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    「新しい学力」の基礎作りのために広がる活用…日本漢字能力検定

     日本漢字能力検定は、小学生から社会人まで、幅広い年齢層に親しまれている人気の資格だ。2020年の大学入試改革に象徴される「新しい学力観」で思考力・判断力・表現力が重視される中、こうした学力の基礎を作る「漢検」の活用もあらためて注目されている。東京都・目黒区での地域教育や、中学校、学習塾にも広がりつつある活用事例を紹介する。

    漢検を活用する目黒区の「子ども教室」

    • ボーカリスト、児童教育研究家として精力的に活動する森下玲可さん
      ボーカリスト、児童教育研究家として精力的に活動する森下玲可さん

     東京・目黒区の「子ども教室」事業を受託している非営利団体「不動わくわくアカデミー」は、区立不動小学校を拠点に、放課後の児童らを対象とする地域教育の活動に取り組んでいる。

     アカデミーは、いろいろな体験学習と文化講座を一体化した「子供のためのカルチャースクール」を目指して2015年に設立された。活動4年目となる現在、開いている講座は、音楽やアート、将棋、料理、フラワーアレンジメント、プログラミングなど多岐にわたるが、最初に開講したのが「漢字検定教室」だった。私立の中学受験を考える児童、保護者が多い土地柄もあって、当初からニーズが高かったそうだ。

     アカデミーの代表を務める森下玲可(本名・中川智美)さん自身、長男が不動小に通っていたことから、「この小学校に通って一緒に勉強した子供たち全員に、私からのギフトとして『漢検5級』の合格証書を持たせてあげたい」という思いが強かったという。日本漢字能力検定(漢検)5級は、小学校6年生修了程度のレベルである。

     日本漢字能力検定協会(以下、漢検協会)によると、多くの企業が入社試験に用いる一般教養試験の問題文・選択肢に使用されている漢字は、8割が漢検5級以下で勉強する漢字だという。漢検5級は子供たちにとって一生の宝となる大きなプレゼントだ。

     ちなみに森下さんは「傷つけてPrecious Love」などのヒット曲を持つ歌手。忙しい音楽活動を繰り広げていたが、子育て経験を重ねる中で、小学校の学習カリキュラムや行政の子育て支援策などに疑問を持つようになったという。PTA活動などに積極的に関わるようになり、児童教育などについて勉強を重ねていたところ、区の教育委員会から「子ども教室事業」を委託され、保護者や地域ボランティアら数人のスタッフとともに、ほぼ手探りの状態で「子ども教室事業」に飛び込んだそうだ。

    漢検が紹介する講師から楽しみながら学ぶ

    • 漢字教育サポーターが講師を務める漢字検定教室
      漢字教育サポーターが講師を務める漢字検定教室

     アカデミーの「漢字検定教室」は、漢検協会から紹介された「漢検 漢字教育サポーター」を講師として、2週間に1度開かれている。「サポーター」は漢検1級・準1級の合格後に漢検協会指定の講座を修了した実力を持っている。「漢字検定教室」の受講希望者は年々増えており、現在、小学1~3年生は学年ごとのクラス、4~6年生は1クラスとし、各クラスに講師1人、計4人の講師が担当している。

     授業では、繰り返し書いて覚える以外に、講師がそれぞれに工夫をこらし、漢字の成り立ちや部首の意味、語彙(ごい)などに興味を持たせるようにしている。小学校の国語の授業とは違った切り口の教え方であるため、子供たちにとってアカデミーの授業は新鮮で、通うのが楽しみになっているという。

     漢字は一度にまとめて覚えられるものではないため、コツコツと時間をかけて身に付けていく必要があるが、努力した分、成果に結びつきやすいものでもある。「漢検の試験に合格できなかった場合でも、挑戦するたびに経験値が一つ上がります。頑張って合格し、賞状をもらったときの子供たちの顔を見ると、本当にやっていてよかったと思います」と森下さんは話す。

    中学校や学習塾でも漢検を活用する動き

    • 漢検3級の試験に向けて勉強している森下さんの長男
      漢検3級の試験に向けて勉強している森下さんの長男

     森下さんの長男は、不動小学校を卒業後、聖学院中学校(東京都北区)に進学した。同校は漢字検定を活用した授業を行っているが、小学校時代に漢検5級を取得していたので、余裕をもって臨めたという。既に4級の試験にも合格し、3年生となった今は3級の試験に向けて準備中だ。また、英語を得意としていて、「将来は語学力を生かせる仕事に就きたい」と話している。

     漢検協会普及部東日本検定活用推進課の大森一弘氏は「国語の語彙力を子供の頃にしっかり身に付けておくことは、学年が進んで外国語を学ぶ際にもプラスになります。外国語の能力が母語の能力を超えることはないと言われているのがその理由です」と話す。「公立、私立を問わず、漢字検定を取り入れる小学校は増えています。勉強は『まず読み書き』と言いますが、漢検の勉強を通して国語の語彙を増やしていくことで、思考力や表現力の基礎が磨かれていきます」

     漢検に向けた学習は、中学受験の広範囲な出題の対策にもなる。

     学習塾大手「早稲田アカデミー」中学受験部中学受験1課の本多弘篤さんは、「漢検の問題は、単純な書き取り・読み取りにとどまらず、筆順・部首・類義語・対義語・四字熟語など幅広い切り口から出題されます。これらは中学受験の言語知識の単元とも重なるため、漢検へ向けた学習は中学受験へ向けた学習と直結しているといえます」と語る。

     漢検4級以上の試験になると、小学校で習う範囲を超えた漢字も出題される。「近年の中学受験では大人向けの文章から出題されることが当たり前となっていますので、そうした作品を読みこなすためにも、小学生の学習範囲を超えた漢字や語彙に触れることは大いに有効だといえるでしょう」

     日頃の勉強の成果を発揮する漢検の本試験には、通い慣れた塾や学校を試験会場とする「準会場受検」の制度もある。漢検協会によると、小学校での団体受検は年々増えており、学校での受検なら、保護者が教員と協力して役割分担をすることにより、比較的少ない負担で「準会場受検」が実施できるとのことだ。

     「不動わくわくアカデミー」もこの制度で準会場の認定を受けており、通って来ている子供たちにとって最も受検しやすい環境となっているようだ。

     子供の頃に学んだことは一生忘れることがない。早い段階から漢字検定を活用することで、勉強の習慣が身に付くだけでなく、能力の壁にチャレンジして、それを超える成功体験を重ねることにもなる。漢検への注目が高まっているのは、漢字力にとどまらず、子供を成長させるさまざまなメリットがあるからではないだろうか。

    (文:山本華子 写真:TAKA=写真家)

     日本漢字能力検定協会について さらに詳しく知りたい方はこちら

    2018年11月02日 05時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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