同校では高校から五つのコース・クラスに分かれる。将来の可能性を広げられるSGクラスに進みたいと思ったが、部活もしっかり続けたかった。SGクラスは授業内容が高度で、論文もある。課題の量も多い。無理なく部活に打ち込める「進学コース」を選ぶべきか悩んだ。

     先生に相談すると「二足のわらじを履くなら、覚悟を持って履け」と言われた。厳しくも温かい言葉に背中を押された大島さんはSGクラスに進み、部活にも全力で取り組んだ。「大変だったけど、先生方が応援してくれたおかげで3年間頑張れた」と振り返る。

     授業は普段から示唆に富んでいた。イスラム過激派組織による残虐な事件が起きて間もない頃に、「国際文化」の授業でモスクへ行ったことがある。イスラム教は怖いと思っていたが、話を聞いて過激派とは全く違うと分かった。

    • タイのフィールドワークで茶葉作りを体験
      タイのフィールドワークで茶葉作りを体験

     一番印象に残っているのは、フィールドワークで訪れたタイだ。少数民族が暮らす電気もガスもない山岳地帯やスラム街を目にして、衝撃を受けた。ストリートチルドレンの更生を目指すNGO団体「アーサー・パッタナー・デック財団」で出会った子供たちの、暗い表情は忘れられない。

     「それまでは日本国内にしか興味がなかったが、一気に視野が広がった」という。

     国内外の児童の貧困問題を学べると知り、進学先には立教大学のコミュニティ福祉学部を選んだ。大島さんは将来、貧困問題にたずさわる組織で働きたいと考えている。

     大学では、文章ソフトの使い方、プレゼンテーションやディスカッションの仕方などを一から教えてくれる。多くの人が大学で学ぶことを自分は高校時代に教えてもらっていたのだと、改めて感じている。

     厳しいカリキュラムをやり遂げて卒業したSGクラス1期生たち。アクティブラーニングで養った課題解決力やコミュニケーション力に磨きをかけ、彼女たちが夢を形にする日が待たれる。

    (文・写真:佐々木志野、一部写真:佼成学園女子中学高等学校提供)

     佼成学園女子中学高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

    2018年07月06日 12時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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